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2013年12月05日

国大協、「大学のガバナンス改革の推進について(素案)」に対する意見

国大協
 ∟●「大学のガバナンス改革の推進について(素案)」に対する意見

「大学のガバナンス改革の推進について(素案)」に対する意見


平成25年11月29日
一般社団法人国立大学協会


1.国立大学におけるガバナンス改革の現状

○大学のガバナンスについては、社会の急激な変化の中で、大学が新たなニーズに機敏に対応し、その機能を強化していくことが、我が国の現在及び将来にとって極めて重要であるとの観点から、改革の必要性が指摘されている。

○国立大学協会としても、こうした国民や社会の強い期待に応え、各国立大学がそれぞれの強みや特色を活かして機能強化を図っていくことを国立大学の総意として取りまとめ、平成 23年 6月には「国立大学の機能強化-国民への約束」、平成 25年 5月には「国立大学改革の基本的考え方について-国立大学の自主的・自律的な機能改革を目指して」を公表した。

○現在、各国立大学においては、教育、研究、地域貢献、国際貢献、大学間の有機的連携等の各般にわたり、学長のリーダーシップの下に迅速かつ適切な改革を実行するため、それを支えるガバナンス体制を整備しつつ、様々な取組を推進している。

○既にほとんどの国立大学においては、学長のリーダーシップに基づく意思決定過程を明確化し、全学的に次のようなガバナンス改革を進めている。
・学長による中長期ビジョンの提示と全教職員による共有
・副学長、学長特別補佐などの任命とそれらを構成員とする学長直属の会議の設置による執行部体制の強化
・教職員定員、予算、施設等についての学長裁量枠の設定による戦略的な資源配分
・IR室等の設置による学内情報の集約と活用

○さらに、多くの国立大学が、それぞれのビジョンに基づいて、次のような切り口でさらなる学長によるガバナンスの発揮に取り組んでいる。
・全学的な教養教育の再構築やグローバル化対応を推進するための学長直属の新たな全学組織の設置
・革新的な運営体制を有する新しい学部等の設置と、その運営体制の全学的波及
・グローバル化や産学連携の推進に資する多様で優れた人材を戦略的に確保するための柔軟な人事システムの構築
・地域の複数大学の資源を効果的に共同活用して教育、研究、社会貢献等の機能の強化を図るための学長のリーダーシップによる大学間連携

2.このたびの素案について

○このたび、第7期中央教育審議会大学分科会組織運営部会の素案において示された方向性は、国立大学において既に取り組んでいる上述のガバナンス改革と軌を一にしており、賛同するものである。

○しかしながら、大学のガバナンスについては、素案においても随所に記述されている通り、一般の企業とは異なる様々な特性が存在する。とりわけ大学は、普遍的な価値を追求する高度な教育研究機関として、我が国の憲法・教育基本法においても、また国際的にも、その自主性・自律性の尊重が基本とされている。今後、国において具体的な制度設計を行うに当たっては、このことを前提としつつ、次のような大学の特性に十分に留意されることを要請する。
・大学運営に当たっては、中長期的な視点が不可欠(教育研究の成果は短期間では現れず、定量的な成果測定が困難)
・優れた教育研究のためには教職員の自由で多様な発想を引き出すことが極めて重要
・教育研究の基本は優れた人材の確保(流動性を高めつつ多様で優れた人材を安定的に確保することが必要)
・各大学の多様な実態に即した改革が必要(総合大学と単科大学、保有学部の分野附属病院の有無、所在する地域などにより、組織、財務、人事等の実態は極めて多様)

○また、国立大学については、「日本再興」の原動力として政府、産業界をはじめ各方面からますます大きな期待が寄せられている一方で、その基盤的経費である運営費交付金は毎年減額されている。もちろん競争的資金等による重点的支援も重要であるが、前述したように大学運営には中長期的視点が不可欠であり、多様で優れた人材を安定的に確保することが極めて重要であって、ガバナンスをはじめとする各種の改革を推進するためにも、一定の安定した財政的基盤を確保することが必要である。このことについては、これまでも様々な場において、国際比較をまじえながら述べてきたところであるが、この機会に改めて要請するものである。

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