研究者の地位と権利を守るための全国的ネットワークをつくろう!

2009年06月02日

教育再生懇談会、第四次報告

教育再生懇談会、これまでの審議のまとめ-第四次報告-

これまでの審議のまとめ
-第四次報告-

平成21年5月28日
教育再生懇談会

……


2 教育のグローバル化と創造性に富んだ科学技術人材の育成

【国家戦略としての人材育成】
 21世紀は、科学技術に裏付けられた新しい知識・情報・技術が、ボーダレスに絶えず進化する知識基盤社会であるとともに、経済活動はもちろんのこと、環境問題やエネルギー問題、感染症対策など、人類を脅かす様々な課題も、国境を越えて世界共通の問題となるグローバル社会である。
 こうしたグローバル化した社会の中で、我が国が世界規模の課題の解決に向けてリーダーシップを発揮し、世界の発展に貢献していくとともに、今後も様々な分野で成長を続け、国際競争力を維持・強化していくために、国家戦略としての人材育成に取り組んでいくことが必要である。すなわち、初等中等教育から高等教育までを見通し、いかに国際通用性のある人材を育成していくか、また、いかに幅広い知識と柔軟な思考力を有する創造性に富んだ科学技術人材を育てていくかを示し、国を挙げて取り組んでいくことが求められている。

【国際通用性のある教育の実現】
 国際的に通用する人材の育成のためには、まず、子供たちに世界トップの学力をしっかりと身に付けさせるとともに、言葉の障壁を取り除き、英語をツールとして使いこなせるよう、基礎的な英会話能力を身に付けさせることが重要である。英会話力は、外国での仕事や生活の上で役立つばかりでなく、異文化を知り、国際社会の中で物怖じせずに行動できるようになる基盤でもある。当懇談会では、既に英語教育を抜本的に強化するための提言を出し、新学習指導要領において、小学校の5年生から外国語活動が導入されることになったが、その取組は緒に就いたばかりであり、成果は今後の各学校における取組や、その基盤の上に取り組まれる中学校以降の英語教育の取組如何にかかっていると言える。
 また、高等教育機関において、専門知識を有する優秀な大学院生や若手研究者を育成するとともに、それらの者が、閉ざされた環境の中で教育・研究に没頭するだけでなく、海外の大学等異なる環境・異文化の中で武者修行をし、知的触発を受けながら創造性を高めていくことは、国際社会で活躍する人材の育成にとって極めて意義のあることである。しかしながら、日本国内における教育・研究環境が向上する中、近年、海外へ行く日本人の留学生・研究者の人数が頭打ちになるなど、若者が「内向き志向」になり、外の世界に積極的に飛び出して行かなくなっているのではないかと懸念される。
 さらに、次代を担う科学技術人材を育成するため、小・中学校段階から、国際的な通用性という観点も踏まえ、科学技術リテラシーの土台である理数教育の充実を図るとともに、高等学校段階では、科学技術に関する高度な学問の基礎に触れさせることなどを通じ、科学技術に関するそれぞれの意欲や能力を最大限引き出していくことが必要である。しかしながら、実験や観察を行う上で、設備・備品が不十分であったり、準備時間が十分に取れないといった問題や、学級担任制を基本とする小学校では、理科の指導を苦手とする教員が多いなど、学校現場は多くの問題を抱えているのが現状である。

【国際的に開かれた大学づくり】
 また、グローバル化する社会の中で、優秀な大学生等の留学生交流の一層の推進や外国からの研究者や専門人材等の受入れ体制を整備するなど、国境を越えた高度人材の国際流動性の向上を図るとともに、優秀な大学院生や若手研究者に対する支援を充実するなど国際的に通用する若手人材等の育成を図ることが必要である。そのためには、昨年7月に策定された「留学生30万人計画」の実現(2020年を目途)が不可欠であるが、約12万人という現状に鑑みると、その達成のためには、今後、これまで以上の戦略的な取組が必要である。一方、日本人の海外への留学生数は、ここ数年伸び悩んでおり、その推進のためには個人の判断に委ねるのみでは限界がある。また、海外の優秀な研究者などの高度人材にとって、日本の研究・生活環境は、日本に来て研究を行いたいと思わせる魅力に欠けるものであり、我が国に国境を越えて世界の優秀な「頭脳」が集積するような環境整備が必要である。
 さらに、大学・大学院等の改革に関しては、これまで、本懇談会や教育再生会議において様々な提言を行ってきたが、その実施状況は不十分であり、特に若手研究者が意欲を持って研究に取り組み、その能力を発揮できるようにするためには、大学院生や若手研究者の立場に立った改革が重要であるが、そうした観点からの制度や支援、研究環境が整っていない。このままでは、日本の若い優秀な「頭脳」が海外にどんどん流出する事態を招くことになる。
 こうした状況を踏まえ、国や大学等がそれぞれ、このままでは我が国が国際的な知識基盤社会から取り残されるという危機感と当事者意識を持って、これまでの取組で不十分な点を推進するため、次のような取組を進めることが必要である。

(1)国際的に活躍できる人づくり
○ 世界トップの学力を目指し、教育内容や授業時間数等の充実を図った新学習指導要領の着実な実施に向け、教職員定数の改善や施設・設備・教材の整備などの環境整備を着実に推進する。
○ 平成23年度からの小学校における新学習指導要領の完全実施に向け、小学校の外国語活動の充実のため、全ての小学校教員に対する研修の計画的な実施、ALTや中学校の英語教員による小学校への支援の充実、音声面の指導の補助となる電子黒板等のICT機器の整備・活用を積極的に進める。
○ 海外経験が豊富な人や英会話能力の堪能な人、ネイティブスピーカーなど学校外の人材の協力が得られるよう、学校支援地域本部などを活用し、地域における外国語活動支援のための人材バンクの整備や、外部人材を積極的に活用するためのコーディネータの配置を進める。また、教員採用においても、青年海外協力隊など海外での多様な経験を積んだ人材を積極的に採用する。
○ 小学校の外国語活動や中学校以降の英語教育については、教育再生会議の提言等を踏まえ、学習指導要領の改訂により導入・充実され、また、当懇談会でも小学校3年生からの早期必修化を目指すことなどを提言したところであるが、今後の英語教育の実施状況を踏まえつつ、高等学校卒業までには英語で日常会話ができるようになるよう、小・中・高の連続性に配慮した英語教育の内容や方法などについて見直しを行う。
○ 国際通用性のある日本人の育成に向け、その前提として、国語教育の充実や日本の歴史・文化についての教育を充実する。
○ 社会のグローバル化に伴う日本語指導が必要な外国人児童生徒の増加に対応し、公立学校における円滑な受入れ体制の整備や日本語指導の充実を図るとともに、国際理解教育を推進する。
○ 高校生段階も含め、日本の若者の海外留学を大幅に増加させるため、奨学金制度や派遣制度を充実する。

……


|