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2009年03月02日

都立の大学を考える都民の会、首都大学東京「次期学長予定者の決定」について深い憂慮の念を表明する

都立の大学を考える都民の会

「次期学長予定者の決定」について深い憂慮の念を表明する

2009年2月1日
都立の大学を考える都民の会
代表 大串 隆

公立大学法人首都大学東京は、2008年12月4日、「首都大学東京 次期学長予定者の決定について」を発表した。
その結果と選考過程はわれわれを驚かすものであった。

首都大学東京の発表によれば、次期学長を選考する「学長選考会議」は2008年11月10日に第1回会議を開き、11月28日に原島文雄氏を次期学長予定者に決定した。 わずか18日間で、教員や労働組合からの公開をはじめ、数々の要望が出されていたにもかかわらず、又学内の意向を反映する措置もとられず、一切公開されずに決定されたものである。

日本の最高学府の一つとして、数々の歴史と伝統をつくり、自由で多様性をはぐくんで来た都立の大学で、そのトップリーダーを決める過程が、学内の教職員、学生の意向を全く無視して密室で非民主的に行われたのである。

我々「都立の大学を考える都民の会」は、2003年8月の石原都知事のトップダウンによる都立四大学の廃止、地方独立行政法人化が、大学の自主性・多様性を踏みにじり、大学関係者の教育・研究に対するモチベーションと民主主義を低下させ、ひいては都民に対する役割の後退につながることを問題にし、指摘してきた。

今回の学長選考はこの心配を裏付けるものとなった。

「次期学長予定者の決定について」の選考過程と結果は、単なる学長の交代という問題ではなく、都民の税金で運営されている首都大学東京のこれからの前途に大きな禍根と損失を与える問題と考える。

「都立の大学を考える都民の会」は、次期学長の選考に対して以下の見解を表明するものである。

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今回の「学長選考会議」は選考の手続きが存在しない中で進められた。多くの国公立大学では、「学長選考会議」や「意向投票・予備投票」の規定や実施規則などが事前に作成・公表され、その手続きに沿って実施されている。

ところが首都大学東京はこれらの規定や規則が存在せず、首都大学東京の発表した文書でも、第2回会議で「学長選考会議運営内規」が決定され選考を進めたとしている。

しかし、これはあくまでも選考委員内部で決めたものであり、「学長選考会議」の独断の選考と言わざるをえない。 

さらに問題なのが、教員や労働組合が指摘しているように、「内規7条」によれば、学長候補者を推薦できる権限が全委員に付与されておらず、「学長選考会議」議長だけになっていることである。発表された文書でも、議長が原島氏を招聘、考え方を聴取した後、議長が原島氏を推薦し決定したと記載されている。このような一方的、独断的なやり方で学長が選考されるべきでないと考える。

このような大学構成員の内面的支持と基盤のない、非民主的な方法で選出された学長の大学運営は、必ず形骸化し、著しい停滞に見舞われることことは明白である。

他の国公立大学で、ほぼすべての大学が「意向投票」を学長選考の重要なプロセスにしているのは、このような状況に陥る事を考慮して実施されているものである。

首都大学東京の学長選考過程は、他の大学と比較しても異常なやり方と言わなければならず、開かれた大学運営に全く背くものである。

本来大学の学長の選考は、複数の候補者がその所信を全学に公表し、大学内の多様な意見を踏まえ、大学関係者の総意で選出されることが最高学府の大学で求められており、そのことが大学の新たな発展と活力の土台となると考えるものである。

首都大学東京における今回の選考方法では、学長が大学構成員の主体性・積極性に支えられた運営を行うことは難しく、大学全体の研究力・教育力を大きく低下させる事にならざるを得ないと考える。本会は以上の点から今回の学長選考に対して深い憂慮の念を表明するものである。

以上

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