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2008年11月25日

日本私大教連、大会特別決議「競争・淘汰の私大政策をやめ、充実・発展を機軸とする政策への転換を要求する」

日本私大教連
 ∟●大会特別決議「競争・淘汰の私大政策をやめ、充実・発展を機軸とする政策への転換を要求する」

競争・淘汰の私大政策をやめ、充実・発展を機軸とする政策への転換を要求する

 政府は1990年代以降、国際競争力強化と市場原理主義・競争主義を政策の機軸とし、高等教育政策にもそれを乱暴に持ち込んだ。とりわけ小泉政権が強力に推進した大学構造改革政策は、高等教育分野の市場化・競争化を加速させ、我が国の高等教育に深刻な打撃を与え続けている。

 大学構造改革の一つの柱である規制緩和は、設置認可の弾力化と第三者評価の法定を軸に、事前規制から事後評価へと我が国の高等教育政策の大転換を引き起こした。設置基準は準則扱いとされ、基準にさえ合致すれば新増設・改組転換が原則として認可されることとなり、特色を打ち出した多様な大学・学部等の設置が急増した。同時に株式会社による大学・大学院設置も容認された。また、大都市圏への新増設規制の撤廃によって都市部への大学の集中が起こり、受験生の大都市圏流入が強まっている。

 構造改革のもう一つの柱である競争強化は、私大助成政策を大きく変質させた。基盤的経費として不可欠な一般補助は02年度から08年度で計120億円も削減される一方、それに替わって特別補助が拡大・増額され、いまや私大経常費補助のうち34%以上を占めるに至っている。さらに国公私を通じた競争予算枠が新設され、その種類と額は増大の一途をたどっている。こうした競争と淘汰の政策によって、私大における規模別格差、地域間格差はさらに拡大し、地方の小規模の大学・短大の中には、経営破たん状態に至る学校法人が現れ始めている。

 こうしたなかで、文科省は経営困難に陥る学校法人の増加を見越し、2005年5月「経営困難な学校法人への対応方針について」を発表した。この文科省方針を受けて私学振興共済事業団は、2005年10月に「学校法人活性化・再生研究会」を設置し、2007年8月「最終報告」を公表した。この報告書に基づいて文科省と同事業団は「経営困難」法人に対し、赤字部門の閉鎖と人件費削減を事実上理事会に迫り、労使関係を険悪にさせるなどの事例が現れている。

 他方、「骨太方針2006」は、定員割れ私学の経営効率化を促す仕組みを一層強化するとして、私大助成を対前年度比1%削減することを決定した。これによって定員割れ大学への補助金減額を2011年まで段階的に強化することが決定されるとともに、特別補助に「定員割れ改善促進特別補助」が新規計上された。あきらかに「リストラ」支援と「廃止・廃学」促進政策である。09概算要求では特別補助の「定員割れ改善促進特別補助」が「未来経営戦略推進経費」(変更・新規)に衣替えされたが、本質はなんら変わっていない。この「リストラ」支援、「廃止・廃学」促進政策は即刻撤廃し、私大経常費補助の目的を、就学上の経済的負担軽減ならびに私学の健全な発達に資するとした私立学校振興助成法第1条に沿うよう再構築することが求められている。

 我が国の高等教育政策の貧困は、OECD諸国との比較で一目瞭然である。高等教育段階の公財政支出はOECD加盟国中最下位であり、家計(私費)負担の割合は53.4%とOECD加盟国の中で最も高くなっている。大学の教育研究を支える基盤的経費の貧弱さと学費の家計負担の高さは、国際的に見ても目を覆うばかりの状況である。

 政府は、対GDP比でわずか0.5%しかない高等教育予算を、少なくともOECD加盟国平均の1%まで無条件に引き上げ、学費の家計負担を抜本的に軽減し、基盤的経費への補助を飛躍的に拡大する政策に一刻も早く転換すべきである。

以上、決議する。

2008年11月16日 日本私大教連第21回定期大会


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