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2010年03月01日

日韓(韓日)高等教育シンポジウムについて

大学評価学会
 ∟●「大学評価学会通信」第23号(2010年2月3日) 

日韓(韓日)高等教育シンポジウムについて

細川孝(龍谷大学)

 「学会通信」第22号でご案内させていただきました通り、2009年8月27日に「日韓(韓日)高等教育シンポジウム」(龍谷大学国際社会文化研究所・細川グループ主催)が開催されました。以下、報告します。
 このシンポジウムは、わたしたちの共同研究会(龍谷大学国際社会文化研究所指定研究「世界の中の日本、日本の中の世界-大学評価システムの国際比較と「評価文化」に関する総合研究―」(研究代表者:細川孝))が企画し、高等教育研究会(京都)、大阪地区私立大学教職員組合連合、京滋地区私立大学教職員組合連合、龍谷大学教職員組合の協力を得て、開催されたものです。テーマは「李明博政権下での大学改革・大学評価の動向を探る-日韓における市民社会のための大学創造のために-」であり、韓国から2人の大学関係者をお招きしました。
 今回、韓国から参加されたのは、キム・サンボン氏(全南大学校教授)とイ・スヨン氏(職員の労働組合である全国大学労働組合の教育宣伝部長)です。キム氏は、「国家と市場の間で漂流する大学」というテーマで、近年の韓国の大学事情について話されました。1987年の民主化以降に実現した総長直接選挙制が、見直される動きが広がっていることや、国立大学の法人化をめぐって大学人がねばり強く反対し、これを阻止していることなどが紹介されました。
 イ氏は、「変化する大学と職員、そして変化のための職員の役割」のテーマで、韓国における大学事務職員の状況について話されました。韓国においても1990年代以降、大学をめぐる状況は大きく様変わりし、「競争」や「効率」などといった言葉が強調されるようになってきているとのことです。大学の「構造調整」ということが言われ、企業経営の手法が導入されてきていることも紹介されました。そのようなもとで、事務職員には「行政専門家」としての役割が期待されるようになっているとのことです。
 二人の報告で共通して紹介いただいたのが、韓国の高学費です。韓国では進学率がすでに80%以上に達していますが、大学で学ぶには高い学費を負担しなければなりません。この点をめぐっては、日本以上に深刻な現状が窺えました。また、韓国では、大学教員が社会から大きな信頼を寄せられている一方で、大学内では教員と事務職員の間に大きな垣根と言えるようなものがあることも知ることが出来ました。
 日本側からは、望月太郎氏(大阪大学)と中道眞氏(別府大学)が討論者として発言するとともに、フロアーからも質問が出されました。今回が初めての開催であると同時に、時間が限られていたことから、正直なところ消化不良の感も否めませんでしたが、日韓の両国で似たような状況があることと、両国の大学人が連帯して取り組みを進めていくことが必要であることの認識は、参加者の間で共有出来たように思います。
 翌日(28日)には、科学研究費・重本グループ(「ステークホルダー間調整視点からの評価-機能モデルの研究」基盤研究(C) 19601011)の公開研究会が開催され、27日のシンポジウムを踏まえて、引き続き議論が深められました。(* 本稿は、拙稿「日韓(韓日)高等教育シンポジウム―日韓における市民社会のための大学創造のために―」『京滋私大教連』第147号、2009年9月に若干加筆したものです)


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