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2013年12月29日

首都圏非常勤講師組合、早稲田大学を偽装請負容疑で東京労働局に追加申立

首都圏非常勤講師組合
 ∟●早稲田大学の偽装請負疑惑に関する追加の申し立て

「偽装請負」(労働者派遣法違反ないし職業安定法違反)についての調査および是正勧告に関する申立書(2013年(平成25年)10月23日付)にかかわる追加の立証資料提出の件


2013年(平成25年)11月27日


厚生労働大臣
田村 憲久 殿

東京労働局長
伊岐 典子 殿


〒170-0005 東京都豊島区南大塚2-33-10 東京労働会館5階
申告者 首都圏大学非常勤講師組合
執行委員長 松村比奈子
同 早稲田ユニオン分会
分会長 大野 英士


〒169-0071 東京都新宿区戸塚町1 丁目 104
被申告者 学校法人 早稲田大学
代表者理事長 鎌田 薫


〒162-0045 東京都新宿区馬場下町5 番地 早稲田駅前ビル 3F
被申告者 株式会社早稲田総研インターナショナル
代表者代表取締役社長 天野 紀明

第1 追加の立証資料提出の趣旨
1 被申告者らが学校法人早稲田大学との間で業務委託契約(請負)の下でおこなっているチュートリアル・イングリッシュの実態が「偽装請負」(労働者派遣法違反ないし労働者供給事業の禁止)に該当することを具体的に立証する資料を提出し、貴労働局によるさらなる厳密な調査を求める。

2 被申告者らに対して、チュートリアル・イングリッシュ担当講師の「偽装請負」が確認された場合には、それを是正するように、指導、助言、勧告することを求める。

第2 申告の理由
1 当事者
①被申告者学校法人早稲田大学(以下「早稲田大学」という。)は、東京都新宿区戸塚町に本部を置く学校法人である。

②被申告者株式会社早稲田総研インターナショナル(以下「早稲田総研」という。)は、東京都新宿区馬場下町に本社を置く株式会社である。

2 契約形態
業務委託契約である。
早稲田大学は、2002 年(平成 14 年)から同大学での英語授業について、チュートリアル・イングリッシュと称する英語の授業を正規のカリキュラムに組み入れた。
当初は、早稲田大学に属する早稲田大学オープン教育センターが早稲田大学インターナショナル社(2000年10月設立、早稲田大学が51%出資)に語学教育を委託した。同社の派遣する「教員」(チューターと呼ばれる)
は早稲田大学の担当教授(コーディネーター)の下で講義を行っていた。
現在は、早稲田大学と早稲田総研(2004 年 8 月 2 日設立)との間で業務委託契約が締結され、その下で同授業が行われている。早稲田大学の説明によれば、現在「チュートリアル・イングリッシュの科目総数は 4 学期で 410 科目クラス、受講生総数は春学期・夏季集中でのべ 3,385 名、本学の担当教員は 4 学期でのべ 12 名」であり、「秋学期・春季集中の受講生は」現在集計中とされている。
外部講師(チューター)と早稲田総研との間の契約は有期雇用契約である。

3 「大学が当該大学以外の教育施設等と連携協力して授業を実施すること」にかかわる文部科学省管轄の法律および行政指導
この点に関しては、学校教育法をはじめ諸法律および以下に示す二つの行政指導に関する文書によって、早稲田総研が実施する本件チュートリアル・イングリッシュについても基本的には学校法人早稲田大学の関与が義務付けられている。
とくに、「LEC東京リーガルマインド大学」(東京・千代田区)の問題がきっかけとなり、いわゆる「丸投げ」について一定の歯止めをかける必要から大学設置基準の一部改正(Bの「通知」)が行われた経緯がある。
(証拠資料 ①から⑤まで )

A)「大学において請負契約等に基づいて授業を行うことについて
文部科学省 大振―8 平成 18 年 1 月」(証拠資料 ⑥)
学校教育法の規定上、「大学の『教員』にも、学長の権限と責任の下に授業を行うことが求められている。」
「近時、大学と企業が『請負契約』を締結し、企業に雇用されている者が、当該契約に基づき『外部講師』として大学において授業を行う(単独で/授業を行う教員の補助者として)ような構想が散見されるが、この場合では、以下の諸点に留意すべきであるので、その具体的な取扱については、文部科学省及び地方労働局等の確認を得ることが望ましい。」
以下の点とは、1)大学教員の位置づけ 2)請負契約の性質、である。
「一般的には、請負契約による講師は、学長の権限と責任の下において、自ら授業を行うことが困難であり、その役割は、授業を行う教員を補助する業務に限定される可能性が高い。」
B)「大学設置基準等の一部を改正する省令等の施行について(通知)19文科高第 281 号 平成 19 年 7 月 31 日」 (証拠資料 ⑦)
① 授業の内容、方法、実施計画、成績評価基準及び当該教育施設等との役割分担等の必要な事項を協定書に定めている。
② 大学の授業担当教員の各授業時間ごとの指導計画の下に実施されている。
③ 大学の授業担当教員が当該授業の実施状況を十分に把握している。
④ 大学の授業担当教員による成績評価が行われる。
など、当該大学が主体性と責任を持って、当該大学の授業として適切に位置づけて行われることが必要であることに留意すること。

