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2010年02月02日

全大教、2010 年度政府高等教育予算案に関する見解

全大教
 ∟●2010 年度政府高等教育予算案に関する見解

2010 年度政府高等教育予算案に関する見解

2010 年1 月21 日
全国大学高専教職員組合
中央執行委員会

 民主党を中心とする連立政権は、昨年12月25日、政権初の政府予算案を閣議決定した。税収の極端な落ち込みという逆風の中にありながら、国民の変革への期待と大学・高等教育関係者の取り組みを反映して、同予算案には国民生活の改善と大学・高等教育の充実への可能性を感じさせる点が少なくない。
 しかし、以下に指摘する政府予算案自体の問題点に加え、第二期中期目標期間における運営費交付金の算定ルールも未だ定まっておらず、今後なお一層の積極的取組みが必要である。
 私たちは高等教育分野を中心とした政府予算案について次のように評価するものである。

 第一に、政府予算案は前政権時代の抑制策から一転、子ども手当の新設などにより社会保障費は9.8%増の27兆3千億円となり、文部科学省予算も公立高校授業料の実質無償化等により5.2%増の5兆6千億円に増額された。今後、さらにこの拡充を求めていきたい。ただ、公立高校授業料の実質無償化に要する予算の増額分の一部は、他の文部科学省予算の削減によってまかなわれており、高等教育関係予算も239億円が削減された点は遺憾である。

 第二に、国立大学等の運営費交付金は110億円(0.9%)削減された。ただ、当初は2010年度に措置される予定だった大学病院診療設備費81.5億円が2009年度第二次補正予算として前倒しで措置されているため、それを加えれば削減額は28.5億円(0.2%)となる。法人化以降6ヶ年連続の減額となったことはきわめて遺憾である。
 また、運営費交付金の一部である「一般管理費」の1%(約16億円)を原資に第一期中期目標期間の評価に基づき運営費交付金に反映させる方式が具体化されたことも評価が未成熟な下での拙速な措置として批判されなければならないだろう。
 ただ、「骨太方針2006」に基づく運営費交付金前年度比マイナス1%枠の撤廃や、大学病院に対する経営改善係数2%の撤廃は、前政権の政策を転換させたものとして重要である。

 第三に、国立高専の運営交付金は総額663億円であり、前年度より7億円の削減とされ、前年比1%を越える削減が続いている。これは国立高専が独立行政法人として設置されていることに由来するものと考えられ、設置形態の抜本的改善が必要である。他方、公立高校授業料無償化の考え方に沿って、国立高専 1~3年次生について授業料が減額されたことや、授業料減免枠が拡大されたことは積極的に評価できる。

 第四に、競争的研究経費への過度な傾斜は依然として改善されていないことはきわめて遺憾である。広い裾野に支えられた学術・研究基盤を形成するためには、競争的研究経費を過度に重視する政策を改め、基盤的研究経費の充実を図る政策を推進する必要がある。

 第五に、奨学金の充実や就職支援体制の整備に関して一定の前進があったことは積極的に評価できる。しかし、財源等の制約があるとはいえ、大学・高等教育機関の高学費の改善や給付制奨学金の導入も今後の課題となっている。

 わが国における高等教育への公財政支出は、対GDP比0.5%に留まり、OECD加盟国の最下位である。また、公財政支出の少なさは、高等教育費の家計依存という構造を産み出し、若者の学ぶ機会の不平等を生み出している。
 さらに、歪みが目立つ国立大学法人等の制度設計の法人化時の国会付帯決議に沿った見直しも必要である。
 知的活動・想像力が最大の資源である我が国にとって、高等教育の危機は社会の危機でもある。

 私たちは、国・公・私立の枠を超えた大学・高等教育関係者をはじめとした共同と世論形成に努め、新政権に対して、公約に沿って高等教育が充実していく方向に一層明確に舵をきることを求めるものである。


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