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2013年10月01日

熊本大学教職員組合、声明:「未払い賃金請求訴訟」を全面的に支援し、給与削減・退職金引き下げ問題を闘い抜こう

熊本大学教職員組合
 ∟●声明:「未払い賃金請求訴訟」を全面的に支援し、給与削減・退職金引き下げ問題を闘い抜こう

声明:「未払い賃金請求訴訟」を全面的に支援し、給与削減・退職金引き下げ問題を闘い抜こう

 2012 年 8 月 1 日、熊本大学使用者は、2011 年度の人事院勧告分として基本給:平均 0.23%の削減にくわえて、「国家公務員の給与改定及び給与の臨時特例に関する法律」(以下、「臨時特例」と略記する)に対応して、基本給:平均 7.8%(最大 9.77%)、賞与:一律 9.77%、管理職手当:一律 10%という前代未聞の大幅な給与削減を行なった。さらに使用者は、組合との団体交渉を一方的に打ち切り、2013 年 1 月 1 日、熊本大学教職員に対して改正「国家公務員退職手当法」と同一の退職金引き下げを強行するという不当労働行為を犯した。

 我われ組合は、昨年度の団体交渉において、労働法制の下にある本学教職員へのこうした行為が、労働契約法の求める「高度の必要性に基づいた合理的な内容のもの」でもなければ、「社会一般の情勢」(=民間の賃金水準)に適合させるものでもないことを明確にし、2012 年に締結した労働協約(「国家公務員の給与の『臨時特例』に対応した組合員の給与の取扱いに関する労働協約」)に明記された「経営判断上可能な範囲において、給与水準を最大にするよう努力する」という事項に基づき、給与削減率の圧縮、熊大使用者が想定した運営費交付金削減額と実際の削減額の差額分の返還、代償措置の実現を使用者に強く要求した。さらに組合は、退職金引き下げが労働者側の合意を得ていない労働条件の不利益変更・不利益遡及という違法性を孕んだものであることを指摘し、激変緩和措置の実施を要求した。しかし、谷口学長は「できる限りのことはしてきたと自負している」(2013 年 3 月 11 日の団体交渉)とまで強弁する有様である。これらの問題が、本学教職員の生活基盤を破壊し、人生設計の見直しを迫るきわめて深刻なものであるにもかかわらずにである。大学の自主的・自律的運営を行なう当事者能力・意欲の欠如は、ここに極まったと言わざるを得ない。

 我われ組合の粘り強い運動によって、医学部附属病院の医療職員等への給与削減の波及回避や「臨時特例手当」(2013 年 6 月期の期末・勤勉手当 9.77%削減分を補填する手当)を獲得することはできたものの、我われの要求の実現はごくわずかにとどまっている。組合が要求し続けてきた定年まで無際限に再任を認めている教員任期制の廃止は、経費負担増なく教職員の定着化を可能にする有効策でもある。度重なる給与削減によって優秀な人材流出に歯止めがかからない状況を招いている熊大使用者には、一刻の猶予も許されない。給与削減と退職金切り下げ問題に関する団体交渉は昨年度から継続中であり、熊大使用者は一日も早く交渉を再開すべきである。

 こうした熊本大学教職員の置かれた窮状と本学の危機的状況(私立大学や大都市圏の国立大学法人との給与格差による人材流出・優秀な人材確保の困難)を、組合は経営協議会学外委員に書簡で伝え(2013 年 6 月 7 日)、経営協議会において、①人事院勧告や政府の要請に左右されることのない、国立大学法人の教職員の適正な給与水準を実現できる制度作りを他の国立大学法人の学長たちと共同して始めること、②熊本大学教職員組合の要求事項をふまえて、2012 年度・2013 年度の給与減額の縮減に最大限努力することを提言するよう求めた。これを受けてか、本年度の第 2 回経営協議会(2013 年 6 月 14 日開催)において、学外委員から「国からの交付金が減額されることに伴い、教職員の給与を次々と減額しては、教職員のモチベーションが上がるはずもない」・「国の給与体系に準じるのではなく、時間はかかると思うが、教職員組合と協力し、熊本大学独自の給与体系を作ってみてはどうか」といった踏み込んだ提言がなされている。熊大使用者がこうした声に真摯に耳を傾け、大学の運営を担う当事者としての義務と責任を果たすための行動に出なければ、本学の将来など望むべくもない。

 むろん、給与削減・退職金引き下げ問題は、本学にとどまる問題ではない。全国の国立大学法人等では、未払い賃金の請求訴訟が相次いでおり(現時点で、全大教高専協議会、高エネルギー加速器研究機構職員組合、福岡教育大学教職員組合、山形大学職員組合、富山大学教職員組合、京都大学職員組合、新潟大学職員組合、高知大学教職員組合、原告 500 名以上)、いくつかの裁判では早ければ今年度内に判決が出る可能性がある。組合は、今年度の定期大会(8 月 1 日開催)にて、本学の課題と同様の争点で提訴したこれらの単組による裁判闘争を全面的に支援していくことを決定した。昨年度の団体交渉(2013 年 3 月 14 日)において、谷口学長が“熊本大学が訴訟当事者でないとしても、同じ内容の裁判の結果”については、退職した後でも“役員メンバーで責任を持ちます”と明言している以上、これらの裁判は我われの闘争でもある。熊本大学教職員組合は、「未払い賃金訴訟の公正な判決を求める署名」活動・募金活動を今年度の最重要課題の一つと位置づけ全力で取り組んでいくとともに、裁判も選択肢としながら、給与削減・退職金引き下げ問題に関する再開後の団体交渉において、削減された給与の奪還と代償措置の実現を求め総力をあげて闘い抜く。
 以上、2013 年度定期大会の議論をふまえ、ここに宣言する。

2013 年 9 月 11 日
熊本大学教職員組合執行委員会

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