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2014年01月17日

大学教授会、役割を制限し学長権限強化 文科省が検討

毎日新聞(2014年01月16日)

 文部科学省は、あいまいさがあるとされる大学の教授会の審議事項を明確化して、役割を事実上制限するため、学校教育法改正に向けた検討を始めた。教授会については、大学の経営に関する部分まで審議したり改革に異論を唱えたりするケースがあるなど「学長のリーダーシップを阻害している」との指摘があり、中央教育審議会なども見直しの必要性を指摘している。文科省は今月24日に召集される通常国会の期間中に、改正案を提出したい考えだが、大学関係者からは「学問の自由が失われかねない」と懸念する声が上がっている。

 学校教育法は「大学には、重要な事項を審議するため、教授会を置かなければならない」とし、国公私立大に教授会の設置を義務付けている。具体的には学生の入学や退学、留学などのほか、卒業について審議し、最終的には学長が決定する。文科省などによると「重要な事項」の範囲があいまいなため、教授会が教育関連のみならず、大学の経営に関する部分まで審議しているケースがあるという。また、入試制度の見直しなど、大学全体で取り組みたい施策に対し、学部ごとに設置された教授会の足並みがそろわない場合、結果的に学長がリーダーシップを発揮できない事態になる。

 教授会の役割については現在、中教審大学分科会組織運営部会で協議中。昨年12月に公表された「審議まとめ案」では、教授会が審議すべき事項として、教育課程の編成▽学生の身分に関する審査▽学位授与▽教員の教育研究業績等の審査??など内容を具体的に挙げており、改正案もこれに沿った内容になる見通し。解釈の余地をなくし、教授会の役割を事実上制限する。

 文科省は当初、大学関係者の反発に配慮し、教授会の再定義については省令で対応する方針だった。しかし、国際競争力の向上や留学促進、社会への貢献度アップなど、改革のスピードを速めるためには、学長により強い権限を集める必要があり、抜本的な「教授会改革」は避けられないとし、省令よりも拘束力の強い法改正が必要と判断した。

 文科省は通常国会に十数本の法案を提出する予定で、学校教育法の改正案もその中に含まれる方向。16日に開かれた自民党の文部科学部会でも説明された。【福田隆】

◇教授会

 大学の学部や研究科に設けられる機関で、学校教育法93条で設置が義務付けられている。教授で構成されるのが基本だが、准教授や専任講師も加えることができ、大学の教育課程や人事、学生関連の事項を審議する。教授会の審議を経て、学長が最終決定する。私立大では学校法人の理事会があり、教授会とは別の組織。最終決定権は理事会が持つ。

 ◇名古屋大大学院の中嶋哲彦教授(教育行政学)の話

 大学を運営するときに人事と予算は切り離すことができない。教授会の権限で、予算など経営的な事項を制限すれば、研究なども阻害され学問の自由が失われかねない。教授会の位置付けは現状で良い。

 ◇昨夏に教授会を学長の諮問機関とした追手門学院大(大阪府茨木市)の坂井東洋男(とよお)学長の話

 教授会の権限を「教育」と「研究」に特化したことで、教員が研究に集中できるようになった。そのためか、科学研究費補助金の申請件数が増加し、教員や授業に対する評価もスムーズに進み始めた。他大学からのヒアリングも増えている。

◇名城大大学院の中島英博准教授(高等教育論)の話

 経営手腕があるなど適任者が学長になり、権限が集中されるなら円滑な大学運営が期待できるはずだ。しかし、学部長も持ちまわりで選ばれ、学長も経営手腕などによって選出されていない現状をみると、法改正しても即座に大学の経営改革につながるとは考えにくい。


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