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2009年05月07日

関西外国語大学不当労働行為事件、地労委「救済申立書」

関西外国語大学21世紀教職員組合
 ∟●不当労働行為救済申立書

2009(平成21)年3月

大阪府労働委員会
会長 髙 階  叙 男 殿

申立人 大阪私学教職員組合
代表者・幹事会議長  大山口 登 

不当労働行為救済申立書

 労働組合法第7条1号2号3号違反について労働委員会規則第32条により次のとおり申し立てます。

第1 当事者の表示
1 申立人 〒542-0012
大阪市中央区谷町7丁目1番39号
新谷町第2ビル 102
申立人  大阪私学教職員組合
代表者幹事会議長 大 山 口  登

2 被申立人 〒573-1001
大阪府枚方市中宮東之町16番1号
学校法人関西外国語大学
代表者理事長 谷 本 榮 子
 電話 072-805-2801

第2 請求する救済の内容

1 被申立人は、申立人や申立人組合分会・関西外国語大学21世紀教職員組合(以下、申立人組合分会という)との団体交渉の開催を、次の手段をとって遅延させてはならない。

① 申立人組合分会からの団体交渉の申入書を、就業時間内に受け取るのを拒否すること
② 団体交渉の開催日時に関する被申立人の回答を、申立人組合分会の委員長宅へ書留郵送をすること
③ 継続して交渉するべき議題が発生した場合、次回団体交渉日時を当該団体交渉で合意しないこと

2 被申立人は、申立人組合分会との団体交渉に際し、実質的な権限を持つ者(谷本榮子理事長及び谷本義高学長)が出席し、法令で作成を義務づけられている財政資料等確実な資料を提示し、また、労働条件に関わる教学事項に関する協議を拒否することなく、誠実に団体交渉に応じなければならない。

3 被申立人は、申立人組合分会との団体交渉において、団体交渉の時間をあらかじめ2時間と制限せず、団体交渉時に議事録を残すなどして、誠実に対応しなければならない。

4 被申立人は、申立人組合分会に所属する者以外の者に調整手当や一時金等を支給し、申立人組合分会が仮支給を請求しているのに、申立人組合分会との賃金交渉が妥結していないことを理由に、調整手当の増額分ないし一時金等の仮支給をしないという不利益取扱いをしてはならない。

5 被申立人は、申立人組合分会に対して、組合事務所及び組合掲示板を貸与し、また、申立人組合分会が職員用メールボックスを利用するのを認めなければならない。

6 被申立人は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記文言を白紙に記載して署名捺印の上で、申立人に手交するとともに、縦1メートル横2メートルの大きさの白紙に鮮明に墨書して、これを被申立人中宮学舎及び穂谷学舎のそれぞれ本館入口の見やすい場所に1ヶ月間掲示しなければならない。 


陳  謝  文

 この度、当大学は、貴組合に対し、団体交渉を誠実に行わなかった行為、組合事務所・掲示板を貸与しなかった行為、組合が職員用メールボックスを使用することを禁じた行為、及び、賃金交渉が妥結しないこと等を理由に、調整手当の増額分ないし一時金等の仮支給をしなかった行為につき、大阪府労働委員会から、労組法7条1号及び3号に該当する不当労働行為であるとの認定を受けました。
 当大学は、ここにその責任を全面的に認め、貴組合に対し深く陳謝するとともに、再びこのような不当労働行為を繰り返さないことを誓約いたします。
年  月  日

