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2009年08月07日

高知大学、緊急!驚くべき「学系長」選出方法案!

■「意見広告の会」ニュース477より

緊急!驚くべき「学系長」選出方法案!
学長専制・学部自治破壊を阻止しましょう!

ニュースレター NO.15
2009、7,31

公正な学長選考を求める裁判を支える会

 事務局:高知県高知市曙町2-5-1 高知大学教職員組合内
     (TEL/FAX 088-844-1489)

 行政訴訟は次回9月18日に弁論準備手続きが行われます(11時高知地裁)。これに向け、原告団・弁護団・支える会は討論・準備を重ねています。被告(国)側は、「原告適格」を問題にすることで、事実上の門前払いをねらっていますが、前号でも報告したように、裁判は実質的な審理に入る可能性が大きくなってきました。これに関しては、近々に勉強会を開催する予定です。

 一方、大学を取り巻く状況を見ると、「内閣府・規制改革会議タスクフォース」が「学長選考の適正化」というテーマで全大協から意見聴取を行い、そこで高知大学の事例について詳しい報告が行われました(6月12日)。

 このような事態に危機感を募らせたのか、学長はその「専制体制」をさらに徹底する組織運営を策定しようとしています。

 去る7月16日の教育研究部会議の席上、桜井教育研究部長(総務担当理事)から次のような驚くべき「予告」(改組実施検討本部での決定のようです)がありました。
 
 1) 9月中に学系長の選考を行う
 2) 各新部門から2名の学系長候補者を出し、学長がその中から選ぶ
 3) つづいて学部長、部門長を選出する。学部長は11月末までに選出する
 4) 学系長、学部長、部門長は兼任しない
 5) これらの「長」の任期を統一し、来年4月1日からとする

 この提案には以下のような重大な問題があります。

 まず、第一に各学系長は4名から10名(医療学系)の候補者から学長が任命するということになるということです。現在の制度も形式上は学長による任命となっていますが、事前の申し合わせで、学部長が選ばれています。今回は、そこを根本的に変え、学長が複数候補の中から自由に選べるようにするというやり方なのです。さらに、22年度からの学系長は研究費の配分,教員の採用・昇任人事,教員評価の面で実質的に学部長よりもはるかに大きな権限をもつだろうと考えられることから、学系長に副学長を兼務させることが示唆されています。学長が自分のお気に入りを選んで学系長に据えた上で、執行部に取り込むという作為が透けて見えます。まさに、「学長専制」以外の何物でもありません。

 また、学部長・部門長などの兼務を禁じるということになっているのも問題です。

 学部長と部門長、学系長を必ず別の人間が務めなければならないとした場合、実質上一つの組織に二人以上の「長」がいるのと同様になります。例えば教員のセクハラ案件があったとして、学生に対するものなら教育組織の長である「学部長」の責任となりますが、もし同僚に対するものなら教員組織の長である「学系長」あるいは「部門長」の責任ということになります。そして全国の学部長会議に高知大学から出席するのは教員に対する管理権が半分しかない(あるいは、管理責任を半分免除された)「半人前学部長」ということになるでしょう。このような体制で、人事・予算の執行はどのように行われるのか。これらの重大な問題に対して執行部は責任ある回答が全くできません。

 また、兼務を禁ずることで管理職手当をもらう人間の数が増え、財政上の負担となるのではないかとの質問に対し、桜井理事は「学科長の管理職手当をどうするかなどを検討しているので必ずしも増えるとは限らない」と回答したそうです。すなわち、学科長など現場で学生教育の陣頭指揮にあたっている人間の給料を削って、学長の「お気に入り」に、お手盛りの「ご褒美」を配分するというのがこの案の中身ということです。

 学系とは「教員評価」を行う組織であると執行部は再三強調してきました。その「長」を学長が勝手に選ぶという仕組みがもし認められたら、教員一人ひとりの身分や待遇は、ピアレビュー云々以前に、学長の意を受けた一握りの「学系長」の価値観や評価によって好きなように決められてしまうでしょう。この間、勤勉手当の査定等において、学がどれほど好き勝手をやってきたかを見ればそれは明らかです。

 さらに問題なのは、全ての学部長の任期を来年4月1日からに統一するということです。現在の理学部長の任期は再来年の4月までです。また教育学部長の任期は来年の2月末までです。たしかにこれまでも、任期途中で諸事情からお辞めになる学部長はいました。しかし、「任期をそろえると便利だから、任期途中の学部長は辞めろ、足りないなら一ヶ月延長しろ」というようなことを言った学長はいままでに一人もいません。もしそうなれば、その暴挙により、学部自治・大学自治が破壊され,ひいては憲法が保障する学問の自由や言論の自由さえもが侵害されてしまうことに繋がりかねません。

 執行部側は、8月末あるいは9月初めにも、この「案」を正式決定したいようです。実施のためには、様々な規則の改正が必要ですが、このような規則改正のための議論も手続きも行わないまま、ともかく学系長の選出を強行しようとしているのです。これを許すのかどうかは裁判の帰趨とならんで、高知大学が「大学」の名に値する存在たりうるかどうかの試金石です。

 「学長専制」をもたらした一昨年の学長任命の無効を裁判の場で訴えるのと平行して、「専制体制」の徹底化を目論むこの「案」に対して広範な反対の声をあげ、実施を絶対に阻止しましょう。それが、裁判での勝利の展望をも切り拓いていくはずです。


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