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2013年12月23日

自由法曹団、派遣労働を恒常的・永続的な制度にし、労働者派遣法を大改悪する労働政策審議会労働力需給制度部会の報告書骨子案(公益委員案)に反対する声明

自由法曹団
 ∟●派遣労働を恒常的・永続的な制度にし、労働者派遣法を大改悪する労働政策審議会労働力需給制度部会の報告書骨子案(公益委員案)に反対する声明

派遣労働を恒常的・永続的な制度にし、労働者派遣法を大改悪する
労働政策審議会労働力需給制度部会の報告書骨子案(公益委員案)に反対する声明


1 2013年12月12日に開催された労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会において、公益委員は、「労働者派遣制度の改正について(報告書骨子案(公益委員案))」を提示した。労働政策審議会は、年内にも骨子案にそった答申をまとめ、安倍内閣は、年明けの通常国会に労働者派遣法の「改正」案を提出する予定と伝えられている。

2 骨子案は、「専門26業務の区分及び業務単位での期間制限を撤廃し、有期雇用の派遣労働者の派遣先の同一の組織単位(課等)における派遣受入可能期間は、最長3年とする。この場合、派遣先は、同一の事業所において3年を超えて派遣労働者を受け入れてはならないものとするが、事業所の過半数労働組合もしくは過半数代表者の意見を聴取すれば、引き続き派遣労働者を使用できる。」、「無期雇用の派遣労働者、60歳以上の高齢者、有期プロジェクト業務等への派遣には、派遣期間制限を一切設けない。」としている。
上記のとおり、骨子案では、有期雇用の派遣労働者の場合でも、派遣先は、3年ごとに派遣受入の組織単位(課等)を換えれば、同一の派遣労働者を使用し続けることができる。また、同一の組織単位(課等)への派遣でも、派遣労働者を入れ換えれば永続的に派遣労働者を使用できる。派遣先の事業所単位の期間制限にとって、事業所の過半数労働組合もしくは過半数代表者の意見聴取は、何らの
歯止めにならない。

3 骨子案の提示する制度の下では、有期雇用の派遣労働者は、3年ごとに組織単位(課等)を換えて派遣使用されるか、あるいは3年ごとに派遣切りされるか、いずれかの取扱いを受けることになる。無期雇用の派遣労働者は、何らの制限なく、永続的に派遣使用されることになる。骨子案の提示する制度の下では、派遣先は、派遣労働者を恒常的業務に従事させ、永続的に使用できることになる。このような制度の下では、無期雇用の派遣労働者はもとより、有期雇用の派遣労働者であっても、直接雇用される契機や機会はまったくなくなり、一生派遣労働者のままの地位に置かれることになる。
骨子案は、「派遣先の常用労働者との代替が起こらないよう、派遣労働は臨時的・一時的な利用に限ることを原則とする。」、「派遣労働者の派遣先での正社員化を推進するための措置を講ずる。」と言っている。しかし、骨子案の提示する制度の下では、労働者派遣における常用代替防止原則はないがしろにされ、派遣先は、派遣労働者を正社員化する動機や契機がなく、派遣労働者のまま使用し続けることになる。低賃金・不安定雇用の最たるものである労働者派遣が増大、蔓延し、派遣労働者は派遣先の正社員になる道を永久に閉ざされてしまうことになる。

4 骨子案は、「派遣元は、3年の上限に達する有期雇用の派遣労働者に対し、①派遣先への直接雇用の依頼 ②新たな就業機会(派遣先)の提供 ③派遣元における無期雇用 ④その他、安定した雇用の継続が確実に図られる措置のいずれかの雇用安定措置を講ずるものとする。」としている。しかし、これらの雇用安定措置は、従来ほとんど実行されておらず、その実効性を期待することはできない。
 骨子案は、派遣労働者の処遇について、均等待遇原則を採用せず、「派遣労働者の賃金について、均衡が図られたものとなるために派遣元及び派遣先が行うことが望ましい事項を指針に規定する。」などと均衡待遇原則を求めるにとどまっている。これでは、派遣労働者に対する待遇格差は継続し、低賃金・不安定雇用の労働者派遣はますます増大することになる。

5 骨子案は、「登録型派遣・製造業務派遣」について、「経済活動や雇用に大きな影響が生じる可能性があることから、禁止しない。」としている。企業の経済活動の便宜のため労働者の雇用の安定を犠牲にする提言であり、とうてい容認できない。
 さらに重大なことに、骨子案は、「無期雇用派遣労働者に対する特定目的行為を可能とする。」と、派遣労働者に対する事前面接等を容認している。しかし、事前面接等の特定目的行為の下での労働者派遣は、職業安定法44条で禁止されている労働者供給事業そのものであり、とうてい許されない。

6 自由法曹団は、派遣労働を恒常的・永続的な制度にし、労働者派遣法を大改悪する労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会の報告書骨子案(公益委員案)に反対し、登録型派遣・製造業務派遣の全面禁止、労働者派遣の臨時的・一時的業務への限定、業務単位での派遣期間制限の厳格化、違法派遣の場合の正社員と同一の労働条件での直接雇用みなし制度、派遣労働者と派遣先の正社員との均等待遇等の労働者派遣法の抜本改正を強く要求するものである。

2013年12月18日
自由法曹団
団長 篠原 義仁

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