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2008年07月31日

全大教、運営費交付金の大幅削減にたいする抗議声明

全大教近畿
 ∟●運営費交付金の大幅削減にたいする抗議声明

国立大学法人運営費交付金の3%の大幅削減等の閣議決定に抗議し高等教育費の増額を求める(声明)

2009年7月29日
全国大学高専教職員組合中央執行委員会

 政府は、本日(7月29日)午後閣議を開き、2009年度予算の枠組みとなる概算要求基準(シーリング)において、医師不足や環境対策、技術開発等の「重点化枠」に約3300億円をあてるため、国立大学・高専運営費交付金、私学助成費等について、「骨太方針2006」で決定されたシーリングマイナス1%枠(対前年度予算比1%減額)をさらに拡大し、マイナス3%とすることを決定した。これにより、国立大学、高専等の運営費交付金の大幅な削減は避けられない状況である。
 
 私たちは、この閣議決定に対して、強い憤りを表明するとともに、以下5点の問題点を指摘し、国立大学等運営費交付金など高等教育関係費大幅削減の見直しを要求するものである。
 
 第1に、運営費交付金は、「政策的経費」とされ、3%削減の対象とされているが、実際には、光熱水量費、事務費、人件費等大学等の日常運営を支える「義務的経費」であり、これを削る根拠は希薄である。 そもそも、国立大学法人法等の成立時の附帯決議「国は、高等教育の果たす役割の重要性にかんがみ、国公私立全体を通じた高等教育に対する財政支出の充実に努めること」に照らしても運営費交付金等の大幅削減は国会決議に反する許し難い暴挙である。

 第2に、3%のマイナスシーリングにより、運営費交付金が大幅に削減されれば単科大学をはじめ、地方大学、高専の存立自体を危うくすることは必定である。すでに、国立大学等が法人化されて4年連続して運営費交付金は毎年減らされて、すでに計602億円の減額、これは一橋大学10校が消える金額である。

 第3に、運営費交付金1%、病院経営改善係数2%が毎年削減され、運営費交付金だけで研究教育を進めることができない大学がほとんどである。「研究教育用の実験器具が更新できない。」「講義のための参考資料等は教員が手出しでまかなっている。」のが実状である。運営費交付金だけでは研究教育を遂行できないため、大学等は自助努力で「競争的研究資金」外部資金を獲得して、運営資金を確保しなければならない。

 第4に、さらに追い討ちをかけるように、人件費削減5%問題が大学の研究教育を圧迫している。それに伴い、教職員の業務は多忙化の一途を辿り、離職率の増加やメンタルヘルス問題など、急速に労働環境の悪化が進行している。

 第5に、OECD諸国の中でも、日本政府の高等教育への公的支出は0,5%と最低水準にありながら、「教育振興基本計画」にも最終的に数値目標は盛り込まれなかった。経済のグローバル化の中で、欧米諸国が高等教育への投資を重視している状況とは対照的である。
 
 上述したように、国立大学等の現状は、憂慮すべき事態にあり、運営費交付金は、増額こそ必要である。減額は、国立大学等の衰退、ひいては高等教育総体の衰退をもたらすのみである。
 私たちは、政府及び国会に対して、国立大学等の運営費交付金の大幅削減を見直し、高等教育費増額の方向に政策の舵をきることを強く求めるものである。
 また、私たちは「日本の未来のため、高等教育に必要な予算は確保すべきだ」と社会に理解と支持を得る社会的応援団形成の取り組みをさらに強化していくものである。


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