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2013年07月24日

日弁連、「日本再興戦略」に基づく労働法制の規制緩和に反対する意見書

日弁連
 ∟●「日本再興戦略」に基づく労働法制の規制緩和に反対する意見書

「日本再興戦略」に基づく労働法制の規制緩和に反対する意見書


2013年(平成25年)7月18日
日本弁護士連合会

第1 意見の趣旨

 政府は,本年6月14日,「日本再興戦略」とそれを受けた「規制改革実施計画」を閣議決定した。「日本再興戦略」においては,産業競争力会議や規制改革会議等の答申を基に,我が国の経済を再生するに当たっての阻害要因を除去し,民需主導の経済成長を実現していくために不可欠であるとして,様々な規制改革・規制緩和が提言されている。経済を新たな成長軌道に乗せるためには,人材こそが我が国の最大の資源であると言いつつ,「多様な働き方の実現」のためとして,多様な正社員モデルの普及,労働時間法制の見直し,労働者派遣制度の見直し等が検討対象とされている(日本再興戦略第Ⅱ一2③)。規制改革実施計画においても,人口減少が進む中での経済再生と成長力強化のため,「人が動く」ように雇用の多様性,柔軟性を高めるものとして,ジョブ型正社員・限定正社員(ジョブ型正社員と限定正社員はほぼ同じ意味で用いられている。以下,両者を併せて「ジョブ型正社員」と記載する。)の雇用ルールの整備,企画業務型裁量労働制等の見直し,有料職業紹介事業の規制改革,労働者派遣制度の見直しが個別措置事項とされている(規制改革実施計画Ⅱ4)。その内容は,現段階ナは抽象的な記載にとどまるが,それらの議論の経過において解雇の金銭決消制度が具体的に検討されたように,労働者の地位を不安定にしかねない制度となる可能性も残っており,参議院選挙後に予定されている具体的な検討において,経済成長の手段として雇用規制の緩和を利用しようする議論が展開されるおそれがある。しかし,日本の労働者の現状は,非正規労働やワーキングプア問題の拡大に代表されるように,窮乏を極めており,雇用規制の緩和を経済成長の手段とするべきではない。

 そこで,当連合会は,国に対し,具体的な制度改革の実現に当たって,以下の諸点について十分に留意するよう強く求めるものである。
1 全ての労働者について,同一価値労働同一賃金原則を実現し,解雇に関する現行のルールを堅持すべきこと。2 労働時間法制に関しては,労働者の生活と健康を維持するため,安易な規制緩和を行わないこと。
3 有料職業紹介所の民間委託制度を設ける場合には,求職者からの職業紹介手数料の徴収,及び,民間職業紹介事業の許可制の廃止をすべきではなく,労働者供給事業類似の制度に陥らないよう,中間搾取の弊害について,十分に検討,配慮すること。
4 労働者派遣法の改正においては,常用代替防止という労働者派遣法の趣旨を堅持し,派遣労働者の労働条件の切下げや地位のさらなる不安定化につながらないよう十分に配慮すること。


第2 意見の理由

……以下,略……

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