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2008年09月08日

日本私大教連、大学「構造改革」がもたらしたもの ―競争・選別・格差拡大の現局面―

日本私大教連
 ∟●第19回全国私大教研基調報告、大学「構造改革」がもたらしたもの ―競争・選別・格差拡大の現局面―

大学「構造改革」がもたらしたもの ―競争・選別・格差拡大の現局面―

はじめに

 小泉「構造改革」が、高等教育政策に関して最初に打ち出したものは、政権発足2 ヵ月後の「遠山プラン」でした。それは大学関係者にとって晴天の霹靂とも言うべきものでした。なぜなら、少なくともそれまでの高等教育政策は、1998 年10 月26 日に大学審議会から答申された「21 世紀の大学像と今後の改革方策について―競争的環境の中で個性が輝く大学―」をベースに展開されていたからです。「98 答申」とも呼ばれるこの答申は、21 世紀初頭の大学像を提起し、国公私立大学の役割分担、高等教育の規模、教育研究の質的向上(課題探求能力の育成)、教育研究システムの柔構造化(大学の自律性の確保)、責任ある意思決定と実行(組織運営体制の整備)、多元的な評価システムの確立(大学の個性化と教育研究の不断の改善)など、いわば総合的な「改革」方針でした。この「改革」方針をより先鋭的に、短期間に、しかも文科省から経済財政諮問会議に推進エンジンを付け替えて、一気に走りぬける号砲となったものが、「遠山プラン」でした。この号砲は、大学破壊の号砲でした。

 昨年の第18 回教研集会基調報告では、この小泉「構造改革」の実相を高等教育という側面から俯瞰し、これを受け継いだ安倍政権の高等教育政策とその手法について分析しました。安倍政権は教研集会の約1 ヵ月後の9 月12 日、参議院選挙の惨敗よって、首相自身が政権を突然放り投げる形で崩壊してしまいました。

 安倍前政権について同基調報告は「教育基本法改悪を突破口として、『教育再生会議』を梃子に、新国家主義、新自由主義的教育『改革』をあらゆる教育段階において全面的に推し進めようとしています。高等教育について言えば」「『構造改革』の新段階にふさわしい新自由主義的改革の徹底という側面を際立たせています」と指摘しました。そして、「『軍事大国化と新自由主義』に対する対抗軸の構築、その担い手の形成に向けた新たな<大学づくり>への一歩を踏み出そう」と呼びかけました。この安倍政権を引継いで福田政権が誕生しましたが、この政権は高等教育に対してどのような政策を展開しているのでしょうか。今次基調報告は小泉・安倍と続いた「構造改革」路線・政策によって、大学がいかに悲惨な状況に貶められてしまっているのか、その実相を明らかにすること、そして、その上であらためて大学再生の方向を示唆することを目的としています。

 第1章では、「構造改革」路線・政策は福田政権にどのように引継がれているのか、福田政権下において「大学・大学院改革」がどのように進展しているのかを分析します。
 第2章では、法人化された国立大学の状況を俯瞰します。国立大学の動向が直接・間接に私立大学にも影響を及ぼしています。「構造改革」による破壊が進む国立大学の現状から、大学の自治、学問研究の自由を守るたたかいの大切さを浮き彫りにします。
 第3章では、「構造改革」路線によって発生・拡大したさまざまな大学間格差について、その基本的ないくつかの事実を分析し、その原因を探ることによって、大学再生の課題を見出すことを目的としています。
 第4章では、組合員のWeb アンケートの分析から、「構造改革」が進むなかで、私立大学教職員の教育・研究・労働がどのように変化したのかを明らかにします。……


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