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2013年07月20日

京大職組、「国の違法・不当は認められない」 未払い賃金1183万円の支払を求める訴訟

全大教
 ∟●【京大職組】未払賃金請求訴訟・高山副委員長インタビュー

国の違法・不当は認められない

京都大学職員組合中央執行副委員長 高山佳奈子

 京都大学の教職員96人は先月11日、国立大学法人・京都大学(松本紘総長)による一方的賃下げは違法であるとして、未払い賃金計1183万円の支払いを求める訴訟を京都地裁に起こしました。原告で京大職組中央執行副委員長の高山佳奈子・同大法科大学院教授に裁判の意義について聞きました。

 労働のルールに従わない賃下げ

 私たちの基本的な主張というのは合理的根拠のない賃下げは許せないという当たり前のことです。
 国立大学の教職員は、2004年に大学が法人化されたことによって、従来の国家公務員法制ではなく民間のの労働法制が適用されることになりました。賃金労働条件は労使の交渉によって決定することになりました。ところが、京都大学は、国の「要請」を理由として、教職員組合や職員となんら合意することもなく、京大病院の看護師さんなど一部の職を除いて常勤教職員の賃下げを昨年8月1日から実施してきたのです。国は国立大学法人の労働条件・労使関係に介入することは許されません。大学としても国の「要請」はあくまでも「お願い」であり、義務でないため、拒否することは可能でした。労働者の最も基本的な労働のルールに従わない形の賃下げは、大学においても認めるわけにはいきません。

 景気回復に逆行するもの

 国による賃下げ「要請」は国家公務員の賃下げ強行を契機としたものですが、この国家公務員の賃下げ強行そのものが違法・不当であり、景気回復に逆行する措置であり、容認できません。
 国は昨年2月、東日本大震災復興を口実」として国家公務員の給与を引き下げる「臨時特例法」を成立させ、同年4月から賃下げを強行しました。人事院総裁から「遺憾の意」が表明されるほど大幅な削減率でした。人事院勧告にもとづかない賃下げは労働者の団体交渉権などを定めた憲法28条や国家公務員法にも違反しています。
 景気の問題で言えば、国家公務員をはじめ公務員や国立大学職員の数は多いですし、賃金を下げれば経済全体でみると負のインパクトになると思います。政府は景気を高揚させようと言っているのに自ら足を引っ張ることになります。景気回復に向けてがんばつている民間の人たちの努力を無にする政策です。
 昔は公務員部門をたたけば人気が上がるという政治家がいましたが、国民の反発も少しずつ生まれています。国家公務員の賃下げ反対裁判をたたかっている人が路上で演説をすると街頭の反応がだんだん良くなっていると聞きました。

 国立大学の役割を守る

 今回の国の措置は、「裕福ではないけれど意欲と能力がある人が本当に好きな勉強が出来る」という国立大学の本来のあり方を変えてしまうものである、という点を強調したいと思います。
 国による賃下げ「要請」の狙いは、「国家公務員の給与削減か同等の給与削減相当額を算定し、運営交付金等から減額をされたい」との安住前財務大臣の発言(昨年5月)にあるように国が国立大学法人に拠出している基礎的基盤的経費である運営交付金を削減することにありました。
 そもそも運営交付金は、国立大学法人の自主的、自立運営に差し障りのないよう、国が公費にかえて大学法人に支出するもので、法人化の際の国会審議でT運営交付金等の算定にあたっては、…法人化前の公費投入額を十分確保し、必要な運営費交付金等を措置するよう努めること」と衆参の付帯決議がつけられるなど、国の一時的な政策による安易な減額は戒められていました。今回の運営費交付金の削減は国の責務を放棄したものです。
 これによって大学はますます学費値上げをせざるを得なくなります。
 そもそも、欧米では授業料が無料であるところが多い。ところが日本の現状は、OECD加盟国の中で国内総生産に占める高等教育予算の割合は非常に低く、最低ランクです。さらに削減していこうというのが今回の措置です。客観的には「国立大学つぶし」に近いことが行われています。アジアの国々が教育に力を入れて人材を育成しているときに日本は先細りになってしまう。将来の国を支える人々が育てられるのかという危機が迫っています。亡国の施策と言わざるを得ません。

 100%真理はわれわれに

 全国の109の国公立大学・国立研究機関、国立高専の教職員組合で構成する全大協(全国大学高専教職員組合)は昨年フ月、史上初めて全国的な裁判闘争を行うことを決定しました。現在、京都大学をはじめ、全国7組合が提訴しています。検討しているところも含めると今後10組合で訴訟が展開されることになります。
 京都大学では7月末に原告をさらに追加し、100人以上を組織することにしています。提訴の記者会見以後、様々な労働組合から激励のメッセージをいただきました。提訴するだけでこれほどの反応があるのかと驚いています。
 真理は100%私たちの側にあり、絶対負けません。全国の大学、民間の労働者、そして国民と共同してたたかっていきたいと思います。


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