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2014年02月21日

自由法曹団、「有期労働契約の無期転換ルールの特例を提言する労働政策審議会の建議に反対する声明」

自由法曹団
 ∟●「有期労働契約の無期転換ルールの特例を提言する労働政策審議会の建議に反対する声明」

有期労働契約の無期転換ルールの特例を提言する労働政策審議会の建議に反対する声明

1 労働政策審議会は、2014年2月14日、田村憲久厚生労働大臣に対し、労働契約法18条に規定された有期労働契約の無期転換ルールの特例等について建議した。安倍内閣は、この建議に基づいて、労働契約法18条の特例を定める法案を作成し、今通常国会でその成立を図り、2015年4月からの施行をめざすとしている。
2 2012年8月3日成立、2013年4月1日施行の労働契約法18条は、有期労働契約の濫用的な利用を抑制し、労働者の雇用の安定を図ることを目的に、同一の使用者との間で有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えたときは、労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できるルールを定めている。
 これに対し、労働政策審議会の建議は、この無期転換ルールの特例として、「一定の期間内に完了する業務に従事する高収入かつ高度な専門的知識、技術又は経験を有する有期契約労働者」について、労働者が無期転換権を行使できるようになる期間を「5年超」から「10年超」に延長しようとするものである。また、「定年後引き続いて雇用される有期契約労働者」について、同一の事業主等に継続して雇用されている期間は、無期転換権発生の根拠になる通算契約期間に算入しないとするものである。
3 しかし、通常、5年を越えるような業務は、臨時的・一時的業務であるとはとうてい言えない。「5年超」の期間でも長すぎるのに、この特例が適用されれば、当該労働者は、「10年超」にならない限り、有期のままでの働き方を強いられることになる。さらに、長期にわたって働いたのにもかかわらず、「10年超」になる前に雇止めされる危険もある。このことは、当該労働者が高収入かつ高度な専門的知識、技術又は経験を有する労働者であったとしても変わりはない。
 また、定年後引き続いて雇用される有期契約労働者であっても、有期労働契約が反復更新されて「5年超」になった時には無期転換権を与えるのが当然である。定年後の継続雇用労働者だからといって、不安定雇用を強いられる謂れはない。
 建議は、有期契約労働者の雇用をますます不安定にするものであって、とうてい容認できない。
4 そもそも、労働契約法18条は、施行後1年もたっておらず、いまだ無期転換権を行使
できる労働者は現れていない。無期転換権行使の実績もなく、その実情の検討もないなかで同条の特例を設けるなど、極めて異常な立法作業である。労働者の雇用の安定を図るという同条の立法目的を骨抜きにする建議であり、とうてい許されない。
5 労働政策審議会の建議は、1か月半程度の審議で、労働者代表委員の「すべての労働者に適用されるものに特例を設けることは慎重であるべきだ。」との意見を押し切って出されたものである。今通常国会に特例法案を提出するために、労働者代表委員の意見を押し切り、審議を短期間で打ち切るなど、手続的にも不当である。
6 自由法曹団は、有期労働契約の無期転換権ルールの特例を提言する労働政策審議会の建議に反対し、その撤回を求め、今通常国会において本建議に基づく労働契約法18条の改悪をしないよう、強く要求するものである。

2014年2月20日
自由法曹団
団 長 篠原義仁

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