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2013年11月18日

吉見義明教授の裁判闘争を支持し、「慰安婦」問題の根本的解決を求める研究者の声明

吉見義明教授の裁判闘争を支持し、「慰安婦」問題の根本的解決を求める研究者の声明

吉見義明教授の裁判闘争を支持し、「慰安婦」問題の根本的解決を求める研究者の声明

吉見義明教授の裁判闘争を支持する研究者の声明・署名の呼びかけ

 すでに報道などを通じてお聞き及びかと存じますが、日本軍「慰安婦」研究の第一人者・吉見義明中央大教授がさる7月29日、「日本維新の会」の桜内文城議員を名誉棄損で東京地裁に提訴しました。桜内氏が吉見氏の著書を「捏造」と侮辱したのが、その理由です。

 ところが桜内氏側は論点をすり替え、吉見氏が「「慰安婦=日本軍の性奴隷」という虚偽を世界に発信している」と非難し、裁判で正面から争う姿勢を示しています。

 この裁判は、「慰安婦」問題についての誤った認識を拡散させている悪質な宣伝を許さず、「慰安婦」問題の根本的解決を求めるという点からも、また不当な政治的圧力から学問研究の自由を守るという点からも、きわめて重要な意義をもっています。

*吉見義明教授の訴状
  http://space.geocities.jp/japanwarres/center/hodo/hodo53.pdf
*桜内議員・日本維新の会の主張
  https://j-ishin.jp/legislator/news/2013/1008/890.html
*「慰安婦」問題解決の方策としては、解決編中の1-5「解決への提言」をご参照ください。
  http://fightforjustice.info/?page_id=417

 そこで私たちは、長年、関西地方で「慰安婦」問題解決のための活動に取り組んでおられる「日本軍「慰安婦」問題・関西ネットワーク」の方々との相談のうえで、吉見氏の裁判闘争を支持し、「慰安婦」問題の真の解決を求める内容のアピールを、研究者の立場から発表したいと考えております。

 つきましては下記の声明をお読みいただき、ご賛同いただけるようでしたら、11月25日(月)午後6時までに以下の【署名の仕方】の要領で、ご署名をお願いします。

 なおその結果は、関係各方面に通知するとともに、12月1日に大阪で予定されている「日本軍「慰安婦」問題・関西ネットワーク」の集会で報告することにしています。また、あわせて記者会見も行う方向で検討しています。

【署名の仕方】

下記の署名用フォームのページにアクセスし(携帯からでも可能)、必要事項を記入のうえ、送信してください。

  https://ssl.form-mailer.jp/fms/8e0697c6270781

※今回は「研究者の声明」という形式をとっていますが、ここで言う「研究者」とは何らかの形で研究に携わっている(または携わった経験のある)方という程度の意味です。大学・研究機関などへの所属の有無は問いません。もちろん国籍・居住地の別も問いません。

※声明文と賛同人名簿は11月末に関係機関・団体、報道機関などに送付の予定です。

※メッセージをご記入いただいた場合、報道関係者に公開する可能性があることをご了解ください。不記入でもけっこうです。

※アクセスが集中して送信できない場合は、お手数ですが、しばらく待って再度送信してみてください。1時間に50人以内しか受け付けられません。アクセス制限は1時間毎に更新されます。たとえば10時台にアクセス制限ページが表示された場合は、11:00には解除されます。

※ご質問・ご意見は、次のメール・アドレスまでお願いします。

  問い合わせ先: y-support@freeml.com

※最新情報は下記ブログにて更新予定です。

  http://y-support.hatenablog.com/

吉見義明教授の裁判闘争を支持し、「慰安婦」問題の根本的解決を求める研究者の声明

さる7月29日、日本軍「慰安婦」研究の第一人者として知られる吉見義明中央大教授が、「日本維新の会」所属の桜内文城衆議院議員を名誉棄損で、東京地裁に提訴しました。問題の発端は、今年5月27日「日本維新の会」共同代表の橋下徹大阪市長が、「慰安婦」問題発言などに関する釈明の記者会見を日本外国特派員協会で行った際、同席した桜内氏が吉見氏を冒?する発言をしたことでした。桜内氏は、司会者が参考文献として吉見氏の著書を紹介したところ、「これはすでに捏造であるということが、いろんな証拠によって明らかとされております」と述べたのでした。

