研究者の地位と権利を守るための全国的ネットワークをつくろう!

2010年03月10日

北陸大学不当解雇事件、法人が控訴 給与支払い停止

北陸大学教職員組合
 ∟●組合ニュース、第293号

法人が控訴 → 給与支払い停止
 報道等で既にご存じのとおり、田村教授、および、ライヒェルト教授の「雇用契約上の地位の確認」を求めた裁判の判決が2月23日、中山誠一裁判長から言い渡され、原告両氏は全面的に勝利しました。しかし、大学法人は控訴し、新たな闘いが始まることになりました。そのため、支払われる筈だった賃金未払い分の強制執行が停止されたばかりでなく、判決が出たことによって仮処分も失効し、両氏の給与は2月分から支払われなくなりました。高裁で改めて地位保全仮処分の請求から始めることになります。

判決の内容
この裁判は、2007年8月の地位保全仮処分の勝訴に引き続いて,同年10月に金沢地裁へ、解雇無効の確認を求めて提訴したものです。判決文によりますと、2人が「雇用契約上の権利を有することを確認する」と判断しています。同時に解雇中の未払い賃金についても、被告大学法人に対し、本俸と賞与、および、それぞれの不払い期間に応じ、年5分の金利分を乗せて、解雇時に遡って支払うように命じています。この部分に関しては完全な勝訴で、当人達だけでなく、社会的観点からも有意義な判決であったと思われます。危惧される将来の解雇の抑止力にもなります。この判決を予想してか、被告大学法人は法廷を欠席。傍聴席に1理事、2事務局員の姿が確認できるだけでした。
 判決は、解雇事件の概要を事実認定した後に、争点として次の3点を定めました。
(1) 本件解雇の有効性
ア 本件解雇の解雇事由の有無及び解雇権濫用に当たるか否か(争点1)
イ 本件解雇が不当労働行為に当たるか否か(争点2)
(2) 本件解雇について不法行為の成否及び損害額(争点3)
 争点1のうち解雇事由について判決は、被告の、学部再編によるドイツ語廃止に伴い、雇用の目的が終了した、という主張に対し、採用時にドイツ語担当に限定する「職務限定合意」はなかったと認定し、従って、解雇事由に疑義がある、と判断しています。また、カリキュラムの編成により職務がなくなり、雇用契約の目的が終了した、という主張に対し、被告の一定のカリキュラム編成権を認めつつも、解雇を正当化できるかどうかは解雇権濫用法理の下で判断するのが相当とし、これについての結論は、「客観的合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないから、権利の濫用にあたり、無効である」と判断しました。理由としては、いわゆる整理解雇4要件に関わる諸事情を総合的に勘案して判断するのが相当とし、①人員削減の必要性ないし合理性はない、②ドイツ語科目廃止の必然性はなく、また、原告2人は他科目の担当実績及び能力を有するので、解雇を回避するための措置を尽くしたとは言えない、③被解雇者選定につながる新学部への配置基準はあいまいであり(「理事会および学長に対する信頼などを掲げている点」と指摘されています)、解雇決定基準として合理性を有するものとは言えない、④期間の定めなく採用された原告に対する解雇手続きは、説明、協議ともに不足であり、相当とは言えない、と認定しました。
 争点2については、「本件解雇が不当労働行為に当たるか否かを判断するまでもなく、本件解雇は無効である」とされました。これは先の仮処分決定理由とほぼ同じ文言の認定です。
 争点3については、原告は雇用契約上の地位が確認され、解雇期間中の賃金が支払われることでもって十分「慰謝」されるから、不法行為の成否を判断し、損害額を云々する理由がないとされました。……


|