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2014年03月22日

日本科学者会議、大学の自治を否定し、大学を国策遂行機関化する学校教育法第93条改悪に反対する

日本科学者会議
 ∟●大学の自治を否定し、大学を国策遂行機関化する学校教育法第 93 条改悪に反対する

大学の自治を否定し、大学を国策遂行機関化する学校教育法第 93 条改悪に反対する

 学校教育法第 93 条(「大学には、重要な事項を審議するため、教授会を置かねばならない」)は、憲法第 23 条の学問の自由理念を具体化する法制度であり、「重要な事項」には、①教員の人事権、②学長・学部長などの内部管理者の選任権が含まれている。
 経団連や経済同友会は、教授会が「大学改革」を主導する学長のリーダーシップを阻害しているとして、学校教育法第 93 条の改悪や学長選挙廃止を執拗に主張してきた。安倍内閣が、「大学のガバナンス改革を推進する」として、学校教育法改定を目論んでいるのは、こうした意思の反映である。改定法案は、今通常国会上程に向けまとめられる方向とされている。
 中央教育審議会大学分科会は、「大学ガバナンス改革の推進について(審議のまとめ)」(2014年2月12日)で、教授会の審議事項から大学経営に関することを除外すべく「所要の法令改正」を求め、学長選出についても、教職員による投票結果に基づかない方法を誘導する内容を示した。
 2013 年度予算における国立大学法人関係予算では、運営費交付金のうち、基盤的経費が大学改革促進係数により大幅に削減される一方、その不足分を文科省が示す「国立大学改革プラン」の実施状況に応じて配分する「学長リーダーシップ特別措置枠」や「年俸制導入促進費」などの項目が設定された。
 大学の自治は、憲法第 23 条が保障する学問の自由の構成要素として憲法学上理解されている。最高裁も「大学の学問の自由と自治は、大学が学術の中心として深く真理を探求し、専門の学芸を教授研究することを本質とすることに基づく」(東大ポポロ事件判決、1963 年)としている。また、その自治は、「大学の学長は教授その他の研究者が大学の自主的判断に基づいて選任される」ことを含むとも判示する。大学の自治は、政治的な大学統制、権力的な干渉などを排し、教育・研究の自立性を確保して学問の自由を守り、誰でもが高等教育を受ける権利を保障するために、政治勢力や警察権力との長い歴史的な闘いの中で獲得されてきた。ユネスコの「高等教育教員の地位に関する勧告」(1997 年)は、学問の自由保障のためには、自治が不可欠であることを宣言している。つまり、大学の自治保障は、大学が大学であることの国際的に認識される基本要素である。
 大学の教育・研究は、真理探究に向かう関心・熱意と研究・教育対象それ自身が提起する内発的課題に取り組む大学構成員の総体として成立する。したがって、教職員の信頼と活力を欠いたままでは、学長は、リーダーシップを発揮することはできない。競争力と効率性のみにシフトして学長のそれが発揮されれば、人類の知の継承とその創造的発展、また、人類が抱える深刻な課題や効率性からは程遠い社会的ニーズなどの研究やそれに取り組もうとする教員・学生の知的活力は発揮されない。「大学ガバナンス改革の推進」は、グローバル人材育成と国際競争力強化に向けた分野への重点投資を背景に、学長のリーダーシップを、国策遂行に積極的に傾斜させるものである。
 こうした極めて重大な制度変更をもたらし、大学の教育・研究を国策と財界の戦略に従属させることになる「審議のまとめ」に抗議し、学校教育法第 93 条改悪に反対する。

2014年3月16日
日本科学者会議49期第4回常任幹事会

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