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2013年12月24日

沖大奨学生制度、大胆な公的支援が必要だ

琉球新報(2013年12月20日 )

 沖縄大学が県内大学として初めて創設した、児童養護施設や里親家庭の高校生を対象にした奨学生制度で、第1号となる5人の合格者が決まった。年間72万円の授業料を4年間全額免除する。
 虐待などさまざまな事情で児童養護施設などで過ごす子どもたちは全国で約3万人、県内でも500人余に上る。児童福祉法に基づく制度上、18歳になると自立とみなされ、原則として高校卒業時に児童養護施設を退所しなければならず、里親委託も解除される。子どもたちが大学進学を希望しても、経済的な理由で断念する場合が多いという。
 沖大の奨学生制度は、社会的養護が必要な子どもたちに夢と希望を与えるだけでなく、子どもたちの厳しい境遇に社会の関心を向けるきっかけともなり意義は大きい。あらためて敬意を表するとともに、県内の他の大学などにも波及することを期待したい。
 一方でそれは行政が担うべき役割でもある。高等教育の付与はいわば人材への投資であり、最大の振興策であるはずだ。未来への投資として、希望する生徒全てが進学できるよう大胆に予算を配分してしかるべきだ。
 国の支援制度では、18歳の施設退所時に、「大学進学等自立生活支度費」として7万9千円が支給される。親の経済的援助が見込めない場合は特別基準が加算されるが、家賃や生活費を工面しながら多額の授業料を自力で賄うには、限界があるのは明らかだ。
 3年前のクリスマスに児童養護施設にランドセルが寄付されたことをきっかけに、全国に「タイガーマスク現象」が波及したことは記憶に新しい。裏を返せば、施設で暮らす子どもたちへの公的支援が十分ではなく、個人の寄付や民間の支援団体の善意に支えられている実態を示していよう。
 厚生労働省の調べでは、児童養護施設で暮らす生徒の大学などへの進学率は約1割にとどまり、過半数が進学する一般家庭とは大きな格差がある。
 貧困と低学力には因果関係があることが学力テストから立証されている。とりわけ沖縄の貧困率は全国最悪との調査結果もある。社会的養護が必要な子どもたちの境遇は推して知るべしだ。貧困の連鎖を絶ち切るためにも、国、県を中心に、社会全体で子どもたちの未来を閉ざさない仕組みを早急に構築する必要がある。

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