研究者の地位と権利を守るための全国的ネットワークをつくろう!

2008年07月07日

北陸大学、問われるトップの資質

北陸大学教職員組合
 ∟●組合ニュース273号(2008.7.3発行)

……

問われるトップの資質

 6月に北元理事長(他に大屋敷学長、河島教育担当理事、中川専務理事が臨席)が教員をグループごとに分けて面談を行った。もっとも面談とは名ばかりで、一方的に訓辞を行う独演会であったのはいつものことであった。グループごとに少しずつ話を変えていたようではあるが、面談の主旨をなしたのは以下の主張であった。 「薬学部教員は過去に薬学ゼミナールに国家試験対策を丸投げした。これは教育放棄である。このときは経済的にも6千万円余りの損失を被った。こういう教員の意識はあるまじきことで変えなければならない。」

 最近着任した教員以外は誰もがそれを聞いてこう思ったはずである。

「事実と違うじゃないか。でも、それをここで指摘しても権力を誇示した持論で押さえつけられるだけで、後で意趣返しに遭うのが関の山。まあ黙っていよう」と。

 その教育放棄と理事長が主張している事件は事実誤認であるのだが、話は2004年(平成16年)に遡る。

 2004年度の4年次生教育に関しては、例年どおりのやり方に改善を加えた国家試験対策演習を行うという国試対策小委員会(当時は薬学部教務委員会の下部組織であった)の方針の下に、基礎薬学系学科目担当の教員(基礎薬学部会)は、 6月から行う予定であった演習の内容を検討していた。例えば、使用する教科書として、各科目の系ごとに教員達が自由に、予備校が発行している問題集・参考書を検討しており、基礎薬学部会では、 通常ならば日本医薬アカデミーの発行する 「黒本」を使用する予定であった。 「黒本」は、長期間、基礎薬学部会が使用してきた教材であり、 その間、本学教員は本書の訂正、加筆を行って育んできた実績がある。また、4年次留年生については前期に卒業試験を実施し、その合格者には後期は自分の選んだ国家試験予備校に行くか、もしくは北陸大学での演習を受講するよう指導してきたことを、その年度も踏襲することが学部内で確認されていた。演習担当の教員配置もすでに決定していた。

 しかしながら、 6月2日、河島学長(当時)から、理事長以外の常勤理事達と事務員および薬学教員が集められて薬剤師国家試験対策説明会が開かれ、それまでの国家試験対策に関する決定事項が白紙撤回されたのである(そのとき配付された資料は末尾に添付)。

 そこでは、河島学長が「トップダウンの決定事項である」と前置きし、 4年次生の国家試験対策を従来とは大きく変更して、国試対策センター(このとき河島学長が自らセンター長に就任した)がイニシャチブを執ること、教科書は予備校である薬学ゼミナール発行の「青本」を使用すること、 4年次通常生に対する前期演習は行わないこと、後期演習は薬学ゼミナール講師も担当すること(成績上位半数対象。成績下位半数は教員が担当)、4年次留年生の教育は薬学ゼミナール八王子教室に任せてそこで行うこと、などが伝えられた(配付資料の文言は明確にトップダウンであることを示している)。

 これを受けて、その直後の第4回薬学部教授会(2004年6月7日開催)では河島学長臨席の下、その実施計画が了承されるに至った。この段階で多くの教員は、前期に計画した基礎薬学系演習を削るべきではない、教材に注ぎ込んできた労力が徒労と化す、業者に学生を預けるのは適当ではない、あるいは、特定業者との癒着はよくない、と考えて難色を示していたものの、理事長の意向であろうから仕方がないとの認識を持っていた。

 ところが、2004年8月に理事会が教員を数名のグループに分けて、グループ毎に面談を行った際に疑惑が生まれたのである。北元理事長は、「私は薬学ゼミナールの利用には反対だ。だからこれは現在ペンディングにしてある。外部の業者に本学学生の教育を任せるとは、教員の怠慢・責任放棄である。これにかかる経費は当初組んだ予算を6千万円も上回る。君たち教員が望んで決めたことだろう。一体誰がこれを負担するべきか」と教員達に尋ねた。さらに、理事長は、「国家試験対策に業者を導入する費用は、教員の給与から差し引くべきだ」と主張した。

 多くの教員は、薬学ゼミナール導入の件に関しては北元理事長に事実経緯の正確な情報が伝わっていないのではないか、また特定業者と提携するにはそれなりの、あるいは公表できない理由があったのではないか、との疑念を抱いたのである。

 この国家試験対策経費に関する件は第14回薬学部教授会(2004年10月25日開催)でも報告されているが、議事録には「河島学長から、今年度の薬剤師国家試験対策等について、理事会に対し、第89回薬剤師国家試験の結果の反省、今年度薬学部分の特別研究費の辞退、不足する部分を教員が負担することなどを説明したとの報告がなされた」と記載してあった。第15回薬学部教授会で佐倉委員長がこの記載に異議を唱え、第16回薬学部教授会で「河島学長から、……不足する部分を教員が負担することなどの案を説明したとの報告がなされた」に訂正された。

 結果的には、この年および翌2005年度には、特別研究費は教員に分配されず、薬学ゼミナールに支払う教育費に転用されたのである。

 以上が事実経過なのであるが、未だに理事長は事実とは異なることを確信し、それに基づいて方針・施策決定をしているのである。組織の命運の鍵を握る人物が判断を誤り、間違った方向に向かって行くのは誠に恐ろしいことである。


|