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2009年11月25日

新首都圏ネット、「政府・国会に対する緊急要望事項―国立大学の教育・研究・医療の維持、発展のために―」

新首都圏ネット
 ∟●政府・国会に対する緊急要望事項 ―国立大学の教育・研究・医療の維持、発展のために―

政府・国会に対する緊急要望事項
―国立大学の教育・研究・医療の維持、発展のために―

2009年11月20日  国立大学法人法反対首都圏ネットワーク事務局

2003年4月に法人化された国立大学は、来年3月で6年間の第一期中期目標期間を終え、次の中期目標期間を迎えようとしています。国立大学法人法の審議過程においては、必要な予算や人員の確保、大学運営における学長への権限集中や文部科学省からの統制などの観点から国会で激しい議論が戦わされました。残念ながら政府案通り採決されましたが、国会での審議を反映させて、衆議院で10項目、参議院で22項目もの附帯決議がなされました。しかしながら、法人化後の実態は、大学の自主性が増大するという掛け声とは裏腹に、予算や人員の削減が進み、大学の自主性に基づくべき中期計画や中期目標の計画立案にも文科省から強い介入が続けられています。さらに、国家財政の「選択と集中」によって、国立大学間に大きな格差が生じ、評価作業やプロジェクト立案など増える業務の中で、教職員の疲労感は極限まで高まっています。こうした中で、科学技術を担う若手研究者の養成にもひずみが生じています。前政権までの間続けられてきた一連の政策を転換し、日本の大学が真に発展しうる条件を整えていただきますよう、われわれは、政府・国会に対して以下の要望をします。

1.中期目標の原案策定プロセスにおける文部科学省の介入をただちにやめさせること

国立大学法人の中期目標は大学の研究・教育等の自律的発展と、社会的要請に対する主体的な応答をベースにしたものでなければなりません。しかしながら、第二期中期目標期間を目前にして、文部科学省は、評価委員会の評価結果とは無関係に組織・業務の全般的な改廃方針を立て、各国立大学法人の中期目標がこれに従ったものとなるよう、統制を強めています。法人となった国立大学に対して文部科学省が全体的な方針を指示し、各法人の中期目標の原案策定権を奪うことは、明確な違法行為です。文部科学省が現在すすめている中期目標の原案策定作業をただちに停止し、組織・業務の全般的な改廃方針を破棄するよう命じていただきたく存じます。

2.来年度予算において、運営費交付金を法人化当初の水準に戻すこと

衆議院附帯決議6項は「運営費交付金等の算定に当たっては、公正かつ透明性のある基準に従って行うとともに、法人化前の公費投入額を十分に確保し、必要な運営費交付金等を措置するよう努めること」とし、参議院附帯決議12項も「運営費交付金等の算定に当たっては、… 中略 … 法人化前の公費投入額を踏まえ、従来以上に各国立大学における教育研究が確実に実施されるに必要な所要額を確保するよう努めること」と明記しています。しかるに、運営費交付金は毎年1%の削減がなされ、国立大学全体おいても法人化された2004年度から2009年度までに年予算で720億円減額されているのです。この減額分の多くが研究室に配分される経費に転嫁され、基礎的基盤的な教育研究の推進が極めて困難となっています。従いまして、2010年度の運営費交付金においては運営費交付金の削減政策をやめ、速やかに法人化当初の水準を回復することを求めます。当然のことながら国立大学病院への運営費交付金も同様です。併せて財政投融資によって行われた国立大学病院の施設整備費の返済も免除することを求めます。

3.国立大学を総人件費削減の対象からただちに除外すること

衆議院附帯決議8項ならびに参議院附帯決議19項は、「国は、高等教育の果たす役割の重要性に鑑み、国公私立全体を通じた高等教育に対する財政支出の充実に努めること」と明確に述べています。しかるに、2005年成立の行政改革推進法は国立大学法人に対しても人件費を5年間に5%削減することを命じており、各国立大学はやむを得ず削減をつづけてきました。もはや人件費の削減は限界に到達しており、これ以上進めれば大学の機能が維持できなくなる恐れがあります。民主党が2007年に提出した行政改革推進法改正案でも述べられていますが、国立大学法人を総人件費削減の適用対象からただちに除外することを求めます。

4.学生、大学院生に対する支援を拡大すること

衆議院附帯決議第6項は、「学生納付金については、経済状況によって学生の進学機会を奪うこととならないよう、適正な金額とするよう努めること。」と述べ、参議院附帯決議第13項はそれに加えて、「授業料等減免制度の充実、独自の奨学金の創設等、法人による学生支援の取組についても積極的に推奨、支援すること。」と述べています。しかしながら、経済不況の波は若者の勉学の機会を奪い、将来の研究開発を担う若手研究者の育成にも深刻な影響を落としています。授業料の値下げと免除枠の拡大、給付型奨学金の充実を求めます。

以上


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