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2014年01月09日

自由法曹団、労働者派遣法を大改悪する派遣法を大改悪する公益委員案を撤回し、派遣法の抜本改正にむけて徹底審議することを求める

自由法曹団
 ∟●労働者派遣法を大改悪する派遣法を大改悪する公益委員案を撤回し、派遣法の抜本改正にむけて徹底審議することを求める

労働者派遣法を大改悪する派遣法を大改悪する公益委員案を撤回し、 派遣法の抜本改正にむけて徹底審議することを求める

2014年1月8日


厚生労働大臣
田 村 憲 久 殿
労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会長
鎌 田 耕 一 殿

東京都文京区小石川2-3-28
DIKマンション小石川201号
TEL03-3814-3971
FAX03-3814-2623
自由法曹団
団 長 篠 原 義 仁



1 公益委員案をめぐる審議の状況 公益委員案をめぐる審議の状況
(1)2013年12月12日の労働力需給制度部会
 2013年12月12日に開催された労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会において、公益委員は、唐突に、「労働者派遣制度の改正について(報告書骨子案(公益委員案))」を提示した。
 この公益委員案に対して、使用者委員は「大変評価できる。」(高橋弘行・経団連労働政策本部長)と賛同したが、労働者委員は「無期雇用でもリーマン・ショックで9割以上が雇い止めされた。労組の意見聴取では実効性あるチェックにならない。」(新谷信幸・連合総合労働局長)、「派遣が例外にとどまらなくなり、使い捨てにされてしまう。」(清水謙一・全建総連書記次長)と反対した。
(2)2013年12月25日の労働力需給制度部会
 次いで、12月25日に開催された労働力需給制度部会で、鎌田耕一部会長は、「部会開催に先がけて、年内の取りまとめに向け、労働者側委員、使用者側委員とそれぞれ議論を行ったが、意見の隔たりが大きく、取りまとめにはいっそうの調整が必要だ。今後の進め方について意見があれば出していただきたい。」と表明した。
 これに対し、労働者委員は、「①有期雇用派遣の期間制限のあり方で、過半数代表者の意見聴取だけになっているが、これでは実効的なチェックができない懸念がある。②無期雇用派遣の労働者の雇用が必ずしも安定しているわけではなく、違法な解雇を回避する手立てが必要だ。③派遣労働者の処遇改善については、均等待遇を求めてきたが、均衡待遇となっており、納得できない。」(新谷信幸・連合総合労働局長)と、公益委員案に反対し、引き続き審議することを要求した。使用者委員は、「次回、公益委員案に肉付けして合意できる内容をお示しいただきたい。」(高橋弘行・経団連労働政策本部長)と発言している。
(3)徹底審議の重要性
 以上のとおり、公益委員案については労働者委員の強い反対があり、しかもその反対の理由は合理的である。このような状況で審議を打ち切り、公益委員案に基づいて労働力需給制度部会の報告書をまとめることは、とうてい許されない。
 以下、その理由を述べる。