大阪府枚方市中宮東之町16番1号
学校法人関西外国語大学 
理事長 谷 本 榮 子
大阪私学教職員組合
同分会・関西外国語大学21世紀教職員組合 御中

第3 不当労働行為を構成する具体的事実

1 当事者
(1) 申立人
① 申立人大阪私学教職員組合(以下、大私教という)は、1960年(昭和35年5月4日、大阪府下の私立学校(大学から幼稚園、各種学校を含む)の教職員によって構成される労働組合であって、現在、組合員約2300名、分会数約100分会を擁している。
 申立人組合は個人加盟を原則にするが、単位組合の加盟も認める労働組合であって、原則として職場毎に分会を構成している。但し、対外的には分会名を冠さず、単位組合名で活動することもある。
② 申立人組合の分会の一つである関西外国語大学21世紀教職員組合(以下、単に申立人組合分会ということがある)は、被申立人の設置する学校の教職員によって組織され、2007(平成19)年9月22日に結成された。現在の構成員は教員を中心に構成するところ、その代表者は福島一彦である。
③ また、被申立人には、昭和44年に結成され、ある時期大いに活動した関西外国語大学教職員組合が別に存在するが、被申立人の長期にわたる組合敵視政策の結果、現在では同組合に所属するのは数名の職員にとどまっている。なお、同組合も申立人組合に所属する。

(2) 被申立人
①被申立人学校法人関西外国語大学は、法人として1944(昭和19)年3月15日に設立され、翌年に谷本英学院を設立し、1947(昭和22)年に関西外国語学校となり、1953(昭和28)年関西外国語短期大学を、さらに1966(昭和41)年に関西外国語大学をそれぞれ設置し、現在に至っている。
 現在では、枚方市内の2カ所で、外国語学部、国際言語学部、留学生別科、短大部、それに大学院をおいている。
② その教職員総数は、2006年(平成18年)5月現在で、約800名(内訳・教員数約500名、職員数約140名・業者委託職員約160名)である。
 また、その学生数は、短大を含めて合計約1万3千名を擁しており、戦後に設立された語学系大学として西日本一の規模を誇っている。
③しかし、上記教員総数約500名のうち専任教員数は約120名(僅か全体の2割強)にとどまり、8割弱の教員が非正規教員という他に例を見ないイビツな構成となっている。非正規教員の内訳は、非常勤が約200名、特任教員が約115名、招聘教員が約60名、その他・再採用教員と実に「多彩」である。
 そして、これら非正規の教員は、再採用教員を除いて、原則として、教授会に参加する資格や機会が保障されていない。
④こうして、被申立人の財政は、平成年19年3月期において、帰属収入が約157億6千万円であるのに対して、人件費は約40億5千万円(26%)に留まり、帰属収入から消費支出を控除した自己資本増加額は年間約59億9千万円(37%)に達し、その累積結果である資産は1,473億7千万円に達している。
⑤このように、教員の実に8割弱、職員の過半数が非正規という雇用形態と、それに後に指摘する調整手当に象徴される「低賃金政策」により、被申立人は、日本の私立大学の内でも、特異な学校法人運営となっている。それは「関西外大方式」と名付けるにふさわしく、とりわけ、その運営に異を唱える労働組合や組合員に対しは、長期にわたり一貫した敵視政策、差別政策をとり、その不当労働行為体質は徹底している。

2 本件不当労働行為に至る経過(背景)

