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2013年12月09日

安倍暴走政権、「研究開発力強化法改定案」も可決

 安倍暴走政権は,いわゆる「研究開発力強化法」を,5日の参議院本会議に持ち出し自民・公明,日本維新の会などの賛成多数で可決・成立させた。
 正式な法律名は「研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律及び大学の教員等の任期に関する法律の一部を改正する法律案」
 以下,関連情報。

提出法律案はこちら。
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議案情報

議案要旨

(文教科学委員会)
研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律及び大学の教員等の任期に関する法律の一部を改正する法律案(衆第二二号)(衆議院提出)要旨
本法律案の主な内容は次のとおりである。
一、大学等及び研究開発法人の教員等、研究者、技術者、リサーチアドミニストレーターについて、無期労働契約に転換する期間を五年から十年に延長する。
二、出資等を行うことができる法人として、科学技術振興機構、産業技術総合研究所、新エネルギー・産業技術総合開発機構の三法人を別表に規定する。
三、独立行政法人制度全体の制度・組織の見直しを踏まえつつ、研究開発の特性を踏まえた世界最高水準の法人運営を可能とする新たな研究開発法人制度を創設するため、必要な措置を速やかに講じる。
四、我が国及び国民の安全に係る研究開発やハイリスク研究の重要性に鑑み、必要な資源配分を行う。
五、国際的な水準、新規性の程度、革新性の程度等を踏まえ、研究開発等の適切な評価を行う。
六、研究開発の特性を踏まえた迅速かつ効果的な調達を研究開発法人等が行えるよう、必要な措置を講じる。
七、イノベーションの創出に必要な能力を有する人材育成を支援するため、必要な施策を講じる。
八、リサーチアドミニストレーター制度の確立のため、必要な措置を講じる。
九、研究開発等の評価に関する高度な能力を有する人材確保のため、必要な施策を講じる。
十、本法律案は、一部を除き、公布の日から施行する。

以下,法律の一部を抜粋

(労働契約法の特例)

 第十五条の二 次の各号に掲げる者の当該各号の労働契約に係る労働契約法(平成十九年法律第百二十八号)第十八条第一項の規定の適用については、同項中「五年」とあるのは、「十年」とする。

 一 科学技術に関する研究者又は技術者(科学技術に関する試験若しくは研究又は科学技術に関する開発の補助を行う人材を含む。第三号において同じ。)であって研究開発法人又は大学等を設置する者との間で期間の定めのある労働契約(以下この条において「有期労働契約」という。)を締結したもの
 二 科学技術に関する試験若しくは研究若しくは科学技術に関する開発又はそれらの成果の普及若しくは実用化に係る企画立案、資金の確保並びに知的財産権の取得及び活用その他の科学技術に関する試験若しくは研究若しくは科学技術に関する開発又はそれらの成果の普及若しくは実用化に係る運営及び管理に係る業務(専門的な知識及び能力を必要とするものに限る。)に従事する者であって研究開発法人又は大学等を設置する者との間で有期労働契約を締結したもの
 三 試験研究機関等、研究開発法人及び大学等以外の者が試験研究機関等、研究開発法人又は大学等との協定その他の契約によりこれらと共同して行う科学技術に関する試験若しくは研究若しくは科学技術に関する開発又はそれらの成果の普及若しくは実用化(次号において「共同研究開発等」という。)の業務に専ら従事する科学技pに関する研究者又は技術者であって当該試験研究機関等、研究開発法人及び大学等以外の者との間で有期労働契約を締結したもの
四 共同研究開発等に係る企画立案、資金の確保並びに知的財産権の取得及び活用その他の共同研究開発等に係る運営及び管理に係る業務(専門的な知識及び能力を必要とするものに限る。)に専ら従事する者であって当該共同研究開発等を行う試験研究機関等、研究開発法人及び大学等以外の者との間で有期労働契約を締結したもの

2 前項第一号及び第二号に掲げる者(大学の学生である者を除く。)のうち大学に在学している間に研究開発法人又は大学等を設置する者との間で有期労働契約(当該有期労働契約の期間のうちに大学に在学している期間を含むものに限る。)を締結していた者の同項第一号及び第二号の労働契約に係る労働契約法第十八条第一項の規定の適用については、当該大学に在学している期間は、同項に規定する通算契約期間に算入しない。

