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2013年11月26日

研究開発力強化法等の改正にともなう非常勤講師ほか有期雇用教員の労働契約法特例に反対し抗議する緊急声明

首都圏大学非常勤講師組合
 ∟●研究開発力強化法等の改正にともなう非常勤講師ほか有期雇用教員の労働契約法特例に反対し抗議する緊急声明

平成25年11月22日

研究開発力強化法等の改正にともなう
非常勤講師ほか有期雇用教員の
労働契約法特例に反対し抗議する緊急声明


首都圏大学非常勤講師組合
東海圏大学非常勤講師組合
関西圏大学非常勤講師組合
大学等非常勤講師ユニオン沖縄


1.労働契約法特例による大学有期教員への権利制限

 全国の国公立大学の非常勤講師及び任期・有期教員の皆さま。今、大変異常な事態が進んでいます。先般メディアで報道されたように、今月末までに、いわゆる研究開発力強化法と大学教員任期法の改正案が国会で審議されることになりました。それぞれの改正案には、労働契約法の特例として無期労働契約へ転換する期間を5年から10年とする内容が盛り込まれています。いわゆる無期転換権の制限です。特例に該当するのは、大学等及び研究開発法人の教員等、研究者(技術者も?)、リサーチアドミニストレーターとのことです。
 非常勤講師は大学で学生を教える教員ですが、研究を業務として義務づけられておらず、研究室も研究費も与えられていません。また任期教員でもありません。にもかかわらず、非常勤講師が今回の法改正で任期教員と同様に転換する期間を10年に延長されることになるというのです。

2.労働契約法の特例内容

 研究開発力強化法(現行)の2条には、『この法律において「研究開発」とは、科学技術(人文科学のみに係るものを除く。以下同じ。)に関する試験若しくは研究(以下単に「研究」という。)又は科学技術に関する開発をいう。』とあります。しかし改正案では、『この法律において「研究開発」とは、科学技術(人文科学のみに係るものを除く。第15条の2第1項を除き、以下同じ。)に関する…』と新たに一文が挿入されました。では人文科学のみに係る【第15条の2第1項】とはどのような内容でしょうか。
 改正案では『第 15 条の 2 次の各号に掲げる者の当該各号の労働契約に係る労働契約法…第 18条第1項の規程の適用については、同項中「5年」とあるのは「10年」とする。』とし、さらに続いて『1(項) 科学技術に関する研究者又は技術者(科学技術に関する試験若しくは研究又は科学技術に関する開発の補助を行う人材を含む。第3号において同じ。)であって研究開発法人又は大学等を設置する者との間で期間の定めのある労働契約(以下この条において「有期労働契約」という。)を締結したもの』とあります。
 もちろんこの条文を素直に読んだだけでは、どう考えても非常勤講師が該当するように思えません。なぜなら非常勤講師は先ほども述べたとおり、研究開発やイノベーションの創出(商品開発)に関わるどころか、研究者・技術者として採用されてもいないからです。
 しかし法案提出者の自民党(側議員)の説明によれば、この「科学技術に関する研究者又は技術者(科学技術に関する試験若しくは研究又は科学技術に関する開発の補助を行う人材)」=非常勤講師(もちろん任期・有期教員も)、になるそうです。

3.研究開発力強化法が対象としていない研究者への特例のみの適用

 法案が成立し自民党の説明どおりに適用されれば、重大な矛盾を引き起こします。そもそも研究開発力強化法は、研究者ではなく国、地方自治体、諸研究機関に対しての責務を定めた法です。研究者個人の責務などはどこにもありません。つまりこの法の適用対象ではない研究者に向けて、唐突に労働契約法の特例(しかも個人の勤労権の制限)を要求しても、改正とはいえないのではないでしょうか。それが問題ないのであれば、労働契約法の特例を刑法に挿入しようとも刑事訴訟法に挿入しようとも問題ないということになります。
 しかも人文科学研究については国、地方自治体、諸研究機関のいずれにも責務が求められていないにもかかわらず、人文科学研究者のみこの法律で勤労権の制限が課せられるというのは、法内容として意味を持ちません。ましてや研究者として採用されていない非常勤講師にも適用させようとしています。あまりにも異常な改正内容です。

4.なぜこのような法改正が急がれるのか

 大学の有期雇用労働者として多数を占めるのは、非常勤講師、それも語学を中心とする人文科学系の非常勤講師です。それまで長期にわたって非常勤講師を事実上無期雇用していた大学は、労働契約法の改正によって、むしろ無期雇用の制度化を否定する更新5年上限を打ち出そうとしました。の背景には専任教員と、任期・有期教員そして非常勤講師間の説明できない待遇格差があります。非常勤講師たちが無期雇用を背景に均等待遇を求めて立ち上がることを恐れた一部の大学が、今年4月、5年上限をかけて押さえつけようとしましたが、逆に刑事告発、告訴されました。またクーリングを強要しようとして、当組合の記者会見で公表されてもいます。そしてカリキュラム変更権を利用して非常勤講師を排除しようとした結果、現在は当組合から偽装請負の疑いで労働局に調査申し入れをされています。この時期にこの法律でこのような内容の法改正をしなければならないとしたら、その理由は、自ずと理解できるのではないでしょうか。大学の安上がりなずさん経営を維持するため、権力を使い、法によって非常勤講師や任期教員に奴隷的拘束をかけようとしているのでしょう。

5.個人の尊重を守るのが民主主義社会

 アメリカ独立宣言には、次の文言があります。「われわれは、自明の真理として、すべての人は平等に造られ、造物主によって、一定の奪いがたい天賦の諸権利を付与され、その中に生命、自由および幸福の追求のふくまれることを信ずる。また、これらの権利を確保するために人類の間に政府が組織されること、そしてその正当な権力は被治者の同意に由来するものであることを信ずる。」 研究者であるというだけで、また大学と契約しているというだけで非常勤講師が無期転換の権利を制限されるのは、法の下の平等に反します。また労働契約法の附則第 3 項には、「施行後 8 年を経過した場合において…その施行の状況を勘案しつつ検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。」としていますが、施行後 1 年もたたないうちに重要な条文内容を特定の労働者のみ特例で操作することは、適正な法の手続きにも反します。
 非常勤講師を代表し、表記4組合はこの法改正には反対であり、強く抗議しその廃案を求めます。研究者・教員個人の無期転換の自由を一方的に制限し、組織の道具として利用するための法改正は民主主義のいかなる手続き・正当性にも反するため、絶対に認めることはできません。

以上


※この文書に関するお問い合わせは以下にお願いいたします。
首都圏大学非常勤講師組合 (直通)080-3310-6910
(公共一般本部 FAX) 03-5395-5139
daigaku_hijoukin@yahoo.co.jp

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