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2010年02月02日

山形大学職員組合、学長選考制度の改善を求める声明

山形大学職員組合
 ∟●学長選考制度の改善を求める声明

学長選考制度の改善を求める声明

◆◆◆ 学長選考制度の改善を求める声明 ◆◆◆

2010年1月25日    
山形大学職員組合執行委員会 

 山形大学学長選考会議は、2008年3月より今後にかけて一連の会合をもち、「国立大学法人山形大学学長選考等規程」(以下「規程」)の見直しの作業を進めつつある。見直しは、学長選考における委員構成・議決要件、候補の推薦方法・学内意向聴取、さらには学長の任期や解任についても対象とするとされ、本学の学長選考制度の全般に及ぶといえる。

 周知のように2007年の学長選考においては、学内意向聴取の得票数で2位の候補者が学長選考会議で「逆転選出」される事態となった。国立大学法人法及び「規程」によれば、学長の選考権は同会議に与えられており「逆転選出」は「違法」ではないとする見解がある。しかし、最多得票の候補者が学長に選出されなかったことはいわゆる代表民主制の原理に反するものであったため、当該候補者らは直ちに抗議声明を出し、多くの教職員も批判の声をあげた。全国紙をはじめ多数のマスコミも文科事務次官出身候補を「逆転選出」したことについて批判的に論説し、法人制度の矛盾を指摘する報道をおこない社会問題となったことは記憶に新しい。

 こうした経緯で「選出」された現学長は、法人制度上はともかく社会通念上は多数支持を得ていない者としてその組織代表としての正統性に欠け、その地位に疑念をもたざるをえない状態が続いている。そのため、現学長の本学における基盤は弱く、さらにそのトップダウンの官僚的な運営手法もあり、学内に様々な軋轢が生じている。例えば、現学長は、本学の将来構想との関係を明示しないままに、前学長時代に構築した全学機能の強化の方向を転換し4キャンパス(学部)にその機能を分割する方針を打ち出したが、附属図書館の4分割をはじめ「全学センター」の解体・統合は必要な全学機能の衰退を招いている。解体・統合に反対する「全学センター」に関して、その設置根拠たる学則関係条項の「効力の停止」を各館長・センター長に事前に協議せずに一方的に決定し解体・統合を強行していったことは、本学執行部のトップダウンの手法を象徴する事件となった。現学長が打ち出した基盤教育も本学においてこれまで培ってきた教養教育の総括の上に提案されたものではないため教職員より多数の疑問が出された。基盤教育院の設置とその専任スタッフの確保は、教養教育とはあまり関係がなかった者を含む「全学センター」所属教員の配置換えによるものであり、その設置のあり方や今後の有効性についても多数の教職員は納得していない。また、新聞報道によれば、前県知事に関わるとされた大学連携推進室教員人事問題においては、部局長も知らされないうちに、学長?理事で専決するいわば「密室」人事を強行しようとしたために、大学と政治の関係について憂慮した6学部長及び附属病院長は連名で反対意見書を提出し、その結果役員会は当該人事を撤回せざるを得なかったとされる。さらに、現学長のイニシァチブにより全学の諸委員会などの規則改定が進められ、大学運営における一般の教職員の提案権や審議権、決定権は否定ないし縮小され、学長?理事に強大な権限が集中する体制がつくられた。規則上の権限のみならず実際の運用においてもボトムアップよりもトップダウン方式が強化されたため、多くの教職員は大学運営の意思決定過程から排除される結果となり、教育研究の現場が切実に求める施策を実現できなくなっている。そのため現学長の就任後、研究費の傾斜配分を受けた僅少の教員はともかく、大多数の教職員の間には無力感が広まったのが現状である。多数の教職員の主体性や創造的な力量を引き出せないままに、トップダウンを強める現学長の運営手法は、かりに短期的には「目玉」として選定した研究を推進することができたとしても、長期的にみれば地道な基礎研究に裏打ちされた、総合大学としての本学の多面的な発展を阻害する要因となることは確実である。

 本組合は、2007年学長選において学内意向聴取の結果を覆した学長選考会議の決定に対して抗議声明を出し、同会議に対して「逆転選出」に至った経緯と理由について具体的な説明を求めたが未だに回答がない。同会議の一連の議事録も本学構成員に公開されていない。上に述べたように官僚体質が抜けず大学の特性をよく知らない現学長は、本学の全学機能を衰退させ教育研究の現場に混乱をもたらしており、前回選考における同会議の決定は経緯においても結果においても誤っていたと本組合は判断している。学長選考権という法人制度上の重大な権限を行使したことに伴う説明責任をきちんと果たさない同会議のあり方も問われ続けている。

 さらに、前回選考における第1回学長選考会議は、「山形大学学長選考等規則」(当時)を改訂し、学内意向聴取の得票数を非公開(同会議委員にも各候補の票数を知らせない)とし、上位3名の名前を抽選順で学内外に知らせるのみとした。有力候補は大抵3名以内には入るため、この措置は事実上、学内意向聴取の意義をほとんど喪失させる内容といえる。そのため、医学部を除く5学部教授会は得票数の公開を求める意見書などを2度にわたりそれぞれ採択し学長選考会議に提出した(工学部は日程の関係で1度)。この一連の経緯は、本学の多数の教職員が得票数の公開による学内意向聴取結果の尊重を求めたことを示している。本組合も、本学の多数意思をふまえて、得票数の公開を求めた。これらの結果、同会議は得票数の公開を認め前回選考は実施された。ただし、この時の同会議の措置は、得票数公開を明記する形での規則の再改訂はせず「経過措置」(特例)によるとしたため、現行「規程」でもなお得票数の非公開・上位3名の抽選順による氏名のみ公表という条項のままとなっている問題がある。

 全国の国立大学法人における学長選考制度は様々であるが、学内意向聴取の実施とその結果の尊重を制度設計の基本としている大学は多い。例えば、東京大学では「東京大学総長選考会議内規」第15条において「選考会議は、前条の当選者を総長予定者として決定する。」としている。また、京都大学では「国立大学法人京都大学総長選考規程」第12条において「総長選考会議は、学内意向投票の投票結果を基礎に、総長候補者を選考する。」と明記している。本組合は、日本国憲法に定められた「学問の自由」と「大学の自治」が大学における教育研究の創造的な発展にとって不可欠であるという大学の特性に照らして、法人制度下という現実においても、最大限に学長選考においてその大学の構成員の意向を尊重する立場を支持する。

 本組合は、以上述べた前回学長選考の経緯と本学の現状及び学長選考に関する考え方から、現在学長選考会議により進められている学長選考制度の見直しに対して、以下の諸点を求める。

1.「規程」第9条に定められた学内意向聴取の投票は維持すること。
2.「規程」第12条2項を削除し、学内意向聴取の得票結果を学長選考会議委員にはもちろん学内外に公表することを定める条項を設けること。
3.「規程」に、学内意向聴取の得票結果による当選者(最多得票者)を学長候補として決定する旨の条項をあらたに設けること。
4.「規程」第18条に定められた経営協議会・教育研究評議会及び構成員の学長解任に関する審査請求権は維持すること。
5.学長選考会議の議事録を本学構成員に公開すること。

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