4 本件チュートリアル・イングリッシュの実態
1)「チュートリアル・イングリッシュの概要」によれば、テキストは早稲田総研発行の独自テキスト「リーチ・アウト」を使用する。
(証拠資料 ⑧ )
チューターの仕事は「学生の成績をつけなければ」ならないことであり、4人分の評価と1件のコメントを書かなければならないことである。とくに成績評価の基準は、「できること」、出席、予習、授業への参加、チューターのコメントへの返答ということである。
(証拠資料 ⑨ 、英語版は資料 ⑩ )
2)チューターの労務管理(指揮命令)は実際だれがやっているのか
実際の労務管理(指揮命令)は、早稲田大学専任教員である中野美知子 (チュートリアルコーディネーター)である。(証拠資料 ⑪ ⑫ ) 実際半期に一回、オブザベーション(授業風景をビデオ撮影し、シニア チューターが授業を評価。)がある。当然、その場合、シニアチュータ ーは、専任教員である中野美知子(チュートリアルコーディネーター) の管理(指揮命令)下にあることになり、指揮命令系統に組み込まれ、 かつ日常的に労務管理されていることは明らかである。
(証拠資料 ⑬ )
3)チューターとは実際インストラクター(教員)である。
早稲田大学では、通常、「インストラクター」の職務内容は「『統括するセンター常勤教員(以下『コーディネーター』という。)の指示に従い』とされている。
(証拠資料 ⑭ ⑮ ) インストラクターの面接も管理者がおこなう。(証拠資料 ⑯ )
4)学生に対するオリエンテーション 担当教員すなわち、専任教員である中野美知子(チュートリアルコーディネーター)によるオリエンテーションビデオを視聴することになっている。(証拠資料 ⑰ )
5)成績発表
成績発表は所属学部がおこなうこととされている。 (証拠資料 ⑱ )

6 問題点の整理
 上記の事実の通り、早稲田大学は、早稲田総研との間の業務委託契約(請負)により、外部講師に大学の正規の必修科目であって、しかも有料(43000円を受講生が負担する)の形態で、さらに文部科学省も想定していない授業担当のしかた、すなわち 1 学期あたり 100 科目クラス以上を 3 人の教員が単位認定するなど教育の最終責任を負うかたちで、英語(英会話)教育を行っている。実際には、他の非常勤講師と同様に日常的に雇用管理といえる状態で労務管理がなされている。
他方、学校法人が独自におこなっているのは、オリエンテーションと成績発表しかないのではないかという疑いを持たざるを得ない。 業務請負という名目ではあるが、その実態は早稲田大学からの「在籍出向」、「兼業」あるいは早稲田大学の業務を遂行する専任教員らが外部講師に指揮命令等を行っており、業務委託契約(請負)には該当せず、いわゆる「偽装請負」(労働者派遣法違反ないし職業安定法違反)である。
 なお、早稲田大学は、申告者組合との団交の場において「チュートリアル・イングリッシュに関しては、文部科学省の指導により契約を結んでいるので偽装請負(派遣法違反)ではない」と回答した。
 前回の団交(2013 年 10 月29 日)では、早稲田大学は貴労働局に出向いて説明をしたと回答したが、なぜかそれがいつのことなのか日時については回答を拒否した。

 結論をいえば、チュートリアル・イングリッシュは形式的には請負契約に基づいておこなわれているが、実質的には日常的に学校法人早稲田大学の専任教員による指揮命令下で業務遂行されている。

第3 結論
 上記のとおり指摘してきたように、申告者は、早稲田大学が早稲田総研との間で締結した業務委託契約は実態においていわゆる「偽装請負契約」であり、労働者派遣法違反ないし職業安定法違反(労働者供給事業の禁止に該当する)のものであり、これらの事実について貴労働局が厳密なる調査を行った上で、必要な是正措置を至急執ることを求めて申告をするものである。

以上


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