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2009年12月01日

「大学・学術は、一日にしてならず-国公私立大学に係る平成22年度予算に関する要望-」

国大協
 ∟●大学・学術は、一日にしてならず-国公私立大学に係る平成22年度予算に関する要望-

平成21年11月27日

文部科学大臣 川 端 達 夫 殿

社団法人国立大学協会
公立大学協会
日本私立大学団体連合会

大学・学術は、一日にしてならず

-国公私立大学に係る平成22年度予算に関する要望-

 平成22年度予算の編成に向けては、厳しい財政事情のもと、前例のない様々な試みがなされ、各分野にわたって削減が求められております。折しも、行政刷新会議では、大学関係の基盤的経費、国公私立大学を通じた競争的経費及び大学等奨学金等の根幹の予算について事業仕分けの対象に取り上げ、その削減や見直し等を提案しております。こうした提案によって、どのような政策が作られ、予算編成に反映されるのか、私たちは深刻な危機感を覚えつつ、状況の推移を注視しております。大学・学術の営々とした積み重ねの上に、今日の社会の豊かさがあるのであり、それらは決して一日にしてなるものではありません。拙速に大学政策・学術政策の方針を決するならば、大学の興廃を左右するのみならず、国力基盤の劣化、国家の危機を招来すると申しても過言ではありません。

 大学をめぐっては、日本の高等教育に対する公財政支出の少なさ、その半面の家計負担の重さなどがつとに指摘されてきました。一方で、日本の将来に向けて、多種多様な社会的要請が、怒涛のように大学に寄せられてきています。真の知識基盤社会・生涯学習社会づくり、少子高齢化が進む中での活力の維持、グローバル化への対応、基礎科学力の向上やイノベーションの促進など、それらいずれも緊要な国家的課題です。

 このように、日本の大学をめぐる投資の貧困と、国民の期待の大きさとの「懸隔」は、益々広がってきております。私たちは、日本の財政事情の厳しさを理解しており、大学への期待に応える成果の達成、投資の効率性の向上のため、一層の努力を払う覚悟です。しかし、広がりいく「懸隔」に対し、大きな限界があることを痛切に感じております。

 私たちは、政府の「コンクリートから人へ」という大胆な投資シフトの理念に共鳴します。OECD諸国に遜色ない投資水準の達成に向け、政治的な決断を強く期待しています。そして、大学への投資をいかに効果的に行うかは、改革の実際の担い手であり、また、自律性を備えた機関である大学との「対話」が不可欠です。私たちは、安定性の確保と先駆的挑戦の促進、その両者を追求する賢明な投資ポートフォリオ(いわゆる「デュアル・サポート」)の構築が必要であると考えています。就中、ここ最近の反省に立つならば、基盤写的経費の確保・充実に向け、旧来の政府方針の見直しを明確に打ち出されることを切に望みます。

 ついては、以下の要望について、「大学・学術は一日にしてならず」との基本認識に立って、国家百年を見据えた長久の策を講じられますよう、お願い申し上げます。

○ 高等教育に対する公財政支出の国際水準への拡充
・ 高等教育機関の教育研究活動を充実するため、高等教育への公財政支出の対GDP比のOECD平均(約1%)を投資水準の将来目標として、高等教育への公財政支出を拡充すること。当面、目標経済成長率と同等以上の投資の伸びを確保すること。

○ 大学の健全な発展と経営基盤強化のための基盤的経費の拡充
・ 大学の教育研究活動の基盤を強化し経営基盤を支えるための国立大学法人運営費交付金及び私学助成等の基盤的経費を拡充すること。また、公立大学に係る地方交付税措置の充実を図ること、とくに自治体財政が脆弱な中、公立大学の附属病院改築等大規模な設備投資を要する費用については政府として特段の配慮をすること。

○ 大学の教育研究活動の質の向上及び多様な発展のための国公私立大学を通じた補助金の拡充
・ 大学の教育研究活動の質の向上、国際競争力の強化及び国際学術交流のための学部・大学院の機能の充実等に資するような国公私立大学を通じた補助金を拡充すること。

○ 大学の基礎研究を充実するための科学研究費補助金等の拡充
・ 大学の教育力・研究力を強化し、科学技術の力で世界をリードするため、大学で行われる学術研究を支える、科学研究費補助金をはじめとした基礎研究充実のための予算を拡充すること。


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