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2009年01月08日

新自由主義と大学教員の任期制、横浜市立大学は全教員任期制を廃止すべきである

大学改革日誌
 ∟●最新日誌(2008年1月5日)

 横浜市立大学の全教員任期制は,2003年改正労基法第14条を根拠に導入されたものであった。その意味で同大学の任期制は新自由主義原理に基づく「大学改革」の典型事例とみなしてよい。この新自由主義がいま全般的に破綻しつつある中で,大学の教育現場を荒廃させている職員の非正規化(有期雇用,派遣労働の大規模化)を含め,教員の任期制について,その撤廃に向けた全国的な運動として取り組む必要がある。
 現状では,一部の大学労組のみが個別的に対応しているに過ぎない。大学界の単産である全大教,あるいは日本私大教連はそうした運動を正面から掲げて取り組まない現状をどのように認識すべきであろうか。

1月5日 謹賀新年

 グローバル化と新自由主義の結果、働くものの職場の不安定性がこの10年ほどで一挙に拡大した。非正規労働者が3分の一に上るとか。その問題性が明確化するなか、かつての新自由主義の主唱者・先導者の一人・中谷巌氏も、今日の朝日新聞記事によれば、「転向」を表明しているとか。アメリカのオバマ大統領の登場も、この線上にあるだろう。

 グローバル化・新自由主義・「成果主義」の跋扈による雇用の不安定化の波にのって強行されたのが、大学における全員任期制なるものの導入であった。この間、教員組合の必死の努力で不安定化を阻止するための交渉が続けられている。

 しかし、それにもかかわらず、当局の態度は変わらない。根本から問題を見直そうとはしていない。

 現在、社会で問題になっているのは、不安定雇用が3分の1にまで増えた、そのひどさということであるが、本法人では「全員任期制」を基本方針とする態度を変えていないからである。その基本方針の元で、微修正に応じる、というのがこの間の態度であろう。そうでないなら、全員任期制の方針を廃止し、大学教員に関する任期制の法律に基づいた適正な制度(限定的な制度)に変更すべきである。

 任期制による採用(あるいは昇進における差別・・・昇任審査の前に管理職を通して、任期制への同意不同意の状況が確認されるというやり方・・・これまでの実績では不同意者は昇任が先延ばしになった)が行われており、任期制教員が増えれば、大学との結びつきの弱体化が進むであろう。当局が好む統計によれば、本学最大の組織である医学部における任期制教員の圧倒的多さからして、本学の任期制=不安定雇用化は全国最先端、ということになろう。(なぜ、本学では医学部が、また全国的にも医学部が文科系などの学部よりも、「任期制」を受け入れやすいのかは身分保障・生活保障のあり方をみなければならない。)唯一首都大学だけが、同じような「最先端性」を誇示している、ということになろうか。

 任期制への同意不同意などという基準は教育研究の実力・貢献とは関係がない。むしろ、不正常な関係・ゆがんだ状態さえ生み出す[1]。昇進においてはそのようなハードルは廃止して、教育研究の実績(ピアレヴュー=学界等の教育研究上の同僚・学問的同僚による外部評価による実績)に基づく制度に、根本から改めることが可及的速やかに求められるであろう。

 大学経営において、教育研究に従事するものの仕事へのインセンティヴが決定的に重要だと思われるが、その点からみて、この「改革」の中間決算はどうなるのであろうか?

 ともあれ、現在この場にいるものには、その持ち場で大学の再活性化のために、微々たるもの、牛のように遅々たるものであっても、可能な限りで尽力するほかないであろう。

 基礎からChangeを実現していくためには、昨年行われた4年次生へのアンケート結果の集約と速やかな全面的公表が待たれる。

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