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2008年09月09日

日本学術会議、提言「数理科学における研究と若手養成の現状と課題」

日本学術会議
 ∟●提言「数理科学における研究と若手養成の現状と課題」(2008/9/8)

提 言

数理科学における
研究と若手養成の現状と課題

……

2.現状および問題点

 当分科会は、書面によるアンケート調査を2回実施した。また、各委員が聞き取った状況を持ち寄り検討を加えた。その結果、数理科学系の博士課程教育および数理科学の研究活動の現状分析は次のようにまとめられると考える。
1. 博士号取得者が大学の常勤ポストに新規採用される数が大幅に減少している。
2. 短期研究職ポストは増加しているが、期間を限定したポストの任期が終了した次の段階での就職先が得られないという問題がすでに顕在化しており、将来さらに深刻な事態にいたると予想される。
3. 数理科学系博士のキャリアパスを大学教員以外へも広げようとする動きが始まっているとはいえ、現時点では博士号取得者の進路に目に見える影響を与えるには至っていない。
4. このような進路状況を反映して、数理科学系博士課程の魅力は急速に低下し、定員を充足するに至っていない。
5. 科学技術全体の予算は増加しているにもかかわらず、数理科学推進への予算は相対的に減少傾向にある。
6. 研究条件の財政面での大学間格差が拡大している。中小規模大学では研究環境の劣化が著しく、図書整備などの最小限のインフラストラクチャーさえ崩壊しつつある。
7. すべての教員組織が研究時間の確保に困難を覚えており、小規模大学では特に数理科学研究者の疲弊が甚だしい。
8. 日本の数理科学研究のレベルは全般的に現在のところ高い水準にあるが、次の世代にわたって現在のレベルを維持できるかどうか予断を許さない。
9. 日本の数理科学研究は他分野との連携に弱点をもっている。その改善のために様々の試みがなされているが、まだ大きな効果を示しているとはいい難い。…


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