(大学の教員等の任期に関する法律の一部改正)

第二条 大学の教員等の任期に関する法律(平成九年法律第八十二号)の一部を次のように改正する。
第二条第三号中「及び第六条」を「、第六条及び第七条第二項」に改める。
第七条を第八条とし、第六条の次に次の一条を加える。

(労働契約法の特例)
第七条 第五条第一項(前条において準用する場合を含む。)の規定による任期の定めがある労働契約を締結した教員等の当該労働契約に係る労働契約法(平成十九年法律第百二十八号)第十八条第一項の規定の適用については、同項中「五年」とあるのは、「十年」とする。

 2 前項の教員等のうち大学に在学している間に国立大学法人、公立大学法人若しくは学校法人又は大学共同利用機関法人等との間で期間の定めのある労働契約(当該労働契約の期間のうちに大学に在学している期間を含むものに限る。)を締結していた者の同項の労働契約に係る労働契約法第十八条第一項の規定の適用については、当該大学に在学している期間は、同項に規定する通算契約期間に算入しない。

以下の声明が同改正法律の問題点を簡潔に指摘して分かりやすい。

労働契約法の特例を設け、不安定雇用を温存、拡大する
研究開発力強化法等の改定案に反対し、廃案を求める声明

 自民党、公明党、民主党、日本維新の会、生活の党は、2013年11月29日、衆議院文部科学委員会で、自民・公明両党の議員提案による、労働契約法18条の特例を定める「研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律(以下「研究開発力強化法」という。)」及び「大学の教員等の任期に関する法律」の改定案を強行可決した。

 2012年8月3日成立、2013年4月1日施行の労働契約法18条は、有期労働契約の濫用的な利用を抑制し、労働者の雇用の安定を図ることを目的に、同一の使用者との間で有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えたときは、労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できるルールを定めている。

 ところが、研究開発力強化法等の改定案は、大学や研究機関で教育・研究に携わる有期労働契約の研究者、技術者、教員、非常勤講師について、労働者が無期転換権を行使できるようになる期間を「5年超」から「10年超」に延長する労働契約法18条の特例を設けている。そして、特例を設ける理由として、「5年超」で無期転換権の行使を認める労働契約法18条のもとでは、予め更新上限を定める方法などにより、「5年超」になる前の雇止めが頻発し、5年を超える研究プロジェクト等ができなくなることがあげられている。

 しかし、予め更新上限を定めるなどして、労働契約法18条を潜脱しようとする行為は、厳しく規制されるべきである。労働契約法18条を潜脱しようとする行為が予想されることを理由に、その行為を容認し、無期転換権の行使ができるようになる期間を「10年超」に延長するなど、本末転倒もはなはだしい改悪である。このようなことでは、大学や研究機関の有期契約の研究者、技術者、教員、非常勤講師は、長期にわたり不安定雇用のままに置かれ、さらには「10年超」になる前の雇止めも頻発しかねない。このような、何時雇止めになるかもしれない不安定雇用のもとでは、必要な人材は集まらず、教育・研究への集中も阻害され、大学や研究機関における教育・研究は、停滞し、劣化するであろう。

 労働契約法附則3項は、「施行後8年を経過後、労働契約法18条について、その施行の状況を勘案しつつ検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずる」と定めている。施行後1年もたたず、いまだ無期転換権を行使できる労働者も現れないうちに、雇用の安定を図ることを目的に定められた労働契約法18条の趣旨を骨抜きにするような特例を設けることは、およそ許されない。

 さらに、労働法制に関する政策決定は、公労使の3者構成主義に則って行われるべきである。ところが、研究開発力強化法等の改定案は、労使公益の3者からなる労働政策審議会の審議を一切経ることなく策定されたものである。このように、改定案は、踏むべき手続をまったく無視しており、この点からもとうてい容認できない。自由法曹団は、労働契約法18条の潜脱行為を容認し、大学や研究機関の有期契約の研究者、技術者、教員、非常勤講師の不安定雇用を温存、拡大する研究開発力強化法等の改定案に反対し、その廃案を強く求めるものである。

2013年12月2日
自由法曹団
団長 篠原義仁

[関連ニュース]
改正研究開発力強化法が成立

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