研究者の地位と権利を守るための全国的ネットワークをつくろう!

2013年12月17日

福教大学長選考で混乱 学内外委員、投票覆す

西日本新聞(2013年12月16日)

 11月に行われた福岡教育大(福岡県宗像市)の学長選考で、学内外の委員でつくる「学長選考会議」が教職員投票で得票1位となった教授を選ばず、現職を再任したことについて、教授会が「大学自治を踏みにじる」などと反発し、再審議を求める異例の事態となっていることが分かった。
 福教大によると、学長選考には現職と、新人の教育学部長の2氏が立候補。11月26日、教授や事務職員など224人による投票で、教育学部長が現職を35票上回る123票を獲得した。投票率は87・15%。しかし投票後、非公開で行われた学長選考会議で、現職の再任が決定したという。
 選考会議は学内代表5人と、宗像市長など外部の有識者5人で構成。同大の内規では、選考会議は教職員投票結果を「参考にする」と定めており、最終決定権は同会議が持つ。議長を務める前日本赤十字九州国際看護大学長の喜多悦子氏は「全委員で無記名投票し、現職が圧倒的多数で選ばれた」と説明。「選考過程に問題はない」として逆転選考の理由は明らかにしていないが、ある委員は取材に「現職の経営感覚を評価した」と語った。
 これに対し、約200人が所属する教授会は同29日、再審議などを求める決議文を選考会議に提出。少なくとも過去約40年、学内投票の結果が覆されたことはなく「教職員の意向と違う結果を出すなら、きちんとした説明が必要」「選考会議の学外委員は再任された学長が任命しており、公正さが疑われる」などの意見が出ている。2日には教職員組合が抗議声明を出し、異議を訴えるビラを学生などに配布した。

 ◇逆転選考、全国で10件超 訴訟も相次ぐ
 福教大のような「逆転選考」は国立大学が法人化された2004年以降、全国で10件超に上る。一部では国を相手取った訴訟になっており、識者は「制度の見直しが必要」と指摘する。
 文部科学省によると、学長選考会議は法人化に伴って新設された。競争力や経営感覚を、外部の視点で厳正に審査するのが目的だ。
 最終決定権は選考会議が有しており、学内投票の結果は「参考」と規定している大学が多い。
 滋賀医科、新潟、高知、北海道教育の4大学では、学長に選ばれなかった最多得票者らが学長の任命取り消しなどを求める訴訟を起こしたが、係争中を除く三つの訴訟で「違法性は認められない」などとして原告敗訴が確定している。
 中央教育審議会の部会は「大学経営は厳しさを増しており、学長には一層のリーダーシップが求められる。過度に学内の意見に偏るのは適切でない」として学内投票がそのまま反映される選考には否定的だ。
 一方、大学自治を研究する岡山大法学部の中富公一教授(憲法)は「選考会議の委員は多くが現職学長と利害関係があり公正な判断を担保できない。学内投票を尊重しなければ、教職員のやる気が損なわれかねない」としている。


|