前後の文脈から、桜内氏が吉見氏の著書を「捏造」と侮辱したことは明白です。しかし吉見氏が発言撤回と謝罪を求めると、桜内氏はこれに応じるどころか、「捏造」と述べたのは「sex slavery(性奴隷)」という概念であると、論点をすり替えようとしました。そして10月7日の第1回口頭弁論にあわせて発行された「日本維新の会 国会議員団本部」の『NEWS RELEASE』は「桜内文城・衆議院議員は、日本国および日本国民の名誉と尊厳を守るため、「慰安婦=日本軍の性奴隷」という虚偽を世界に発信している吉見氏の讒訴を法廷で粉砕します」と宣言し、吉見氏と正面から争う姿勢を示したのです。

私たちはこのような桜内氏らの不誠実きわまりない法廷戦術に、強い憤りを感じています。桜内氏側の戦略は、「性奴隷」という一般には馴染みの薄い用語に世間の耳目を向けさせ、今日の日本社会に蔓延する排外主義的風潮に便乗することで、自らの過ちを隠蔽するとともに、実証的に積み上げられてきた歴史研究の成果を虚偽であると印象づけようとするものと見られます。これは研究者が自らの研究成果にもとづいて主張する学問的見解を、政治的な策略を弄して葬り去ろうとするものであり、このような行為を許してしまえば、「慰安婦」研究にとどまらず、研究成果の自由な表明に政治が干渉する道を開くことに繋がりかねません。自らの保身のために、論点をすり替え、「慰安婦」問題の解決を遠ざけようとする桜内氏らの策略は、とうてい国際社会においても受け入れられるものではなく、それこそ「日本国および日本国民の名誉と尊厳」を傷つけるものではないでしょうか。

桜内発言とその弁明の論理は、昨今、日本社会の一部で繰り返されてきた、「慰安婦」問題についての誤った認識を拡散させ被害者の名誉を傷つける悪質な宣伝を拠り所としています。そしてその背景には、過去の植民地支配や侵略戦争の過ちから目をそむけ、被害者に責任を転嫁することで自らを正当化しようとする歪んだ歴史認識があります。私たちはこのような卑劣で浅薄な歴史認識と決別することこそが、日本社会の将来を切り開く道であると確信していますが、万一、裁判で桜内氏が主張するような理屈が通ってしまえば、「慰安婦」問題の本質を歪曲しようとする歴史修正主義の主張に、司法が「お墨付き」を与えることになりかねません。

私たちは「慰安婦」問題の根本的解決が、過去の日本の過ちを正し、近隣諸国との真の和解を成し遂げるために不可欠であるという認識に立ち、また日本における学問研究の自由を守る意味からも、吉見氏の裁判闘争を全面的に支持することを、ここに表明します。司直には正義と良識にもとづいた、国際社会に恥じるところのない賢明な判決が下されることを心から期待します。また日本政府には、本年5月17日の国連社会権規約委員会および5月31日の国連拷問禁止委員会の勧告に沿って、元「慰安婦」被害者を侮辱する言動を認めない措置を取るとともに、すでに明らかにされている関係諸団体の提言にもとづき「慰安婦」問題の根本的解決をはかるよう、強く要求します。

呼びかけ人(五十音順)

庵逧由香(立命館大学)、板垣竜太(同志社大学)、鵜飼哲(一橋大学)、内海愛子(恵泉女学園大学名誉教授)、岡真理(京都大学)、長志珠絵(神戸大学)、小野沢あかね(立教大学)、笠原十九司(都留文科大学名誉教授)、北原恵(大阪大学)、金富子(東京外国語大学)、駒込武(京都大学)、河かおる(滋賀県立大学)、志水紀代子(追手門学院大学名誉教授)、宋連玉(青山学院大学)、高橋哲哉(東京大学)、中野敏男(東京外国語大学)、早川紀代(女性史研究者)、林博史(関東学院大学)、姫田光義(中央大学名誉教授)、藤永壯(大阪産業大学)、藤目ゆき(大阪大学)、吉田裕(一橋大学)


【参考資料】
◆ 2013年5月27日、日本外国特派員協会における桜内文城衆議院議員の発言

1点だけ先ほどの、最初の司会者の紹介の点について少しコメントいたします。橋下市長を紹介するコメントのなかで、彼は「sex slavery」という言葉を使われました。これは日本政府としては強制性がないということ、その証拠がないということを言っておりますので、そのような言葉を紹介の際に使われるのはややアンフェアでないかと考えております。

