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2013年12月10日

京滋私大教連、中教審大学分科会組織運営部会「審議まとめ(素案)」に対する意見

京滋私大教連
 ∟●中教審大学分科会組織運営部会「審議まとめ(素案)」に対する意見

中教審大学分科会組織運営部会「審議まとめ(素案)」に対する意見


2013年11月29日
京滋地区私立大学教職員組合連合


 今回の「審議まとめ」(素案)の冒頭、「大学へのメッセージ」として「ガバナンス改革は、大学が自主的・自律的に行うべきもの。学長のリーダーシップの下で、大学自らがガバナンス改革を」との文言が付されています。しかし、大学は利潤追求を最優先の課題として、トップダウンで物事を決定する「株式会社」とは全く違う性質を有する組織です。

 大学教育では、目の前の学生実態から課題を掘り起こし、大学での学びと成長を保障する中で、日本社会を支える若者を社会に送り出すとともに、研究活動では既存の価値や社会のあり方を見つめ直し、高度な真理を探求することによって、人類の進歩と社会の発展に寄与する取り組みが進められてきました。

 それは決して独善的な取り組みではなく、70 年代以降、大学の「ユニバーサル化」が進む中で、「社会に開かれ、社会に支えられた大学づくり」に向けて、不断の努力で営まれてきたものです。特に、日本の私立大学は大学全体の 80%を占めており、70 年代に「私学の公共性」を確保する目的で私立学校振興助成法が成立し、経常費補助が行なわれるようになる中、個別私学の視野をこえて、全社会的な枠組みで社会と学生実態の変化に応じた「大学改革」が行なわれてきました。
 
 「大学改革」の主軸は、学生の自主的・集団的な学習活動や、文化・スポーツ活動の展開による学生の成長であり、それを支える教職員の真摯な取り組みがあったからこそ、他の先進諸国に比肩する高等教育への高い進学状況を作り出し、社会の各分野で活躍する優秀な人材を輩出してきました。

 他方、今日の日本社会は、行き過ぎたトップダウンと利潤追求の結果、食品表示の「誤表示」や、公共性の高い分野における安全管理の検査データ改ざんなど、市民のいのちや暮らしを脅かす重大な問題を引き起こしています。さらに、一部の私立大学においても理事会の誤った運営によって、学園の解散命令を受けるような深刻な事態に陥るところもあり、大学における「ガバナンス」のあり方は、慎重な検討を要する問題であると考えます。

 いま必要なことは、トップが示す運営方針に対して、単にその実行を請け負うだけでなく、トップが示す運営方針の客観性を検証するために、組織の構成員との間で重層的な議論を積み重ね、運営方針を練り上げることに、組織のトップに立つべき人物は尽力すべきです。そして、そのような取り組みを通じてこそ、組織の構成員にもトップの意図が十分に行きわたることになると考えます。

 今回の「審議まとめ(素案)」では、政策決定のスピード化に力点を置いた議論がなされるあまり、民間における組織運営の問題点や大学の組織特性を踏まえた検討が十分になされていないと言わざるをえません。しかも、今後の大学の組織運営に重大な影響を及ぼす問題であるにもかかわらず、今回のパブリックコメントの募集期間がわずか 10 日余りと非常に短期間であることも問題です。

 日常的に学生への対応をおこない、教育・研究の現場を支える関係者の意見を広く集約する中で、大学の特性を踏まえた組織運営のあり方を慎重に検討していただくことを強く要望します。


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