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2013年04月10日

常葉大学短期大学部、補助金不正受給か 「身代わり授業」の波紋

AERA(2013年4月15日号)57頁
 ∟●常葉学園で補助金不正受給か、「身代わり授業」の波紋(PDF)

常葉学園で補助金不正受給か

「身代わり授業」の波紋

系列に甲子園常連校もある静岡県の短大で、補助金の不正疑惑が浮上した。
卒業生にも影響が出かねないという、その中身とは……。

 地元では、「常短」の愛称で知られる「常葉大学短期大学部」(旧常葉学園短期大学、静岡市)で、補助金(私立大学等経常費補助金)を不正に受け取っていた疑いが出てきた。
 関係者の話を総合すると、不正受給があったのは少なくとも2002~04年度の3年間。当時50代半ばのA教授(昨年3月に定年退職)が、本来、B助手(当時)と一緒に行わなければいけない授業をB助手一人に担当させていた。学校教育法では、助手は教授や准教授(助教授)の補助者の位置づけにとどまり、単独で授業は担当できないと定められている。

調査委員会が学内に

補助金は、国から「日本私立学校振興・共済事業団」(通称「私学事業団」)を通じ、教職員数や学生数に応じて私立の大学や短大などに交付される。教授は大学内の立場などに応じ、一定時間以上の授業を担当しなければならない。A教授が授業を実質的にしていなかったにもかかわらず、学園は3年間で約360万円の補助金を受け取っていた可能性があるのだ。
 短大の母体となる常葉学園は1946年に創立。同族経営で知られ、学園長以下、理事長や常務理事といった要職の大半を親族が占める。学園長は参院議員を2期務めた木宮和彦氏で、A教授も和彦氏の甥に当たる。
 内部告発をきっかけに今年2月、「公益通報調査委員会」が学内に立ち上がり、これまでに2回委員会が開かれた。本誌の取材に対してA教授の答えは、「授業の管理・監督をしていた。(授業を)やっていると考えるか、やっていないと考えるか難しい。補助金の申請は私学事業団と相談して決めていたから問題ない」
 とあいまい。またB助手は、「単独で授業してはいけないことは知っていたが、当時は、どれくらいの範囲まで担当してはいけないか、わかりかねていた」と話した。学園の内部事情に詳しい関係者は言う。
「本人は授業の最初に若干顔を出したので問題ないなどと言っているようだが、当時のシラバスにはB助手を『講師』」以上の扱いにしていたりするなど、A教授が授業をやっていたとは思えない様々な証拠が出ている。現時点では不正に補助金を得ていたと推測せざるを得ない」

学び直す可能性が?

 今回の件を、文部科学省も注視している。
 「補助金の不正が明らかになった場合は、個別の事案に応じて判断することになる。今後は補助金全体の2割か5割、あるいは全額がストップになる可能性もある」(私学助成課)
 さらに「身代わり授業」は今後、卒業生の教員免許に影響を及ぼす可能性もある。同短大では例年、約200人が幼稚園や中学校などの教員免許を取得し卒業するが、B助手が担当していた「情報とコンピュータ」は免許を取るには必修科目。無資格者が担当していたとすれば、3年間で600人近い卒業生の免許の正当性が問われかねない。「場合によっては、卒業生はもう一回、学び直す可能性が出てきます」(文科省大学振興課)
 本誌の取材に学園本部は、「公益通報調査委員会が調査中であるため、現時点では回答できません」
 としながらも、卒業生の免許問題については、
「委員会の報告を受けて対応が必要であれば検討することになります」
 と回答した。
 大学の不止行為の調査・改善勧告などをする「大学オンブズマン」の理事で、龍谷大学教員の細川孝さんが言う。
 「1人の元教授の問題なので不正額こそ少ないが、公金の不正受給を生む土壌が問題です。今回の件は、常葉学園だけの問題でないように思う。解決のためには大学全体の改革が急務だ」
 真相の解明が待たれる。

編集部野村昌二


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