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2014年03月17日

京滋私大教連、大学の組織運営とは相容れない トップダウン型の「ガバナンス改革」に断固反対する

京滋私大教連
 ∟●第58回臨時大会特別決議

【大会特別決議】

大学の組織運営とは相容れない
トップダウン型の「ガバナンス改革」に断固反対する


 政府・文科省は、中教審大学分科会組織運営部会の審議を受けて、学校教育法「改正」案を今通常国会中に提出するとしています。具体的には、大学の「ガバナンス改革」の一環として、教職員による学長選挙(意向投票)の廃止を含む「学長選考方法の見直し」、学長を補佐する「統括副学長」や「高度専門職」の導入などとともに、学校教育法第 93 条の教授会が審議する「重要な事項」の範囲を「①学位授与、②学生の身分に関する審査、③教育課程の編成、④教員の教育研究業績等の審査等」に限定し、学部長の選出など教員人事にかかわる教授会の権限を見直すことを主たる内容としています。こうした内容は、大学の自治の根幹に対する政治権力の重大な介入であり、私たちは断じて容認することはできません。

 学問・研究は、自由な精神により既存の価値や社会のあり方を批判的に検証し、真理や普遍を追究する人間的営為であり、学問の府たる大学は、その時々の政治的・経済的・宗教的な圧力に対して、自律すなわち自治を確立してきました。学問の自由と大学の自治は、そうした本質と歴史的な経緯に根差すものであり、それゆえ専門的同僚教員から構成される教授会(教員組織)が大学の自治を担う中心的な役割を果たしてきました。

 戦後、日本は日本国憲法第 23 条で「学問の自由」を保障し、そのために「大学の自治」が保障されていると考えられてきました。現行の学校教育法第 93 条 1 項で「大学には、重要な事項を審議するため、教授会を置かなければならない」と規定し、教育公務員特例法が学長や学部長の選考、教員の人事を教授会の審議に委ねたことは、そうした憲法上の大学の自治と教授会の関係を法律で具体化したものでした。

 このような理念と法的枠組みは、各大学の「特性にかんがみ、その自主性を重んじ」、「公共性を高めることによって…健全な発展を図る」(私立学校法第 1 条)ことを目的とした私立大学にも当然共通するものです。まして、国公立大学に比して極めて低い水準に抑制された公費補助の下、大学生の 75%を受け入れる私立大学で教育・研究の水準を支えているのは、学問の自由に支えられ、高度の専門性を有する教員集団であり、教授会の自治という法的な枠組みです。そして、その枠組みの下で教員と職員が協働し、学生の学びと成長を保障して、日本社会を支える有意な市民を数多く輩出してきたのです。

 学長・学部長の選考や教員の採用・昇任等は、学部(教員組織)の教育方針や教育内容、さらには個々の教員の研究内容などと密接に関係するものです。しかし、今回政府・文科省が行おうとする法改正は、一部の大学・学園において、学長・理事会の独善的、専断的な組織運営が引き起こしている重大な問題状況をさらに深刻化させることになりかねず、「学術の中心」として「高い教養と専門的能力を培うとともに、深く真理を探究して新たな知見を創造」し、社会・文化全体の発展に寄与することを社会的な使命とする大学の「自主性、自律性その他の……教育及び研究の特性が尊重され」(教育基本法第 7 条)ることにはならないものです。

 大学の目的と組織原理は、短期的な経済的利潤の最大化を目的とする企業のそれとは決定的に異なるものであり、私たちは学校教育法「改正」によって、トップダウン型の「ガバナンス改革」を強要することに対して断固反対します。

2014 年 3 月 8 日
京滋私大教連第58回臨時大会


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