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2013年07月23日

全大教第45回定期大会特別決議、「高等教育漸進的無償化条項の具体化と奨学金の給付制への移行と充実を」

全大教
 ∟●全大教第45回定期大会特別決議

全大教第45回定期大会特別決議
高等教育漸進的無償化条項の具体化と、奨学金の給付制への移行と充実を

 子どもの貧困率は 15.7%(20 歳未満;2009 年)、ひとり親世帯等の貧困率は 50.8%(同年)であり、こうした状況からおこる貧困の連鎖を断ち切ることが、社会にとっての大きな課題です。子どもの貧困対策法が 6 月 19 日、国会で成立しました。同法では、学習機会に関する指標を毎年調査・公表し、教育および教育費に関する支援を行なっていくという基本的施策が盛り込まれています。
 日本の、教育費の公財政支出の対 GDP 割合は OECD 加盟国のなかで、最低レベルの 3.6%です(2010 年)。2010 年からようやく始まった高校授業料実質無償化は、政権交代によって所得制限の導入の議論が蒸し返されている状況です。
 高等教育についての無償化の議論は立ち遅れていましたが、2012年 9 月、政府はようやく国際人権規約 A 規約 13 条(b)(c)項の留保撤回を表明し、国連に通告をしました。私たちの長年の要望が実現した、非常に大きな前進です。今後は、この条項の実質化の実現が必要です。
 そもそも、国民が高等教育を含む教育を受ける権利を等しく有しているのは、教育が公共的な営みであり、国民に広く教育を行き渡らせることが公益にかなうものであるという考えに基づいています。しかるに近年、新自由主義の高まりとともに、高等教育の受益者負担論が広がり、学習者の利益追求が教育の目的であるかの如き言説と、それにもとづく施策が展開されてきています。こうした考え、施策は、社会の構成員の相互扶助の観念の衰退、社会秩序の崩壊を招きかねないものです。教育をあくまで公的なものとして位置づけた上で、それにふさわしい規模の公財政支出と、公正な配分がなされなければなりません。
 現在、学生数の 7割が学ぶ私立大学や、公立大学を含むすべての大学において無償化が実現していくための施策を求めます。その中にあって、国立大学の授業料は、「私立大学と比較して低い」ことを理由に、長年にわたって引き上げられてきました。現在は、現行の授業料学を前提とした運営費交付金の措置の下、授業料を低く設定することは困難な状況です。高等教育の漸進的無償化の考えに立ち、授業料不徴収が可能となるよう、運営費交付金の引き上げを国に求めます。
 大学・高等教育機関で学ぶ学生は、18歳超の年齢に達しています。社会の中で自立して生活をしていく年齢期を学習に充てることによって、そこでのさらなる学習成果が社会に還元されるべく努力をしています。その意味で、授業料の不徴収とはべつに、奨学金の充実が欠かせない課題です。公的奨学金に給付制が導入されず、また「教育ローン」ともいうべき有利子の奨学金の比率が増え続けているのが現状です。学ぶ意志をもったすべての国民が教育を受けることができるよう、公的奨学金のすべてを給付制とすることを求めます。

 私たちは、大学・高等教育機関が、公的な責務をもつ社会の中で重要な機関であることをあらためて認識し、そこで学び卒業する若者とすべての国民が、その成果を社会に還元していけるよう、日々の大学運営、教育・研究活動を行なっていきます。

以上、決議します。

2013 年 7月 14日
全国大学高専教職員組合第 45回定期大会

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