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2010年03月08日

日弁連、労働者派遣法の今国会での抜本改正を求める意見書

日弁連
 ∟●労働者派遣法の今国会での抜本改正を求める意見書

労働者派遣法の今国会での抜本改正を求める意見書

2010年(平成22年)2月19日
日本弁護士連合会

はじめに
 一昨年秋から始まった経済不況に端を発した派遣切り・雇止めによる労働者の失業と困窮は社会問題となり,派遣労働者の保護が喫緊の政治課題となっている。年末年始に東京都等の自治体が実施した「公設派遣村」にも,派遣切りにあって職と住居を喪失した多くの派遣労働者が身を寄せた。
 派遣労働者は,使用者が派遣先と派遣元に分化している間接雇用の構造のもとで,他の労働者と分断され,労働条件,雇用の安定の交渉,労働組合加入等が著しく困難な状況に置かれている。
 労働者派遣法改正については,昨年の通常国会において与野党から改正法案が提出されたが,衆議院の解散に伴いいずれも廃案となった。厚生労働大臣は,昨年10月7日,労働政策審議会に「今後の労働者派遣制度の在り方について」の諮問をし,同審議会は同年12月28日に「答申」を出し,厚生労働省は2010年2月17日,「答申」に沿った法案要綱を策定した。今後,法案策定,国会への上程,審議と手続が進められる。
 答申・法案要綱の内容は,法律の名称・目的に労働者保護を明記すること,登録型派遣や製造業派遣の原則禁止,違法な派遣についての直接雇用申込みのみなし規定を創設することなど,労働者保護の観点から規制強化に踏み込む内容となっている。しかしながら,答申・法案要綱は,派遣労働者の低賃金・不安定雇用を解消するにはなお不十分であるうえ,2008年の法案に盛り込まれていた事前面接の解禁等がそのまま持ち越されており,問題が大きい。
 連合会は「労働者派遣法の抜本改正を求める意見書」(2008年12月19日。以下「2008年意見書」という。)を発表し,労働者派遣法の抜本改正に必要な8項目(派遣対象業務の限定,登録型派遣の禁止,日雇い派遣の全面禁止,直接雇用のみなし規定の創設,均等待遇義務付け,マージン率上限規制,グループ内派遣原則禁止,派遣先特定行為の禁止)を示し,この間,政府や国会に対して,2008年意見書の趣旨に沿った早期抜本改正を強く求めてきたところである。
 当連合会は,改正法案作成と国会での審議に先立ち,2008年意見書の内容を前提に,答申・法案要綱の問題点を指摘したうえ,あるべき改正の方向性について意見を述べる。

意見の趣旨
1 派遣対象業務は専門的なものに限定すべきであり,「現行専門26業務」については厳格な見直しをすべきである。
2 登録型派遣の原則禁止にあたって,答申・法案要綱において例外とされている「専門26業務」については,その範囲を厳格に見直すべきである。また,常用雇用についての労働者派遣を当面認めるにしても,その定義規定を置き,期間の定めのない雇用契約に限定すべきである。
3 製造業務派遣については,本来,全面禁止されるべきである。常用雇用に限定して認める場合であっても,その定義規定を置き,期間の定めのない雇用契約に限定すべきである。
4 日雇い派遣について例外を許容することは適当ではなく,全面禁止とすべきである。
5 均等待遇にあたっては,単に均衡を考慮する旨の配慮規定を置くだけでは不十分であり,均等待遇を義務付ける具体的な立法をすべきである。
6 マージン率については,上限を規制すべきであり,情報公開及び労働者への明示を義務付けるだけでは不十分である。
7 違法派遣の場合における直接雇用のみなし規定について
(1) みなし規定適用に当たって,違法であることについての派遣先の認識を要件とすべきではない。
(2) みなし規定の対象となる違法派遣は,答申・法案要綱が列挙しているものに限定せず,多重派遣等の重大な違法派遣の場合すべてに適用すべきである。
(3) 期間制限に違反した場合の派遣先による直接雇用後の雇用契約の期間は,期間の定めのないものとすべきである。
(4) 直接雇用後の労働条件の均等確保の規定を入れるべきである。
8 グループ内派遣は原則として禁止すべきである。
9 派遣先の特定行為は禁止すべきである。
10 派遣先の団体交渉応諾義務について規定すべきである。
11 施行期日については,長期間にわたる施行期日の設定,暫定措置を設けるべきではなく,できるだけ速やかに,改正法公布の日から6か月以内の政令で定める日とすべきである。

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