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2013年08月10日

「天使大学不当労働行為事件」に関する教職員組合声明

 天使大学は,不当労働行為事件について地労委決定と救済命令(7月24日)に従わず,8月8日,中央労働委員会へ再審査を申し立てた。

 (参考資料)
 ■北海道労働委員会 天使学園事件(平成23年道委不第31号)
  ∟●命令書概要版(PDF形式 145KB)
  ∟●命令書全文・記号版(PDF形式 304KB) 

「天使大学不当労働行為事件」に関する教職員組合声明

 天使大学不当労働行為事件(平成23年道委不第31号事件)について北海道労働委員会は7月24日、救済命令を発しました。それに対して学校法人天使学園(近藤潤子理事長)は、8月8日に中央労働委員会へ再審査申し立てを行いました。
 一連の動きに関して、教職員組合としての見解を表明します。

天使大学教職員組合
北海道私立大学教職員組合

〔1〕救済命令に至る経過
 天使大学教職員組合(以下、組合)は、2011年12月末、北海道労働委員会(以下、道労委)に救済を申立てた。「天使大学不当労働行為事件」は1年7ヵ月余の審査を経て、7月24日に救済命令が交付された。同申立ては、①ハラスメント事案に関わる配置転換等の労働環境調整の団交拒否,②就業規則に関わる懲戒委員会規程及びハラスメント規程改定に関する団交拒否,③組合による学内の空室利用について、その決裁要件を他の団体等より重くしたことへの組合に対する支配介入,④教授会が承認した教務部長人事について慣例を破り、理事会で投票により組合代表であった教務部長人事を否決したことは組合員への不利益扱いという4点について救済を求めたものである。命令では①②について救済を認め、法人に対してポストノーティスによる謝罪を命じた。 一方で③④については、組合の申立てを棄却した。

〔2〕命令に対する組合の見解
 2009年11月の学長選挙において前学長(現理事長)が退き、2010年4月より現学長体制がスタートしたが、学長公選制撤廃、学内諸規程の矢継ぎ早で一方的改悪や教学自治への介入が続き、これに危機感を覚えた教職員は2011年2月に組合を結成するに至った。過半数組合として理事会と向き合う組合に対し、理事会は当初より徹底した組合敵視策を取り続けてきた。
 組合としては、申立て事項の全てが救済されなかったことは極めて遺憾であり、特に上記④は、従来の教学人事の任用の慣例を破り投票に持ち込み、保留票も多い中で組合代表であった教務部長を否決したことは、この人事に先立つ関連規程の改定等などからも恣意的な行為を疑わざるを得ないと考えている。しかし、理事会が「組合員である」と言葉に出していないが故に立証ができないとして棄却されたことは、甚だ残念である。とは言え、①②の団交拒否については厳しく命令書にて断罪したこと。同時に、審査段階での法人側の「組合は、組合員の一部に人事権を持ち経営上の機密に触れる教授を構成員としており労組法上の労働組合にあたらない」という組合そのものを否定する稚拙な主張に対しては、これを却下したこと。さらにポストノーティスを認めたことは十分に評価すべき命令であったと考えている。

〔3〕法人理事会の中労委再審査申立てと、法人としての資質
 組合としては、一部不満の残る救済であったとはいえ、本命令を甘受し学内の混乱を早期に収拾して、より良い教育研究環境を取り戻すために労使関係の改善に着手すべく対応を協議していたところである。その矢先、法人は7月31日に「中央労働委員会への再審査申立て予定」を組合側へ文書にて通知してきた。同命令の再審査申立てにあっても、その履行義務は免れるものではない。法人は命令の真意をくみ取り、教学への支配介入に固執してきたこれまでを顧み、その反省の上に、命令の履行と労使関係改善のために努力する姿勢を社会的に示すべきときである。
 組合は、労使関係の早期正常化のため、早々に団体交渉を通じて共に課題検討が行えるよう準備を進めてきた。しかし、法人側は、団交拒否について命令書で指摘されたようにまたもや自己の主張に固執し、さらにこの事態を長期化させようとしている。学校法人という公的機関としての責任やステークホルダーである学生等の利益を考慮しているとは思えない。この度の理事会の判断には、学校法人の責任者としての適性についても疑いを持たざるを得ない事態である。理事会が、このまま道労委による命令を履行せず平然とし続けるならば、その姿勢は断罪されなければならず、組合としては理をもって堂々と権利を行使し、その対応にあたっていく決意であることを抗議とともに表明する。

〔4〕法人理事会の民主化を
 法人理事会は、現学長を含め2名の教学理事を除き、理事長以下全員が80代前後であり、学校法人経営を担う力量には甚だ疑問が残る。そのような中で私学法改正、寄附行為を金科玉条のごとく振りかざし、理事長をはじめ一部の理事らによる専断的行為により教学組織に混乱をもたらす結果となっている。また、評議員会、監事らも理事会のみが選任するものとなり、また理事長アドバイザーが常任監事となるなど自浄作用が働く仕組みは皆無に近い。教育の質を担保する教職員の欠員状態解消より、次々と法人側の労務対策役員を補充するなどしていることがその証である。また、顧問弁護士も理事者の縁戚にあたる者を採用し、組合対策費など係争事件ごとに多額の報酬が支払われている可能性が高く、理事長や一部理事による大学の私物化の様相が垣間見える。この度の命令不履行と中労委再審査申立ての一連の行動も、学校法人を預かる理事者の立ち振る舞いとは思えず、自らの主張に固執し大学全体を混乱に貶める行為と言えるのではなかろうか。
 私たちは法人理事会が教学との対立関係を解消し、正常な労使関係構築と大学運営において力を合わせることを切望するが、そのためには現理事会体制の刷新が必須であると言わねばならない。救済申立てから一年半に亘る調査、審問を経て、多くの教職員が理事会の刷新こそが問題解決の第一歩であると認識できたことが今回の教訓であることをこの機会に付言する。

〔5〕冷静な対話を
 現理事会を先導する一部理事の方々へ申しあげたいのは、組合および大学教学への対立的感情を捨て、本学の理念である内省性を高め、この事態に終止符を打つべき時期であることを悟られ、出処進退を明確にされたいということである。道労委の命令に服し、大学人に相応しい姿勢を呼び覚まし、労使が対等にして公平な話し合いのテーブルに就くことを、最後に重ねて呼びかけるものである。

以 上

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