(1) 被申立人は、公益法人たる学校法人であるのに、そこには以下のような家族支配ともいうべき体質がある。
①被申立人総長の谷本貞人氏(以下「谷本氏」という)は、「創業者」である先代の跡を受け1980(昭和55)年9月に理事長及び学長に就任したが、その体制が2007年4月まで継続した。
 この体制は、就任直後の同年10月1日、任期の定めがなく、具体的選考方法が記されていない「学長選考に関する規程」を、教授会の審議を全く経ずに施行・実施したことに端を発している。つまり、谷本氏は1度も学長としての審査を受けることなく、実に27年もの長きに亘り、学長の地位にあった訳である。
 そして、前同月からは、その息子の義高氏が学長、妻の榮子氏が短期大学部の学長となり、自らは総長となり、なお家族支配を継続している。
 2008(平成20)年10月25日、谷本貞人氏は理事長を退任したが、その後任には妻の榮子氏が理事長に就任し、学長である息子の義高氏も理事となった。
②このような家族支配体制の下で、被申立人の労務管理態勢は、以下に列挙するように、教職員に対する不当労働行為体質に根ざした差別と分断管理、低賃金を強いており、その支配は専横と言わざるを得ない域に達している。
(ア) 被申立人の賃金制度の特徴
ⅰ まず、1980(昭和55)年、基本給を「基本給」と「第二基本給」に分割した。
 そして、その後1984(昭和59)年、その年のベアが実施出来ないので、ベアに代わると説明して「調整手当」制度を導入した。その際、調整手当は手当であるから基本給とは別であり、一時金、退職金の計算・支給には反映しないとした。
 この調整手当は、当初は、その額も僅かであり、賃金に占める率・割合は小さく、「手当」という名前に相応しいものであった。
ⅱ ところが、その後も被申立人では、毎年の賃金改定期において、基本給を一度も改訂せず、「調整手当」のみを増額することを繰り返した。
 また、1984(平成59)年11月、経歴換算基準を廃止し、本来基本給として支払うべき経歴換算部分を調整手当として支給するなどしてきた。
 その結果、賃金に占める調整手当の割合が異常に肥大化し、最近では、人によって、基本給よりも「調整手当」の額が大きく、「手当」たる意味あいを全く失う異常な事態となっている。
 かかる異常な賃金構造は、労働に相応する対価として支給されるべき賃金の性格上、もはや違法というべき域に達している。
ⅲ また、この「調整手当」は、その支給基準が明示されない結果、理事会の一方的査定で、恣意的に決められている。
ⅳ こうして「調整手当」のからくりによって、被申立人では、多くの正規教職員が、他の私立大学の平均的水準に達しない低賃金となっている。
 被申立人の給与表は、実に1983(昭和58)年に制定されたものが、一度も改訂されずに、現在に至るまで、そのまま用いられているのである。
ⅴ この結果、一時金や退職金の乗率こそ、他の私立大学に比較して世間並みの数字であっても、基本給部分が異常に低額である結果、現実に支給される退職金や一時金の額は、到底、世間並みと言えない低額に抑えられている。

(イ) 教員の任用・昇任政策
