研究者の地位と権利を守るための全国的ネットワークをつくろう!

2013年06月25日

大阪市立大学・大阪府立大学の統合問題に関する見解

大阪市立大学教職員労働組合
 ∟●2013年6月18日 大阪市立大学・大阪府立大学の統合問題に関する見解

大阪市立大学・大阪府立大学の統合問題に関する見解

 大阪市立大学は今、消滅の危機にある。
 本年4月、大阪市立大学は、大阪府市新大学構想会議より出された「新大学構想<提言>」を受け、「新大学検討本部」を設置した。同本部は8月を目途に、統合後のより詳細な大学像を示す予定となっている。
 こうした動向は、2016年4月に新大学を発足させるというスケジュールに基づくものと考えられるが、今日の本学および府市をめぐる状況を鑑みれば、非常にリスクの大きい計画を拙速に進めるものであると言わざるを得ない。
 大阪市議会では、府市の水道事業統合条例案が否決され、自民・民主・共産の3会派からは市長に対する問責決議案が提出されるなど、大阪都構想の先行きは不透明さを増しているが、その一方で大阪市は、「都構想とは切り離して大学の統合を目指す」と明言している。
 府市が存続した状態での法人統合には、地方独立行政法人法の改正が必要だが、現在の国会情勢を見るに、2016年度の統合に間に合うかは疑問を呈さざるをえない。この場合、「いずれかの法人を解散させ、もう一方に吸収させる」という手法が最終的な手段として想定できるが、都構想の趣旨を踏まえれば、「大阪市立大学が消滅、大阪府立大学が存続」というシナリオが有力視される。
 これまで大阪市立大学が果たしてきた役割を背景として、長年にわたり培ってきた「市民の誇りとなり、市民に親しまれる大学」としてのアイデンティティーが失われるということを、大学法人は理解しているのだろうか。卒業生、在校生、教職員、そして大学の発展に協力してこられた方々は納得できるのだろうか。
 我々は拙速な統合のもたらす未来を憂慮する。
 新大学構想会議で示されたように、法人化後の運営費交付金の大幅な削減をはじめとする「改革」により、大学は疲弊した状態にある。教員人数の減少で、教員1人当たりの学生数は増加。市派遣職員の急激な引き揚げおよび同時に進められた職員の非正規化により、大学運営の継続性・安定性はゆらいでいる。学生サポートセンターへの移行等の再編により発生した問題も解消されていない。
 急激に予算を削減し、大学を二重行政と切り捨てた自治体が、統合後の大学に大学二つ分の予算措置を行うことがあるだろうか。財源については未だにその方針が明らかにされていないが、大学の統合により従前の予算規模が維持されないような事態になれば、大学に対する社会の期待の高まりに反して「教育」「研究」「診療」の質を低下させ、府市の描く「強い大学を実現する知的インフラ拠点」「研究で世界と戦う大学」といったビジョンとは全く逆の結果をもたらすだろう。
 我々は、こうしたリスクの存在を含めた、メリット・デメリットの十分な検討と議論を行わず、時期だけを優先した拙速な統合に反対する。

2013年6月18日
大阪市立大学教職員労働組合
執行委員会

|