それからヒストリーブックスということで吉見さんという方の本を引用されておりましたけれども、これは既にねつ造であるということが、いろんな証拠によってあきらかとされております。この点も付け加えてコメントしておきます。

出典:吉見義明教授の訴状 (http://space.geocities.jp/japanwarres/center/hodo/hodo53.pdf

◆ 国際連合・経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会「第50会期において委員会により採択された日本の第3回定期報告に関する最終見解(2013年4月29日~5月17日)」2013年5月17日(外務省仮訳)

26. 委員会は、「慰安婦」が被った搾取が経済的、社会的及び文化的権利の享受及び補償の権利にもたらす長きにわたる否定的な影響に懸念を表明する(第3条、第11条)。

委員会は、締約国に対し、搾取がもたらす長きにわたる影響に対処し、「慰安婦」が経済的、社会的及び文化的権利の享受を保障するためのあらゆる必要な措置をとることを勧告する。また、委員会は、締約国に対して、彼女らをおとしめるヘイトスピーチ及びその他の示威運動を防止するために、「慰安婦」が被った搾取について公衆を教育することを勧告する。

出典:外務省(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kiyaku/pdfs/kenkai_130517_jp.pdf

◆ 国際連合・拷問禁止委員会「第50会期拷問禁止委員会(2013年5月6日~31日)で採択された第2回日本政府報告に関する総括所見」2013年6月28日(国際人権活動日本委員会訳)

軍事的性奴隷制の被害者

19. 世界第2次大戦中の日本の軍隊による性奴隷制の被害者(いわゆる、従軍慰安婦)に対する虐待に関して講じられたいくつかの措置についての締約国による情報にもかかわらず、当委員会は、締約国がこの問題に取り組みながらも、当条約上の義務に応えようとしないこと、特に以下の事柄に関して深い懸念を抱く。
(a) 被害者に対して適切な救済とリハビリを提供していないこと。当委員会は公的資金よりも民間からの拠出金の財源による賠償は不十分であり不適当であったことを残念に思う。
(b) このような残虐な行為の実行者を訴追することなく、裁判にかけて罰していないこと。当委員会は、残虐性の引き続く影響の理由により、被害者から救済、賠償、そしてリハビリの機会を奪う時効は適用されるべきではないことを想起する。
(c) 関連する事実や物的証拠を隠蔽し公開しないこと。
(d) 政府高官や地方自治体の高官、そして数名の国会議員を含む政治家による止まらぬ事実の公的な否定と被害者に対する再トラウマの呼び起こし。
(e) とりわけ歴史教科書内でこの問題の引用が減少しているとの例証により、当条約の男女の性に基づく違反を防ぐための有効な教育的措置を実施しないこと。
(f) 締約国によるこの問題に関連する種々の勧告の拒否、例えば、UPRによるもの(A/HRC/22/14/Add,1 para.147.145 et seq.), これは当条約による勧告(24項)と全く同じであり、それから他の多くの国連人権メカニズムによるもの、とりわけ、自由権規約委員会(CCPR/C/JPN/CO/5, para.22), 女性差別撤廃委員会(CEDAW/C/JPN/CO6, para.38), 社会権規約委員会 (E/C.12/JPN/CO/3, para.26), そして人権理事会でのいくつかの特別手続きによる委任保有者(特別報告者)である。(第1条、2条、4条、10条、14条、そして16条)

当条約の一般的意見第3号(2012年)を想起し、当委員会は「従軍慰安婦」問題に対して被害者中心の解決策を見出すために、特に下記に述べる、緊急的かつ有効な法的及び立法的措置を講じるよう締約国に強く要求する。
(a) 性奴隷性の犯罪に対する法的責任を公式に認めること。そして適切な刑罰にて犯罪実行者を訴追し罰すること。
(b) 政府当局者や社会的有名人による事実の否定や、このような繰り返えされる否定を通して被害者を再びトラウマに陥れることに対して反論すること。
(c) 関連する物的証拠を公開し、事実を徹底的に調査すること。
(d) 被害者の救済を求める権利を認め、それに従い、賠償、償い、そして可能な限りの十分なリハビリの措置を含む、十全で有効な救済と補償金を提供すること。
(e) この問題について一般市民を教育すること、そしてさらに締約国が当条約の遵守義務に違反することを防ぐ方策として、歴史教科書の中にこの事件を記載すること。

出典:国際人権活動日本委員会(http://jwchr.s59.xrea.com/x/shiryou/2013goumonkinshiiinkaishoken.pdf


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