ⅰ また、1984(昭和59)年、被申立人は「教員任用・昇任手続きに関する内規」を施行し、理事会の判断のみで教員の任用や昇任ができるようにした。
ⅱ その結果、被申立人に批判的な教員や、とりわけ申立人組合に所属する労働組合員(教員、職員は問わない)は恣意的に、冷遇された処遇を受けてきた。
 例えば、申立人分会の一人である大谷晃也准教授(1980年に助教授として採用され、以後、昇任の基準を満たした後も助教授[現在の呼称は准教授]に留められている)が、その典型である。なお、この件は、現在、裁判所で係争中である。
(ウ) 教員の構成
ⅰ また、被申立人では、学生数が増大しても、それに応じて専任教員の数を増やさず、専ら非正規教員、すなわち、招聘教員(1年ごとの契約で最長5年までの外国人教員)や特任教員(1年契約)、また再採用教員(1年契約)等を増やして、これに対応してきた。なお、被申立人では、これらの短期雇用の非正規教員もあえて専任教員と称して、文科省などの補助金対象教員として申告している。
ⅱ その結果、既述のように、現在では全教員の内、実に8割弱もの教員が、雇用継続の機会を理事会に委ねられた不安定な身分の教員となっている。
本来、法律上も、その地位が保障されるべき大学教員であるのに、被申立人では逆にその多くが不安定な身分となっている。不安定な身分のままでは、安心して教育や研究に勤しめないというものである。
(エ) 対労働組合政策
ⅰ このような人事政策や低位の雇用条件がまかり通るのは、被申立人による一貫した組合敵視政策、不利益処遇などの不当労働行為体質による。
ⅱ 被申立人においては、昭和44年1月に結成された関西外国語学園教職員組合との間で、同年11月には、大阪府労働委員会の斡旋・和解でユニオンショップ協定が締結されたが、1981(昭和56)年、山本甫助教授(=脱退後、労務担当を長く続け、現理事)を先頭にする数名が同組合を脱退し、これを皮切りに激しい組合脱退・切り崩し工作が行われた。
ⅲ その結果、同労働組合の影響力が順次に衰え、新規の加入者を迎えることが出来なかった。
 同組合に一旦加入した教員の殆どは、1990(平成2)年頃までに同組合を脱退し、職員の内の組合員も少数に固定し、その組合員も退職期を迎え、最近では数名の組合員となり、影響力を急速に低下させた。
③ 以上のような経緯の中、多くの教員はたとえ教授会においても、理事会に対する批判的意見を述べられず、自由な発言さえ出来ない状態にある。
④ このように被申立人においては、「専任教員」にも恣意的な給与システムを導入し、他方、比較的低い賃金である招聘教員や特任教員、再採用教員の割合を増やした結果、最近では、実に総収入総額の約30%程度しか人件費に回されていない。私学平均が約60%であるのに対比すると、いかに「低位」に突出しているかが分かる。
  他方、被申立人の敷地、校舎、施設等は膨張を繰り返し、その設備、学生数は、語学系の大学として驚異的な「発展」を果たしたのである。
 その結果、被申立人では、ここ数年で見ても、年間約60億から約70億円(収入の4ないし5割)という巨額が蓄積されるという「異常」な学校会計が行われている(被申立人の消費収支計算書に基づく推計)。

