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2009年10月14日

横浜市大、次期中期計画「提案BOXの設置」 サイレントマジョリティーの詐称よりも始末に負えない危険性がある

大学改革日誌
 ∟●最新日誌(10月13日)
 ∟●組合ニュース(10月8日)

10月13日 教員組合のニュースをいただいた。休職者が多くなっているという。これには、「任期制」の影響も大きいと思われる。評価する人間が、「上から」「外から」任命された管理職によるものであり、大学教員の精神的自由は極めて抑圧されざるを得ない。本学のように、教員による民主主義的な管理職選挙の制度が完膚なきまでに撤廃されてしまった大学(大学統治における民主主義の否定の現状)では、こうした精神的に不安定化し追い詰められていく教員が、他の大学よりも多く出てくる可能性は高いとみなければならない。組合ニュースが指摘する問題の本質は、そこにあろう。

 下記では、「教員の個人的発言」が、「サイレント・マジョリティ」の詐称とともに、問題視されている。抽象的でつかみどころがないとも見えるが、ここでも、問題となるのは、諸個人の自由(な発言)とその民主主義的代表性・民主主義的総括性・民主主義的意思としての性格の相互関連であろう。

 諸個人の発言はその特定の個人の限定的なものとしてならば自由であろうが、それが「マジョリティ」を僭称するだけではなく、「マジョリティ」として力を持ってしまうならば(制度がそれを可能とするのならば、単なるマイノリティの発言を組織全体を代表するかのように取捨選択できる制度であれば、ある特定の数人の教員個人の発言が権威あるものとして「管理職」によって取捨選択が可能であれば)、あるいは単なる孤立的な個人の意見さえもが、公式の大学を代表する意見としてオーソライズされるシステムならば(大学や学部を代表するはずの管理職が、民主主義的正統性を持たず、「上から」、「外から」の任命であれば)、問題は深刻となる。「任期制」を強制された状況下での諸個人の発言は、それはそれでまた自由な発言ではない。

 大学における身分保障の重要性は、学問・科学の歴史が示すように、大学・学問の生命線であるが、それが、大学自治の根本を揺るがす統治システムの中で、「全員任期制」を掲げる大学においては、根底から揺るがされている。

------------横浜市立大学教員組合報--------------

組合ニュース
2009.10.08

もくじ
●退職1,休職3
●提案B0Xといえば聞こえはいいが

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●退職1,休職3

 後期開始に向けての国際総合科学部代議員会情報である。

 商学部の精神的支柱でもあった先生の、定年直前の退職の報告があった。独法化数年経ったところで体調を崩され、休職されていたわけだが、今学期の 復帰も無理ということで、最終講義もなさらないままのご退職となった模様である。多くの大人数講義を積極的に担当し、手間のかかるタイプの学生も「おう」 と引き受け、ポイントポイントでは後進にも手を貸して下さるような方だっただけに、力尽きたようで痛々しい。この教授の休職からの退職以外にも、3人の先 生方(教授1、准教授2)の休職が報告された。100人ほどの教員の国際総合科学部において、この休職の数はさすがに異常であろう。

 休職の教授は、後期、学部講義だけで3つの科目を持つ予定だったようである。やり繰りの仕切れていない処理案が報告された。これに、2年から始 まる演習3コマと大学院講義・演習が重なると、横浜市立高校、神奈川県立高校より多いコマ負担を強いられることになる。研究が当然の職務であり、指導書も なく、リピートもほぼ無い大学の講義のコマ負担として、異常である。

 休職の一方の准教授に関しては、いよいよゼミの異動および解体が計画されていることが報告された。18名の三年ゼミの学生が、まだ二年ゼミしか 持たない新任教員が新たに開講する三年ゼミへ異動し、14名の二年ゼミの学生が、2,3名ずつに解体されて様々なゼミに合流する計画のようである。担当教 員に後顧の憂い無くお休み頂くには必要な措置であろう。ただし、学生にとっての不運は気にかけてもらえるところのはずだが、忘れてはいけないのが引き受け る側の教員の負担である。このコースは、学年ごとに、教員一人あたりの学生数の切り上げ数である、14名とか、16名とかいった数をゼミの下限数としていたので、この教員のゼミの学生数は平均レベルに過ぎない。しかし、講義の準備が完全に自転車操業であるはずの新任教員に丸々一学年を渡し、もう一学年は、 既にそういった数の学生を持っている教員がさらに引き受けているのである。

 教員数の激減のため、すでに一部コースでは私学を超える大人数ゼミになってしまっているのに、国公立大学としてのプライドだけは捨てられないの か、ゼミを必修、しかも2年からのスタートとしてしまっている。残念ながら、欧米大学のHonors Course的な私立のゼミと違い、必修である以上、手間のかかる学生も紛れ込んでくる。2年以上の担任学生数だけで高校教員の担任生徒数を超える上に、 しばしば、興味の対象もまったくバラバラの30名以上の新入生がいる教養ゼミにも目配りしなければいけなかったりもする。このような中でも、全員任期制の 強要の下、大学教員としての真っ当な市場価値を維持するためには研究を捨て去ることはできない。本学の教員の状況は、もはやまともな健康を維持することも できない状況であるといってよい。

