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2014年03月28日

看護系の学部・学科、20年で7倍超

読売新聞(2014年3月27日)

 看護系の学部・学科を設置する大学が全国的に増えている。

 今春新設する16校を含めると226校で、全大学の3割に上る。看護師は医療現場のニーズが高く、不況による就職難もあって志望者も上昇傾向だ。学生を獲得したい大学にとっても期待できる分野で、来春も新設が相次ぐ見通しだ。

 文部科学省によると、看護師国家試験の受験資格が得られる学部や学科を持つ大学は1991年度には11校だったが、95年以降は毎年10校のペースで増え、20年で7倍以上になった。

 看護師不足を受け、国は92年に看護師等人材確保促進法を施行、資の高い看護師を養成する看護系大学の設置を促した。こうした背景から短大や専門学校を母体にした看護系大学や学部が誕生、既存の大学でも学部新設の動きが進んだ。

 今春の新設数は2006年度の17校に次いで多い。敦賀市立看護大(福井県)など3校が単科大学として新設され、奈良学園大(現奈良産業大、奈良県)など、これまで医療系学部がなかった大学も新規参入する。

 既存の学部・学科の定員を増やす大学もあり、今春の入学定員は前年より1675人増の1万9454人と94年度の11倍になる。同志社女子大(京都府)など十数校は来春の学部・学科の新設を計画中だ。

 大手予備校・河合塾の調査によると、全国の私立大の看護系学部・学科の志願者は昨春、延べ7万3000人で、10年前の3・8倍に増えた。私大全体の志願者はほぼ横ばいで、看護系の急伸長ぶりが目立つ。

 河合塾教育情報部の富沢弘和チーフは「就職への不安から受験生の資格志向が強く、人気はしばらく続くだろう。ただ、これだけ増えると、教育の質や実習先の確保などで不十分な大学も出てくる。受験生は慎重に比較して志望校を選ぶ必要がある」と指摘する。

「質」維持へ審査厳格化…文科省

 文部科学省は、看護教育の質の低下を防ぐため、2015年度(来春)新設分から、看護系学科の設置審査を厳しくする。

 学科の新設審査で同省は、教員の教育研究実績や教育課程を重視してきた。しかし、規制緩和の流れで04年度新設分から、理学療法士や放射線技師を養成する「保健衛生学分野」の学科を持つ大学であれば同じ分野の看護系学科新設で手続きが簡易になり、教員の実績は審査からはずれた。

 ところが、同省によるとこの施策が裏目に出て、一部の大学で実績が不十分な教員の割合が増える弊害が出始めているという。

 4月以降、看護系は保健衛生学分野から切り離される。同じ大学が別のキャンパスに二つ目の看護学科をつくる場合を除き、簡易な審査での新設はできなくなり、教員の実績が厳しく問われることになる。


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