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2014年03月18日

日本私大教連、「私立学校法の一部を改正する法律案」に対する見解と要望

日本私大教連
 ∟●「私立学校法の一部を改正する法律案」に対する見解と要望

「私立学校法の一部を改正する法律案」に対する見解と要望


2014年3月7日
日本私立大学教職員組合連合
(日本私大教連)


 文部科学省は、今通常国会に「私立学校法の一部を改正する法律案」(以下、改正案)を提出しました。今般の法改正は、大学設置・学校法人審議会学校法人分科会(以下「学校法人分科会」)の報告書「解散命令等に係る課題を踏まえた今後の対応の在り方について」(2013年 8月)を踏まえ、「重大な問題のある」学校法人に対して所轄庁が「適切な対応」を講じることができない現行制度を改め、解散命令に至るまでに段階的な措置を講じられるようにするというものです。
 上記報告書は、2013 年 3 月 28 日に文部科学大臣が解散命令を出した群馬県の学校法人の事例を受けて検討されたものです。同学校法人の理事長・学長をはじめとする理事者は、学校法人に求められる公共性を無視し、評議員会や監事のチェック機能や教育研究に関わる教授会の権限を形骸化して専断的運営を行い、乱脈経営と法令違反を繰り返した挙句に破たんに陥りました。こうした事態を招いた根本的な原因は、現行の私立学校法があまりに大きな裁量権を理事会に付与し、内部のチェック機能をたやすく形骸化できる仕組みとなっていることにあります。解散命令を受けた学校法人の事例は突出して深刻なものですが、少なくない学校法人で一部理事者が恣意的な運営を行い、投機的資産運用による巨額な損失、不正入試、各種申請書類への虚偽記載など、さまざまな不祥事を引き起こしています。しかし今般の改正案は、私立学校法の根本的な問題にはまったく手をつけず、所轄庁の行政権限だけを強化する内容となっており、非常に問題です。
 私立学校は、幼稚園から大学までの全教育段階において公教育の一端を担う重要な教育機関です。とりわけ私立大学は学生の約 75%を担うわが国の主要な高等教育機関であり、私立大学を設置・運営する学校法人の公共性を高めるための法整備を行うことは、私立大学の教育研究の質を向上させる上で不可欠の条件です。そのためにもっとも必要とされることは、学校法人に「重大な問題」を生起させないための法改正です。私たちは、今回の私立学校法改正案ならびに国会審議について以下事項を要望するものです。

1.理事会による不適切な管理運営や不祥事を未然に防止できるよう、理事会に対するチェック機能が正常に働くよう法改正を行うこと。
 学校法人の「重大な問題」を未然に防止するためには、学校法人自身のチェック機能が正常に働くように私立学校法を改正することが必要です。日本私大教連は 2013 年 7 月に『日本私大教連の私立学校法改正案―私立大学の公共性と教育・研究の質を高めるために―』を発表し、文部科学省に要請を行いました。そこでは、公正に役員(理事長、理事、監事)を選任するための改正、理事会の成立と議決要件の厳格化、監事制度の改善、理事会に対する評議員会のチェック機能を高めるための改正、財政情報の公開に関する改正等について、全23 項目にわたる具体的な法改正を提起しています。
 2006 年の公益法人制度改革では、例えば社団法人・財団法人の社員や評議員に理事の法令定款違反行為に対する差止請求権や会計帳簿閲覧請求権を与えるなど、公益法人の運営を健全化するための規定が新たに設けられました。しかし私立学校法には、このような規定は設けられておらず、公益法人制度の水準に比して大きく立ち遅れています。所轄庁の行政権限の強化の前に、すべての学校法人が守らなければならない管理運営のしっかりとしたルールを私立学校法に明記することが必要です。
 今回の改正案は、学校法人が法令に違反しているときに、「違反の停止」などの必要な措置をとるべきことを命令できるとしています(第 60 条)。しかし、不祥事の温床となっている私立学校法の不備を放置したままでは、私立学校法違反にもとづく措置命令が学校法人の不適切な運営を正すものとはなり得ません。そのためには、『日本私大教連の私立学校法改正案』にもとづき、学校法人の「公共性」を担保できる管理運営の仕組みを確立する法改正が必要です。

2.改正案第 60条 1項「その運営が著しく適性を欠くと認めるとき」ならびに「その他必要な措置」について、その具体的内容を法定すること。
 所轄庁が、学校法人の「運営が著しく適正を欠くと認めるとき」に措置命令を行えるとする規定は極めて曖昧であり、所轄庁の行政権限の濫用につながる惧れがあります。法案は、措置命令を行おうとするときは「あらかじめ、私立学校審議会等の意見を聴かなければならない」としていますが、所轄庁やときどきの審議会委員の判断で「著しく適正を欠く」水準が左右される危険性はぬぐえません。今国会で行政権限の強化を先行させる法改正を行うのであれば、何が「適正を欠く」ことに該当するのかを法令に明示すべきです。
 「その他必要な措置」についても同様です。所轄庁が学校法人に対して「違反の停止、運営の改善」以外にいかなる措置を命令することを想定しているのかを法令に明示すべきです。

3.今国会において十分な時間を取って審議を行うこと。
 私立学校法の水準が、我が国の高等教育において主要な役割を担っている私立大学に大きな影響を及ぼすことに鑑み、今般の私立学校法改正案について、現行法の問題性、今後の改正方針等を含めて十分な審議を行うことを求めます。

以上

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