研究者の地位と権利を守るための全国的ネットワークをつくろう!

2014年02月05日

文部科学省が大学中退実態把握へ、その問題点は?

マイナビニュース [2014/02/04]

 文部科学省が、大学中退者の実態調査に乗り出す方針であることが明らかとなりました。高校中退者については以前からフォローが行われてきましたが、大学中退者についてはほとんど実態が把握されていません。大学中退者の存在にはどのような問題があるのでしょうか?

 OECD(経済協力開発機構)による調査では日本の大学における中退率は10%と他のOECD諸国よりも低い数字となっています。文部科学省では正式な統計を取っていませんが、入学者数と卒業者数の差からおおよその中退者は把握することが可能です。2013年度に大学を卒業した人は約55万人ですが、4年前の入学者数は約60万人となっています。中退以外の理由で卒業できなかった人もいますから、あくまで概算ですが5万人程度が途中で退学している計算になります。入学者数に対する割合いは8.3%ですから、OECDの数値ともそれほど違っていません。おおざっぱにいえば、日本では8%から10%の大学生が中途退学していると考えてよいでしょう。

 諸外国の大学は入学はたやすく卒業が難しいのが一般的ですから、日本の中退率が平均より低いといっても同じ条件で比較することはできません。本来は卒業できる可能性が高い人が中退しているわけですから、やはり何らかの問題があると考えるのが妥当でしょう。

 学歴が何を意味しているのかについては学術的な見解が分かれており、現在身につけているスキルを証明するものという考え方と、将来のポテンシャルを示すものであるという考え方の2種類があります(人的資本理論と仕事競争モデル)。日本では多くの場合、学歴は今後のポテンシャルの指標として機能しています。それはそれでよいのですが、ここに新卒一括採用、年功序列、学歴主義、終身雇用という日本型の雇用慣行が加わってしまうと、やっかいな問題を引き起こします。

 大卒者は大卒者としてのポテンシャルで採用されており、高卒者は高卒者としてのポテンシャルで採用されています。多くの企業において高卒者の昇進速度と大卒者の昇進速度には、仕事の成果に関係なく違いを設けており、一旦大学に入った人を高卒枠であまり採用したがりません。このため、途中で学業を断念した人には、実質的に行き場がなくなってしまうのです。

 労働政策研究・研修機構による調査では、大学中退者の6割がパートやアルバイトなどの非正規労働に従事しています。この数値は中卒・高校中退者とほぼ同じ水準となっており、就職先がなかなか見つからないという状況を反映しています。中退者に良好な就職先がないことについては、自己責任という指摘もありますが、硬直化した労働市場という外的要因も無視できないのです。中退させないための工夫をすると同時に、労働市場をもっと柔軟にし、様々なキャリアの人が平等に機会を得られるようにするための仕組みも必要となるでしょう。


|