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2013年12月24日

京滋私大教連、【大会特別決議】「高等教育の発展に資する民主的な組織運営の確立を求める決議」

京滋私大教連
 ∟●高等教育の発展に資する民主的な組織運営の確立を求める決議

【第 57 回定期大会特別決議】
高等教育の発展に資する民主的な組織運営の確立を求める決議


 文部科学省中教育審議会大学分科会組織運営部会(以下「部会」)では、安倍内閣の下に設置された教育再生実行会議の「第 3 次提言」で、大学における「ガバナンスの改革」の必要性に言及していることを踏まえ、今年 6 月から 7 回にわたって大学における「ガバナンス改革」をめぐる審議が行なわれてきました。今回、「部会」で取りまとめられた「審議まとめ」では、「学長のリーダーシップの強化」を軸にした「ガバナンス改革」が強調されていますが、大学の「ガバナンス」について明確な定義がされておらず、「ガバナンス改革」「ガバナンス機能」「ガバナンス体制」「ガバナンスの仕組み」など、用例に幅があり意味合いも明瞭でないため、「ガバナンス」の定義が極めて曖昧になっています。その主たる原因は、これまで「大学の自治」の中心的な役割を果たしてきた「教授会」ないし「教員組織」に対する一方的な認識にあります。「審議まとめ」によれば、教授会の役割は今後「教育課程の編成」「学生の身分に関する審査」「学位授与」「教員の研究業績等の審査」等に限定されるのみならず、それを学長の考慮事項にとどめようとしています。

 学長が責任ある決定を下すことが重大な責務であることは言うまでもありませんが、学校教育法第92 条 3 項で「学長は、校務をつかさどり、所属職員を統督する」と規定していることをもって、学長が「特に高い立場から教職員を指揮監督することを示すものと解されている」と断定するのは、あまりに一面的な解釈と言わざるをえません。

 大学において重要なことは、真に優れた人物を学長に選任する仕組みを確立することであり、選任された学長がリーダーに相応しい能力を発揮できるかどうかが重要になってきます。今回の「審議まとめ」では、学長個人の力量を過信せず、「学長補佐体制の強化」にも言及していますが、学長の個人的な関係の範囲で補佐するメンバーを任命するようなことになれば、真に責任ある判断を下す保証にはなりえません。

 大学は利潤追求を最優先の課題として、トップダウンで物事を決定する「株式会社」とは全く違う性質を有する組織です。大学教育では、目の前の学生実態から課題を掘り起こし、大学での学びと成長を保障する中で、日本社会を支える若者を社会に送り出すとともに、研究活動では既存の価値や社会のあり方を見つめ直し、高度な真理を探求することによって、人類の進歩と社会の発展に寄与する取り組みが進められてきました。その中心に教職員の働きがあったことを忘れてはなりません。

 「大学改革」の主軸は、学生の自主的・集団的な学習活動や文化・スポーツ活動の展開による学生の成長と、それを支える教職員の真摯な取り組みであり、そうした取り組みがあったからこそ、高等教育への高い進学状況を作り出し、社会の各分野で活躍する優秀な学生を輩出してきました。

 今日の企業社会における行き過ぎたトップダウンと利潤追求の姿勢は、食品表示の偽装問題や、公共性の高い分野における安全管理の検査データの改ざん問題など、国民のいのちや暮らしを脅かす重大な問題を引き起こしています。さらに、一部の私立大学では理事会の誤った組織運営によって、学園の解散命令を受ける深刻な事態に陥る大学さえあります。

 今、必要なことは、トップが組織の構成員との間で重層的な議論を積み重ね、その運営方針を練り上げるという基本的な方向性を確立することです。今回の「審議まとめ」は、政策決定のスピード化に力点を置いた議論がなされるあまり、民間における組織運営の問題点や大学の特性を踏まえた検討が十分になされていないと言わざるをえません。

 学校法人の公共性を担保し、高等教育の真の発展に資する包括的な「ガバナンス」のあり方については、教育・研究の現場を支える教職員をはじめとした大学各層の意見を広く集約して検討を進めるとともに、大学の特性を踏まえた民主的な組織運営の確立を求めます。

2013 年 12 月 14 日
京滋地区私立大学教職員組合連合第 57 回定期大会

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