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2008年08月29日

横浜市立大学、法人職員の任期更新「拒否?」問題

大学改革日誌
 ∟●最新日誌(8月28日)
 ∟●横浜市立大学教員組合週報(2008.8.28)

8月28日 教員組合週報(本日付)が届いた。教職員倫理規定および法人職員の任期更新「拒否」(?)にかかわる重要な内容をもっている。ニュースが指摘するように、更新「拒否」の問題は、職員の問題だからといって、教員と関係のないことではない。

 精密な議論なしの「拒否」(?)あるいは、拒否の「示唆」(ニュースによれば「人事当局あるいは上司から更新の可能性がないかのような対応」)は、当該職員だけでなく全固有職員を萎縮させ、精神的隷属状況を作り出すであろう。「普通にやっていれば」任期更新するというが、法人固有職員の場合、「普通」とは、いかなる基準で、どのように各人の仕事を評価するのか。その客観性・透明性こそが大切だが、それがない状態では(不服審査委員会がそもそもあるか?)、一方的に職員側が不利になる。大学の自治的な創造的な発展とは逆のことになろう。

 そうした「示唆」、「脅かし」(?)を行うのは人事関係当局であり、理事長以下、法人当局の主要管理職は、市当局からの派遣(任命)なのである。市当局への大学の隷属をさらにいっそう決定的に進めていくものとなろう。

 弱い立場のものは組合に結集して、正当な権利を守るしかない。職員組合と連携した教員組合の毅然とした対応を期待したい。今回のウィークリーが示す申し入れも、その毅然とした対応のひとつであろう。

 倫理規定の箇所も、本学の本質的問題に関して指摘するものとなっている。入学に関して、教授会審議はない。「不正入試に対して脆弱」な現在の本学のシステムは非常に問題だという指摘は、まさにそのとおりであろう。ここでこの重要な問題の所在を重ねて指摘しておくことは、大変重要なことだろう。

 教員評価問題では、当局は、「消極的」になっているという。どのような意味か?

 何も具体的な検討を進めないで(あるいはひそかに検討を進めておいて)、「時間切れ」で、当局の提案を押し付けてくる可能性はある。「95%も参加しているから」と、マイノリティに煮え湯を飲ませることも辞さない可能性はある。そうした「時間切れ」という手段に直面した苦い経験は、組合執行部経験者なら何回か味わっているはず。新給与体系の提案は、12月26日だったかと記憶するが、仕事納めの前日だったはず。教員組合が仕事納めから正月まで慌てふためこうが苦しもうがそんなことはお構いなし、当局に有利なやり方で提案すればいい、とでも言うかのようであった。その苦い記憶はよみがえる。金を出すほうは、交渉がまとまらなければ旧の体系のままですよ、給料は上がりませんよ、と落ち着いていればいいことになる。われわれとしてはそうしたひどいやり方に対しても、誠実に(「弱さ」から?)対応したのではあるが。そして、それなりの体系にすることになったとは思うが。

 「処遇に反映させる」とする教員評価のシステムについても、ぎりぎりまで何も提案しない、折衝しないということか?

 法人の管理職・人事当局は、すべての時間をその仕事に当てればいいのだろうが、教員組合の執行部は、教育・研究・社会貢献の仕事もやっている。時間的にきびしいなかでの対応なのだから、きちんと時間的余裕を持って提案をしてくるべきではないか?

 この間、当局が提案するとしてきた新給与体系にもとづく給与アップ(業績給部分)について、何も前進していないのではないか?

 合意が出来上がるまでの中間的な妥当な引き上げを実施すべきだというのが組合の度重なる要求なのだが、このままでは、本学とほかの公立大学、国立大学や私立大学との給与の差はどんどん広がっていくのではないか?

 いずれにしろ、教育・研究・社会貢献とうにまい進できる状態をこそ作り出すべきだが、その諸条件はどこにあるか?

●法人職員の任期更新「拒否?」問題

 任期更新の時期を迎える法人職員が、本人が更新を希望しているにもかかわらず、人事当局あるいは上司から更新の可能性がないかのような対応を受けているという情報がありました。

 本人が更新を希望するにもかかわらず更新を拒否されて雇い止めとなる前例ができることは、教員にとっても大きな脅威であり、教員組合として重大な関心を持たざるを得ません。

 そこで、任期更新について具体的にいかなる対応をしたのか、以下のような質問書を7月23日付けで作成、30日の折衝で人事当局に提出し回答を求めました。また、後日、榊原委員長が本多理事長に会見して手渡しました。

2008年7月23日

公立大学法人横浜市立大学 
理事長 本多 常高 様

横浜市立大学教員組合
委員長 榊原 徹

法人固有職員の任期更新に関する質問書

 日ごろ教員組合の活動にご理解頂き、ありがとうございます。

 教員組合は、任期制すなわち有期雇用が、大学の自治・学問の自由を破壊するばかりでなく、優れた教員を本学に迎え、長期的視点に立って大学のために貢献してもらうことを阻害するなどの点で、きわめて有害であることを繰り返し主張してきました。

 本年12月末に任期更新の時期を迎える法人固有職員について、更新の可能性がないかのごとき対応をしていると聞いていますが、本当でしょうか。法人化に際し、また法人化以降も、当局は教員に対しても法人固有職員に対しても、「普通にやっていれば再任される」と説明してきました。法人固有職員の任期更新についても、教員組合として大きな関心と懸念を抱かずにはいられません。

 上記のような対応が本当であるのか、もしもそうであるならばいかなる理由でそのようなことを行うのか、説明を求めます。回答は文書でお願い致します。  


 8月22日(金)の折衝では、文書による回答はありませんでした。人事当局は、具体的な人名をあげたので、このような状況に置かれている法人職員がいることが明らかになりました。教員組合側が「更新の可能性がない」と言ったのかと質問したのに対し、「これまでの3年間の業務について話し合う場で、仕事を見直した方がよいというサジェスチョンをした。雇用の打ち切りは明言してはいない。『やめろ』という発言があったとは聞いていない」という返事がありました。

 「本人が更新を希望しているのに更新を拒否することをしようとしているのか」との質問に対しては、「まだ『結論』を出していない状況で、9月中に結論を出す、結論を出したら回答する」との答えでした。「結論」というだけで、それが何の結論かは不明です。

 いずれにせよ、本人が更新を希望しているにも拘わらず更新を拒否するならば、それ自体が深刻な問題です。その上、この法人職員がもしも一般の職員ではなく専門職で、「あなたの仕事はなくなったから」という理由で更新を拒否されるのであれば、教員にとってさらに重大な問題となります。なぜなら、大学教員はそれぞれ専門を持っており、「あなたの科目はもう開設しないから」などの理由で更新を拒否されることにつながるからです。

 また、本学では、今後市からの職員を減らして法人固有の職員を増やそうとしています。法人職員も「全員任期制」です。本学の法人職員が実際に更新拒否されたとなれば、本学の法人職員への応募に二の足を踏む人が出て、優秀な人材がとりにくくなるでしょう。

 教員組合は本年度、教員評価制度の評価結果を処遇に反映することについて、人事当局との間で交渉し、合意点を探っています。「処遇への反映」の中で最も重大な問題は任期更新の問題です。したがって、法人職員の任期更新を拒否するというような事態が生じれば、今後における合意形成の上で大きな障害になる可能性があります。


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