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2008年09月12日

大学には「名ばかり管理職」は存在しませんか?

 いわゆる「名ばかり管理職」問題が,いま大きな社会問題となっている。
 大学の管理職のうち,不適切な形で労基法第41条第2項にあたる「管理監督者」に該当させ,当該管理者を「労働時間、休憩及び休日に関する規定」の適用除外にしている事例(特に,事務職員の課長職等)はないだろうか。

 厚生労働省は,「名ばかり管理職」問題を受け,2008年4月1日に,都道府県労働局長宛通達「管理監督者の範囲の適正化について」(基監発第0401001号)を出した。
 また,つい最近でも,9月9日日に小売・飲食業等のチェーン店における店長等が労働基準法の「管理監督者」に該当するか否かの判断に当たっての特徴的要素をとりまとめ、都道府県労働局長に対して(「多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化について」(基発第0909001号))なる通達を出した。
 内容は,「職務内容、責任と権限」「勤務態様」「賃金等の待遇」について具体的な判断要素を明示しており,例えば,(1)パート・アルバイト等の採用・解雇に権限がない(2)遅刻・早退等により減給または人事考課で不利益な取扱いを受ける(3)時間単価に換算した賃金額が店舗所属のパート・アルバイト等の賃金額に満たない、場合などは管理監督者性を否定する重要な要素になるとしている。
 ただし,今回の9・9通達については,これまでの判例,行政解釈,各地の労働基準監督署が労基法第41条第2号に定める「監督若しくは管理の地位にある者」の判断基準として,出退勤の自由,経営者と一体的な立場,一般社員と比較してそれにふさわしい待遇(賃金)を重視してきた点から判断して,内容においてやや腑に落ちない。後退した印象を受ける。

 以下は,これまでの法第41条第2号に定める「監督若しくは管理の地位にある者」の判断基準に関する行政解釈。

監督又は管理の地位にある者の範囲

(昭和22年9月13日基発17号、昭和63年3月14日、基発第150号)

 法第41条第2号に定める「監督若しくは管理の地位にある者」とは、一般的には、部長、工場長等労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者の意であり、名称にとらわれず、実態に即して判断すべきものである。具体的な判断にあたっては、下記の考え方によられたい。

 (1)原則
 法に規定する労働時間、休憩、休日等の労働条件は、最低基準を定めたものであるから、この規制の枠を超えて労働させる場合には、法所定の割増賃金を支払うべきことは、すべての労働者に共通する基本原則であり、企業が人事管理上あるいは営業政策上の必要等から任命する職制上の役付者であれば全てが管理監督者として例外的取扱いが認められるものではないこと。
 (2)適用除外の趣旨
 これらの職制上の役付者のうち、労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動することが要請されざるを得ない、重要な職務と責任を有し、現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないような立場にある者に限って管理監督者として法41条による適用の除外が認められる趣旨であること。従って、その範囲はその限りに、限定しなければならないものであること。
 (3)実態に基づく判断
 一般に、企業においては、職務の内容と権限等に応じた地位(以下「職位」という。)と経験、能力等に基づく格付(以下「資格」という。)とによって人事管理が行われている場合があるが、管理監督者の範囲を決めるにあたっては、かかる資格及び職位の名称にとらわれることなく、職務内容、責任と権限、勤務態様に着目する必要があること。
 (4)待遇に対する留意
 管理監督者であるかの判定にあたっては、上記のほか、賃金等の待遇面についても無視しえないものであること。この場合、定期給与である基本給、役付手当等において、その地位にふさわしい待遇がなされているか否か、ボーナス等の一時金の支給率、その算定起訴賃金等についても役付者以外の一般労働者に比し優遇措置が講じられているか否か等について留意する必要があること。なお、一般労働者に比べ優遇措置が講じられているからといって、実態のない役付者が管理監督者に含まれるものではないこと。
 (5)スタッフ職の取扱い
 法制定当時には、あまり見られなかったいわゆるスタッフ職が、本社の企画、調査等の部門に多く配置されており、これらスタッフの企業内における処遇の程度によっては、管理監督者と同様に取扱い、法の規制外においても、これらの者の地位からして特に労働者の保護に欠けるおそれがないと考えられ、かつ、法が監督者のほかに、管理者も含めていることに着目して、一定の範囲の者については、同法41条第2号外該当者に含めて取り扱うことが妥当であると考えられること。


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