(2)申立人の分会は、被申立人のこのような状況を受けて、少しでも、学内の研究・教育条件、労働条件を、大学という名に恥じないように改善することを目指して2007(平成19)年9月22日、結成されたものである。なお、この結成には、4名の教員により平成9年12月に結成され活動していた関西外国語大学教員組合が合流し結成に参加した。
 申立人の分会は、その目的として、「学校法人との協力のもと、関西外国語大学ならびに関西外国語大学短期大学部における研究・教育ならびに労働条件・福利厚生の健全化を求める集団的意思表示の媒体としての役割を担うこと」を掲げている。
 
3 本件不当労働行為に係る具体的事実

(1) 不誠実な団体交渉の実態
 申立人の分会を設立後、2007(平成19)年10月27日を第1回として、申立現在に至るまで、計9回の団体交渉が持たれてはいる。
 しかし、その団交の経過、実態を見るなら、それは文字通り不誠実交渉そのものであった。すなわち、
(ア) 申入書の受け取り嫌悪など団交開催の不誠実対応
ⅰ 申立人の分会が被申立人に団交申入書を提出しようとしても、就業時間内はこれを受け取らず、就業時間外に手交して提出する方法でなければ、その書面さえも受け取らない対応をしている。
 このような無用な手間暇をかけさせるのは、単なる、無用な嫌がらせでしかない。
ⅱ 団交開催日時に関する被申立人の回答を、適宜な方法(例えば、メールボックスへの投入、研究室への連絡、電話、メールの利用など)によるのではなく、申立人組合分会の委員長宅への書留郵送をする。これは一見、丁寧なように見えて、昼間の不在宅へ配達されるや、郵便局へ受け取りに赴く必要があり、かえって労力と時間を要することになる。
 このため、申立人の分会では、上述の適宜な方法での回答を望むのであるが、いずれも拒否されている。これらは総じて団交開催を少しでも延期させようとする嫌がらせでしかない。
ⅲ 被申立人は、団交時間を一方的に2時間に制限し、団交議題が合意に達せず、継続的な団体交渉が必要な場合でも、その団体交渉では、次回開催日時を団体交渉で決めようとしない。
 その結果、改めて、新規の申し入れをすることとなるが、それには、上記ⅰ,ⅱの事情も加わり、無駄な時間が経過することとなる。
 次回開催が必要な場合は、当該団交で決めるのが当然であるから、被申立人のこの対応は団交開催への著しい嫌悪でしかない。
 ⅳ さらに、団体交渉が2時間を経過すると、被申立人は、未だ議論が一段落していなくとも、2時間で一方的に打ち切ってしまう。この点を抗議しても、それが団交ルールだと押し付ける。これでは、到底誠実に団交をしているとは言えない。
(イ) 実質的権限のある者の出席がない
 被申立人において実質的な権限を独占する谷本貞人理事長(当時)や谷本榮子現理事長、谷本義高学長らは、申立人組合・同分会との団体交渉には、一度も出席したことがない。
 そのため、労働条件の向上を目指す協議に関して、団体交渉の席上において、実質的な交渉・進展を見たことがない。つまり、被申立人の開く団体交渉は、名ばかりであって、被申立人が事前に一方的に結論した内容を押し付けるための場でしかない
 そして、被申立人側の団交出席者は、交渉時には、揚げ足取りをしたり、世間一般の話しをして時間を費やすのみで、その誠実な交渉で協議が前進・成立したことがない。
 また、申立人の分会は教員が中心の組合であるので、その要求には教学に関わるものが少なくない。つまり、確かに教学事項に関わるが、労働条件に直結する問題、例えば持ちコマ数(担当講義の時間数)の問題がその典型である。ところが、理事会側出席者には教員の実務を理解する者がいない。
 また、上述のように、被申立人は理事長の専断的な体制のため、理事長が出席しなければ、教学に関わる要求以外の賃金などの労働条件に関する協議について実質的な交渉はできない。
 そこで、申立人の分会としては、実質的な権限を独占する理事長や教学の責任者である学長らの出席を求め続けているが、被申立人は、「必要ない」として、一切これに応じようとしない。
(ウ) 不当な団交ルール等の押し付け
 被申立人は交渉時間を2時間と限定し、時間が経過すると中途であっても協議を打ち切る。
 さらには、交渉の中で、例えば、被申立人側の主張する「団交ルール」を押し付けようと一方的に話し合いを求める、あるいは、例えば、少子化による大学進学者の減少などの一般的な話を説明するなどして時間を空費する。
 これにより、実質的な争点の協議ができない事になる。
(エ) 財務状況などの資料・根拠の提示なし
 被申立人は、団体交渉で財政状況を説明するにあたって、大学の財務状況等に関する具体的な資料を示すことがない。法令上作成を義務づけられている財務諸表類についても、小項目まで示す資料を提示したことがないのである。
 被申立人に固有の客観的財務資料を示さず、申立人やその分会を合理的に説得する事は困難であるから、結局のところ、結論を押し付けるだけの交渉となる。被申立人のこの態度は、そもそも申立人やその分会との誠実な協議で、労働条件などを交渉・協議して合意を形成する意思を有していないことを示している。
 団体交渉には、権限ある者が出席し、確実な資料を提示して、実質的な協議をすることが強く求められている。
(オ) 議事録などを残さない
 被申立人は、申立人やその分会が要求しているにもかかわらず、文書による回答や議事録の交換に応じない。
 その結果として、団交の場が、不毛な中傷的意見の繰り返しや、議論を蒸し返して時間を費やす場になり下がっている。被申立人側が団交に誠実に応じようとしない態度の表れである。
 誠実な団体交渉の結果を、文書回答や議事録の交換をするなど、記録として残すことによりこの弊害が除かれるし、議論の出発点も明確になるから、議事録を残すことが強く望まれる。
(カ) なお、以上のような団体交渉の具体的経過については、別に提出する陳述書で、さらに詳述する。

