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2009年09月10日

日本の高学費問題の解決を考える際に有益な二つの文献

大学評価学会
 ∟●「大学評価学会通信」第22号

日本の高学費問題の解決を考える際に有益な二つの文献

細川孝(龍谷大学、経営学)

 大学評価学会では2004年3月の設立時から、日本の大学評価を考える上で、異常な高学費は避けて通ることのできない(研究)課題であると考えてきた。そして、2006年問題特別委員会(2008年3月開催の第5回年次総会において「国際人権A規約第13条問題特別委員会」に名称変更)を中心とした取り組みを進めてきた。
 高学費問題は当事者である学生や父母、そして教育関係者などの広範な運動によって、現実の政治を動かすまでになっている。6月23日に閣議決定された「経済財政改革の基本方針2009」では、「安心して教育が受けられる社会の実現に向けて、各学校段階の教育費負担に対応するため、所要の財源確保とあわせた中期的な検討を行いつつ、当面、軽減策の充実を図る」と述べられている。
 学会という立場からのものではあったが、故田中昌人氏(初代の学会共同代表)を中心としたわたしたちの取り組みは、一定の貢献を出来たものと考えたい。しかし、日本の高学費問題を解決していく具体的な道筋を明らかにするという点では、究明すべき課題も残されている。引き続き続き学会として取り組んでいく必要があるように思う。
 そこで、さしあたり本稿では、高学費問題に関わる二つの文献を取り上げて若干の解題を試みたい。まず、ミーク・ベルハイド(平野裕二訳)、国際人権法政策研究所編『注釈・子どもの権利条約第28条:教育についての権利』現代人文社(発売:大学図書)、2007年である。そして、小林雅之『大学進学の機会 均等化政策の検証』東京大学出版会、2009年である。
 いずれも最近になって紹介いただいたものであるが、一読して、日本の高学費問題の解決を考える際に有益な文献であると感じた。前者は、「子どもの権利条約」についてであるので、(的確な表現ではないが)理念的、理論的なものとしてとらえることができよう。一方、後者は、日本の実態についての実証的な研究である。理論と実態という二つの文献をあわせて読むことは、高学費問題を解決していく展望を考える上で意義があるだろう。……


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