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2010年04月23日

日弁連、人権救済申立事件につき政府宛「勧告書」

日弁連

日弁連総第125号
2010年(平成22年)4月7日

厚生労働大臣長妻昭殿
内閣総理大臣鳩山由紀夫殿
衆議院議長横路孝弘殿
参議院議長江田五月殿

日本弁護士連合会
会長宇都宮健児

勧告書

 当連合会は,A外22名申立てに係る人権救済申立事件(2008年度第10号人権救済申立事件)につき,貴省(貴院)に対し,下記のとおり勧告する。

第1 勧告の趣旨
 当連合会は,1996年2月27日に,内閣総理大臣及び厚生労働大臣に対し,次の趣旨の要望を行った。すなわち,1986年4月1日の時点で60歳を超えていた在日朝鮮人高齢者を老齢福祉年金の支給対象とせず,また,1982年1月1日の時点で20歳を超えていた在日朝鮮人障がい者を障害基礎年金の支給対象としていない国民年金法の関連規定は,これらの者を日本国民と合理的な理由なく差別して扱うものであり,憲法14条1項,国際人権(自由権)規約26条,国際人権(社会権)規約2条2項等に違反するおそれがある,というものである。
 しかし,それ以後も,中国残留邦人における無年金問題において救済措置が実施され,また,学生無年金障がい者問題において救済措置が実施される一方,在日外国人無年金障がい者・高齢者に対しては,何らの救済措置も講じられていない状態にある。さらに,特定障害者に対する特別障害給付金の支給に関する法律の附則及びその審議過程における附帯決議においては,今後この問題に検討を加えることとされながらも,現在に至るまで,具体的な検討が開始されていることはうかがえない。
 このような状況に加えて,在日外国人無年金障がい者・高齢者の高齢化や,長引く不況などによる社会経済環境の悪化を受け,これらの者の多くが困窮した生活を行うことを余儀なくされている状況に鑑みれば,憲法14条1項違反並びに国際人権(自由権)規約26条及び国際人権(社会権)規約2条2項違反の状態は,現時点においてさらに著しくなっているものといわざるを得ない。近時の国際人権(自由権)規約委員会の総括所見においても,この問題に対する懸念が示されるとともに,国に対し,救済措置を取るよう勧告がされているところである。
 そこで,当連合会は,国において,在日外国人無年金障がい者・高齢者が差別なく年金の支給を受けられるようにするため,難民の地位に関する条約等への加入に伴う出入国管理令その他関係法律の整備に関する法律(昭和56年法律第86号)附則5項,国民年金法等の一部を改正する法律(昭和60年法律第34号)附則31条,32条1項等を改正するなどの救済措置を速やかに講じるよう勧告するものである。……


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