(2) 賃金・調整手当、一時金等の不支給と遅延
① 申立人の分会は、2008(平成20)年度の春闘・賃上げ交渉として、被申立人との間で、数次の団体交渉を行った。しかし、被申立人側は、上述の通り不誠実団交を繰り返し、現実に未だ妥結に至っていない。
 ところが、被申立人は、賃金交渉が妥結に至っていない事を理由にして、申立人分会の組合員である福島一彦教授と安川慶治准教授の2名に対して、4月分以降の調整手当増額分を支給しないという取扱を行った。ここにいう調整手当とは、上述の通り、支給基準等、全く不明確なものであるが、被申立人がベア代わりに支給する事にしたもので、基本給としての性質を有する。
 そこで、申立人・分会としては、調整手当増額分について、他の教職員に対して支払っているのと同一の算定基準により仮支給する事を求めてきた。しかしながら、被申立人は「新賃金体系についての協定が締結されない限り支給しない」との態度に固執し現にこれに応じていない。
② さらに、平成20年12月中に支給される冬季一時金についても、被申立人は、団体交渉の場において「賃金交渉が妥結しないと仮支給はしない」と明言して、被申立人が分会員と認識する者についてのみ現実に年内の支払いをしなかった。
 この平成20年年末の冬期一時金については、かねて申立人の分会から、妥結しない状態でも仮支給せよとの要求していたところ、被申立人は、ようやく、大所高所の見地からこれを支払うとして、平成21年2月16日、これを仮支給した。
 しかし、これらの態度を見るとき、今後とも、このような妥結しない限り支給しないとの対応を被申立人がとるのは必定である。
③ 確かに賃上げや一時金の支給は、労働組合と協議中の場合、その妥結をまって支給するのが本筋であろう。団交中に、一方的に支払うのは、組合との協議無視になるからである。
 しかしながら、春の賃上げや、夏、冬の一時金の支給には自ずと時期的な限度あるから、それを大幅に超えるなら、不支給が組合員を差別的に扱ったこととなるのは見易いところである。まして、非組合員が多数の場合(=被申立人の場合)には、組合員に未妥結を理由に支給せずにおいて、多数の非組合員に支給するのは、そのことがより明かである。
 労働組合が少数組合である場合、経営側が労働組合との妥結がない限り、自ら予定する賃上げや一時金さえ支払えないとするのは、一見、組合との協議を尊重するように見えて、他の多数の従業員に支払いがある以上、そこに労働組合員であるが故の不利益扱いが発生しているのは見易いところである。
 労働組合が現に仮支給を要請している場合には、その不利益性はより明かである。
 仮支給を申立人組合が求めている限り、そこに組合無視ではないのであって、速やかに支給するべきである。
④ なお、会社が新賃金体系についての協定が締結されない事を理由に一時金等の支払・仮払等の代替案の提案をしなかったことについて不当労働行為性を認定した先例として、札幌交通不当労働行為再審査事件(中労委平成16年(不再)第12号)が存在する。

(3) 組合事務所の不貸与等の不当労働行為
① 被申立人は、別組合(関西外国語学園教職員組合)には組合事務所・組合掲示板を貸与しているが、申立人の分会にはこれを貸与しようとしない。
② しかしながら、申立人の分会に対して、組合事務所や掲示板を貸与しないのは、労働組合間において差別的な取り扱いをするものであり、それは、申立人の分会に対する不当な支配、介入であるから、これらの無償貸与を求める。

(4) メールボックスの使用禁止は不当労働行為
① 被申立人は、教職員用のポストとして、学内に「メールボックス」を設置し、被申立人から教職員に対する文書配布をしたり、あるいは、職員相互の文書、手紙などの情報の受け渡し場所として広く利用するのを許している。
② また、被申立人自身、このメールボックスを利用して、申立人の分会との団交結果(それも分会の主張をねじ曲げることが多い)を記載した労働組合活動に対する批判的文書を配布している。
 ところが、申立人の分会が、このメールボックスを利用して、組合活動上の各種文書を配布・使用するのは厳に禁止している。
 しかしながら、労働組合の活動は、憲法と法律に従い公認されるところであって、労働時間内の組合活動が制限されることがあるからといって(=就業時間内における組合活動が制限されるのは、労務提供義務との関係からである)、従業員に利用を許すメールボックスの使用を、組合文書の配布については許さないと制限が出来る関係でない。
③ メールボックスの利用を労働組合に許しても、被申立人の何らかの権利が不当に侵害されるものではない。
自らがこれを利用して分会の組合活動を批判・非難する以上、それと同等の機会を労働組合にも認めることが使用者たる被申立人がとるべき公正な態度である。
④ それを認めず、自らだけが一方的に労働組合の活動への非難・批判意見を垂れ流すのは、組合活動への不当な支配・介入であるから、その観点から救済を求める。

 以上の通り、救済を求める。
(以上)


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