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2009年02月12日

科学技術・学術審議会、「人文学及び社会科学の振興について(報告)」

■文科省
 ∟●「人文学及び社会科学の振興について(報告)-「対話」と「実証」を通じた文明基盤形成への道」について

「人文学及び社会科学の振興について(報告)」
-「対話」と「実証」を通じた文明基盤形成への道-【概要】

平成21年1月20日
科学技術・学術審議会学術分科会

第一章日本の人文学及び社会科学の課題

 日本の人文学及び社会科学が抱えている諸課題として、「研究水準」に関する課題、「研究の細分化」に関する課題、「社会との関係」に関する課題がある。
 近代化の過程で、欧米において既に専門分化を遂げた後の個別科学としての「学問」を受容・継受したという歴史的経緯が、その後の日本の「学問」の在り様を規定していると考えられる。

第一節「研究水準」に関する課題
(1)独創的な研究成果の創出
 欧米の学者の研究成果を学習したり、紹介したりするタイプの研究が日本において有力な研究スタイルとなっており、日本の人文学及び社会科学が克服すべき課題となっている。
(2)歴史や社会に根ざした研究活動の展開-日本で創造された知への関心-欧米の学者の研究成果の学習や紹介が研究活動の中心となったという歴史的経緯のためか、日本の人文学及び社会科学においては、日本の歴史や社会に根ざした研究活動が必ずしも十分とは言えない場合がある。21世紀を迎えた現在、欧米の学問の成果の受容にとどまることなく、日本の人文学者及び社会科学者が自ら置かれた歴史や社会と直接向き合った上で学問を展開してくことが求められる。

第二節「研究の細分化」に関する課題
 日本の人文学及び社会科学に対する人々や社会の期待は、個別的な実証研究の積み上げだけではなく、「『人間』とは何か」、「『歴史』とは何か」といった文明史的な課題に対する「(認識)枠組み」の創造にある。人文学や社会科学に対する社会の期待に応えるという観点から、「研究の細分化」が克服され、「歴史」や「文明」を俯瞰することのできる研究への取組が期待されている。

第三節学問と社会との関係に関する課題
(1)学問と社会との「対話」
 日本の社会的な現実を欧米の学説の適用によって説明するにとどまらず、独自の学説により理解していくことへの社会からの期待は大きい。特に社会科学においては、最先端の課題は、アカデミズムの側というよりも社会の側にしばしばあり、学問と社会との対話の必要性が大きい。
(2)社会からの支持
 学問の発展のためには、学問が社会的存在として認知され社会からの支持を獲得することが必要である。人文学や社会科学においては、成果が「ソフト」として発信されていることから、人々が成果が還元されているという実感を得ることが難しく、成果発信についての工夫が必要である。

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