2 労働者派遣を恒常的・永続的な制度にし、労働者派遣法を大改悪する公益委員案
(1)労働者派遣を恒常的・永続的な制度に大改悪
ア 歯止めにならない過半数労働組合もしくは過半数代表者の意見聴取
 公益委員案は、「専門26業務の区分及び業務単位での期間制限を撤廃し、有期雇用の派遣労働者の派遣先の同一の組織単位(課等)における派遣受入可能期間は、最長3年とする。この場合、派遣先は、同一の事業所において3年を超えて派遣労働者を受け入れてはならないものとするが、事業所の過半数労働組合もしくは過半数代表者の意見を聴取すれば、引き続き派遣労働者を使用できる。」、「無期雇用の派遣労働者、60歳以上の高齢者、有期プロジェクト業務等への派遣には、派遣期間制限を一切設けない。」としている。
 上記のとおり、公益委員案では、有期雇用の派遣労働者の場合でも、派遣先は、3年ごとに派遣受入の組織単位(課等)を換えれば、同一の派遣労働者を使用し続けることができる。また、同一の組織単位(課等)への派遣でも、派遣労働者を入れ換えれば永続的に派遣労働者を使用できる。
 派遣先の事業所単位の期間制限にとって、事業所の過半数労働組合もしくは過半数代表者の意見聴取は、聴取すればそれで足りるとされるものであり、まったく歯止めにならない。
イ 常用代替防止原則の廃棄
 公益委員案は、「派遣先の常用労働者との代替が起こらないよう、派遣労働は臨時的・一時的な利用に限ることを原則とする。」、「派遣労働者の派遣先での正社員化を推進するための措置を講ずる。」と言っている。
 しかし、公益委員案の提示する制度の下では、派遣先は、派遣労働者を恒常的業務に従事させ、永続的に使用できるのであり、労働者派遣における常用代替防止原則はないがしろにされてしまう。このような制度の下では、無期雇用の派遣労働者はもとより、有期雇用の派遣労働者であっても、直接雇用される契機や機会はまったくなくなり、一生派遣労働者の地位に置かれることになる。
 低賃金・不安定雇用の最たるものである労働者派遣が増大、蔓延し、派遣労働者は派遣先の正社員になる道を永久に閉ざされてしまうことになる。
ウ 実効性のない雇用安定措置
 公益委員案は、「派遣元は、3年の上限に達する有期雇用の派遣労働者に対し、3 ①派遣先への直接雇用の依頼 ②新たな就業機会(派遣先)の提供 ③派遣元における無期雇用 ④その他、安定した雇用の継続が確実に図られる措置のいずれかの雇用安定措置を講ずるものとする。」としている。
 しかし、これらの雇用安定措置は強制力がなく、また、従来、①派遣先への直接雇用、③派遣元における無期雇用はほとんど実行されておらず、その実効性には大きな疑問がある。
(2)常用代替防止原則を踏みにじるキャリアアップ措置
 公益委員案は、一方で、派遣先は派遣労働者を恒常的業務に従事させ、永続的に使用できるとしながら、他方で、派遣元と派遣先が協力して、派遣労働者のキャリアアップ措置を実施すべきとしている。派遣労働者のままでキャリアをアップさせ、正社員と同様の恒常的業務に従事させようという考えである。常用代替防止原則を踏みにじるキャリアアップ措置であり、とうてい容認できない。
 派遣労働者のキャリアアップ措置は、派遣労働者の正社員化のためのものであることを明確にすべきである。
(3)実効性のない均衡待遇原則、均等待遇原則の採用こそ重要
 公益委員案は、派遣労働者の処遇について、均等待遇原則を採用せず、「派遣労働者の賃金について、均衡が図られたものとなるために派遣元及び派遣先が行うことが望ましい事項を指針に規定する。」などと均衡待遇原則を求めるにとどまっている。
 しかし、均衡待遇原則の下では、派遣労働者に対する待遇格差は継続し、低賃金・不安定雇用の労働者派遣はますます増大することになる。貧困と格差の拡大は、派遣労働者の労働条件に最も深刻にあらわれている。この現状を是正するためには、派遣先の正社員との均等待遇原則の採用こそ重要である。
(4)労働者犠牲の登録型派遣・製造業務派遣の全面容認
 公益委員案は、「登録型派遣・製造業務派遣」について、「経済活動や雇用に大きな影響が生じる可能性があることから、禁止しない。」としている。
 しかし、登録型派遣は、派遣先からの注文があってはじめて派遣元は派遣労働者と派遣労働契約を締結するのであり、派遣元は、雇用主としての雇用責任をほとんど果たさない。製造業務派遣では、労働災害と労災かくし、派遣切り等が横行している。これらの実態からして、登録型派遣・製造業務派遣の全面禁止が要請されるのである。
 公益委員案は、企業の経済活動の便宜のために、労働者の雇用と労働条件を犠牲にする提言であり、許されない。
(5)特定目的行為まで容認
 公益委員案は、「無期雇用派遣労働者に対する特定目的行為を可能とする。」と、派遣労働者に対する事前面接等を容認している。
 しかし、事前面接等の特定目的行為の下での労働者派遣は、職業安定法44条で禁止されている労働者供給事業そのものであり、とうてい許されない。

3 公益委員案及び労働者派遣法の抜本改についての徹底審議の重要性
(1)公労使の参加する労働政策審議会での徹底審議の重要性
 ア 労働政策審議会における公労使三者構成の意義・役割
 厚生労働省は、労働政策審議会における公労使三者構成の意義・役割について、下記のように説明している。


 「労使参加の下での政策決定―労働現場のルールは、現場を熟知した当事者である労使が参加して決めることが重要となります。国際労働機関(ILO)の諸条約においても、雇用政策について、労使同数参加の審議会を通じて政策決定を行うべき旨が規定されるなど、数多くの分野で、公労使三者構成の原則をとるように規定されています。そのために、労働分野の法律改正等については、労働政策審議会(公労使三者構成)における諮問・答申の手続が必要とされています。」
イ 労働者委員の反対を無視し、押し切って報告書をまとめることは許されない
「1 報告書骨子案(公益委員案)をめぐる審議の状況」で述べたように、現在、労働者委員は、公益委員案に反対している。しかも、その反対理由は、「無期雇用でもリーマン・ショックで9割以上が雇い止めされた。労組の意見聴取では実効性あるチェックにならない。」(新谷信幸・連合総合労働局長)、「派遣が例外にとどまらなくなり、使い捨てにされてしまう。」(清水謙一・全建総連書記次長)等、極めて合理的である。
 労働者委員の合理的な理由に基づく反対がある中で、その反対を無視し、押し切って労働力需給制度部会の報告書をまとめることは、上記の労働政策審議会における公労使三者構成の意義・役割に反する行為であり、とうてい許されない。
(2)公益委員案の可否及び労働者派遣法の抜本改正の必要性について徹底審議することが重要
 ア 労働者派遣法の抜本改正の重要性
 自由法曹団は、派遣労働を恒常的・永続的な制度にし、労働者派遣法を大改悪する労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会の報告書骨子案(公益委員案)に反対し、その撤回を要求する。
 自由法曹団は、登録型派遣・製造業務派遣の全面禁止、労働者派遣の臨時的・一時的業務への限定、業務単位での派遣期間制限の厳格化、違法派遣の場合の正社員と同一の労働条件での直接雇用みなし制度、派遣労働者と派遣先の正社員との均等待遇等の労働者派遣法の抜本改正を強く要求する。
イ 徹底審議こそ重要
 いま、労働政策審議会労働力需給制度部会に求められていることは、労働者委員の反対を押し切って、公益委員案に基づいて報告書をまとめることではない。
 広く、派遣労働者、労働力需給制度部会に労働者委員を出していない労働組合の代表者、法律家団体の代表者等の意見を聞いて、報告書骨子案としての公益委員案の可否と公益委員案の対極にある上記労働者派遣法の抜本改正の必要性を検討することこそ、労働力需給制度部会に求められている。

以上

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