 教員組合では、任期制を強いられている事務方の固有職員にも複数の休職者が出ているとの情報をつかんでいる。任期制の頸木もない横浜市からの派遣 職員には一人の休職も出ていないようだが、やはり、二年交替で入れ替わり立ち替わり管理業務に降ってくる横浜市からの派遣職員には、この現場の異常さが届 かないのであろうか。

●提案B0Xといえば聞こえはいいが

 研究院経由で、「【次期中期計画】提案BOXの設置及び資料の公開について」なるメールが転送されてきた。いかにも一般教員の声にも耳を傾けるよ うなふりをしているが、実際のところ、布施勉学長が一般教員の意見を聞く気などさらさら無いことは、9月の意見交換会で配られた「「学長と教員の意見交換 会」における中期計画策定に関する主な意見・質疑(医系を除く)」において、7月の意見交換会で手交した教員組合からの要求(2009年7月9日総会決 定)が、無視されていたことからも明らかであろう。八景キャンパスにおいては、職員をも含めた事業所過半数代表である教員組合の、代議員会、総会を経て議 決された意見が、主な意見に登場しないことはありえない。一般教員の意見などまったく聞く気がないという布施勉氏の意思表示と理解してよい。

 しかも、この提案BOXは、Rの頃に、定年まで5年を切っていた三教授が、サイレントマジョリティーを詐称して任期制歓迎の記者会見をしたことよ りも、始末に負えない状況を生じさせる危険性がある。この三教授は、独法化直後のみに瞬間的に生じていた、公務員時代よりも多い退職金を手に安穏と退職 し、あるものは、新聞等で高額給与が問題になっている監査委員の職まで手にしたわけである。それでも我々は、本学図書館では貸し出し中であることが多い吉 岡直人先生の『さらば、公立大学法人横浜市立大学』(定価2100円)を購入し、その66ページを見ないまでも、本学図書館はもちろん、何も力を発揮する こともなく独法化とともに去った学長が館長を務める横浜市立中央図書館等で、2003年5月9日付『神奈川新聞』を見れば、この時の三人の名を知ることが できるし、サイレントマジョリティーが詐称であることも、独法化時の任期制捺印者数データが公開されないことから明らかなわけである。さらに、その中の一 人はぬけぬけとキャンパスに戻ってきているわけで、厳しく責任を問うこともできる。(現在の権威無き立場は、まともな神経を持っている人間ならばいたたまれない状況のはずで、本来ならば、十二分に責任を問うことになっているはずなのだが。)つまり、発言者が確認できる“意見交換会”方式ならば、少なくとも 恣意的な引用等を指摘することができるが、提案BOXの匿名方式だと、横浜市派遣職員や布施勉氏本人が無責任な態度で文章を紛れ込ませたところでまったく チェックができない。この制度は非常に危険な制度であり、今後出てくるかもしれない“提案BOXにあった意見”というのが公表された場合には、それは“横 浜市派遣職員による作為的な文章”、あるいは“布施勉氏による突拍子もない思い付き”であると判断することが適当であろう。

 しかし、我々組合員も、言動に注意していく必要がある。代議員会、総会などで多くの組合員の目によってチェックが済んでいる意見書は、穴が少な く、それだけに横浜市派遣職員や布施勉氏に採用されることもないようだが、危険なのは、個別教員による「○○はいいから□□を何とかして欲しい」といった 発言である。○○にこだわって、「□□はいいから○○を何とかして欲しい」と思っている教員もいるわけである。このような発言が出たとき、横浜市派遣職員 側は、○○もいいし、□□もいいわけだな。それでは、××をやってやろうという手に出てきかねないわけである。教員の個人的発言には気をつけていきたい。

 divide and ruleは、大英帝国のインド植民地支配にも採用された、ローマ以来の支配者の原則だが、教授会も解体されてしまっている今、関内よりの支配者により蹂躙 されている教員は、わがままな個人的研究環境整備などに走ることなく、一致団結していく必要があるように思われる。そして、特にほとんどの学生が学ぶ八景 キャンパスにおいては、教員組合が、職員までをも含む事業所過半数代表であることを自覚し、真の独立法人たる横浜市立大学を構築していきたい。

[復習問題]
サイレント・マジョリティー問題は,以下のサイトが詳しい。
学問の自由と大学の自治の危機問題
 ∟●小川恵一学長とサイレント・マジョリティー3教授
サイレント・マジョリティー三教授とは,「布施勤教授」,「小島謙一教授」,「馬来国弼教授」であった。

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