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2013年05月06日

解雇訴訟 北海道内で増加、立場弱まる大学教職員

■北海道新聞(2013年5月6日)

立場弱まる大学教職員
解雇訴訟 道内で増加

 道内で、解雇処分などをめぐり大学と元教職員が対立し、訴訟に発展するケースが急増している。道私立大教職員組合連合(札幌市)によると、解雇無効を求め係争中の訴訟は現在、少なくとも5件。一方的な給与削減が不当労働行為に当たるとして道労働委員会に救済を申し立てた事例もある。背景には、学生減に伴う経営合理化や、大学の理事会の権限が法的に強化され教職員の立場が相対的に弱くなったことがある、との見方もある。(水野富仁)

理事会の権限強化 背景

 道私立大教職員組合連合によると、解雇処分をめぐる訴訟のうち、支援などを通じ把握できているのは、1996年を最後にしばらくなかったが、ここ1~2年で一気に増加し、現在5件ある。ただ、実際にはもっと多い可能性もあるという。
 千歳科学技術大の元准教授は、経営問題についてメールで学長を批判した後に解雇されたとして、解雇無効などを求めて4月上旬、同大を提訴した。

 訴状などによると、元准教授は学長の求めに応じ、退学者減のための提案をしたが、学長が消極的だったため「もっと責任感を持ってください」などと批判的なメールを送信。大学は「教育者・組織人として適格性に欠ける」として解雇した。

 元准教授側は「大学は自由な議論が保障されている場。理事会の権限強化以前には考えられない乱暴な解雇で、無効だ」と主張。大学側は「就業規則にのっとった、正当な解雇だ」と反論している。

 北大に通算8年半非正規雇用された後、雇い止めされた元契約職員は「機械的に人材を切り捨てる雇い止めは無効だ」として2011年6月、大学を相手取り、解雇無効などを求めて提訴した。北大は「係争中につき、コメントしかねる」としている。

 このほか、専修大学北海道短期大学(美唄市)など3私立大の元教職員が解雇無効などを求め提訴している。
 一方、札幌の私大の教職員組合は、大学側か十分な労使交渉を行わないまま、期末手当の削減や定期昇給の制限を行ったのは不当労働行為にあたるとして、道労働委員会に救済の申し立てを行った。

 別の札幌の教職員組合も団交拒否などがあったとして同委員会に救済を申し立てている。
 札幌学院大経済学部の片山一義教授は「不当に解雇されても泣き寝入りしている人も多い。大学側と対立した教職員を孤立させない組織や制度の整備が急務」と説明。その上で、安易な人員整理を防ぐため大学評価制度を抜本的に見直し、第三者機関が大学運営を十分に点検できるようにすべきだと強調する。

学生減で合理化優先も

 国は2004年、民間的な発想の経営手法を活用するため、国立大を独立行政法人に移行した。05年、改正私立学校法が施行され、私大などの業務決定機関は理事会であることを明文化。「収支計算書」など財務情報の公開も義務付けた。
 いずれも経営の迅速化や透明性を高めることを目指した大学改革の一環だったが、労働問題に詳しい札幌の佐藤博文弁護士は「少子化で経営環境が厳しくなる中、権限を強化された理事会が、短期的な利益を求め、安易な解雇や給与削減などを強行するケースが増えた」とみる。
 近年、法令に抵触する恐れのある長時間労働や不当解雇を強いる「フラック企業」が社会問題化している。全国の大学教員でつくる市民団体「大学オンブズマン」(事務局・京都市)は「大学でも不当解雇などが次々表面化しており,ブラック企業ならぬ『ブラック大学』が全国的に増えつつある」としている。

18日 札幌でシンポ

 解雇処分などをめぐる、道内の大学と元教職員の対立激化について考えるシンポジウムが18日午後l時30分から、札幌市北区の北大人文・社会科学総合教育研究棟(北10西7)で開かれる。
 道私立大教職員組合連合などでつくる実行委の主催。訴訟などに発展した事例報告のほか、専門家によるパネルディスカッションを行う。資料代500円。

 問い合わせは北海道合同法律事務所
011-231-1888へ。

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