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2014年04月26日

いま、大学の自治を問う、京大での総長選挙廃止の動きと「大学改革」 4・20シンポジウムを開催・報告と議論の要旨

京都大学職員組合
 ∟●職員組合ニュース2013年度第27号

 4 月 20 日(日)、午後 1 時より、法経第 7 番教室を会場に、総長選挙廃止の策動を討つシンポジウムが開催された ( 京大職組・京滋私大教連共催 )。シンポジウムは、池田豊氏 ( ねっとわーく京都 )の司会により、高山佳奈子副委員長の開会挨拶「京大総長選挙をめぐる局面と私たちのとりくみ」から、石倉康次氏 ( 京滋私大教連 委員長 ) の閉会挨拶まで、2 時間 30 分にわたって行われた。
 前半は、大学の自治を脅かす状況について、次の講演が行われた。西牟田祐二委員長「中教審大学分科会「大学のガバナンス改革の推進について(審議まとめ)をめぐって」。鈴木眞澄氏(日本私大教連・京滋私大教連副委員長)「経済同友会提言』『私立大学におけるガバナンス改革』をめぐって」。中嶋哲彦氏(全大教委員長)による「国立大学における安倍内閣大学改革の特徴と全大教のとりくみについて」。
 大学自治が、教育公務員特例法の要請ではなく、憲法的要請に基づくものであること、学校教育法の改変が、憲法 23 条の実質改憲という本質をもつことが明らかにされ、安倍政権=財界の動向を批判的に乗り越える運動の必要性が確認された。
 シンポジウムの後半は、これら三人の講演者をパネリストとしたディスカッションが行われ、さらに問題が掘り下げられると共に、会場からの質疑が行われた。
 80名余が出席し、今後の大学を左右する緊急テーマについて、講演者の言葉に真剣に聞き入っていた。内容の充実したシンポジウムであり、最後にシンポジウム・アピールが満場一致で採択された。

4.20 シンポジウム 報告と議論の要旨

報 告 ①
中教審大学分科会「大学のガバナンス改革の推進について(審議まとめ) 」をめぐって

西牟田 祐二 氏
京都大学職員組合 委員長
京都大学経済学研究科 教授

 中教審のガバナンス改革が提起するリーダーシップ論は権限を学長に集中させ、それを外部からコントロールするという主張であり、それはまったくの虚構(=大学統制という意図をごまかすトリック)にすぎない。この虚構の一端を担うのがマスコミである。しかし、中教審の審議まとめでは、国立大学法人の教職員を非公務員化する過程で生じた国立大学法人法における教授会規定の欠落(実定法上の空白地帯)を利用し、教授会規定を含む学校教育法を改正することによって教授会を単なる審議機関にすることが目指されている。この学校教育法改正が現実的な危機となりつつある。

報 告 ②
経済同友会提言「私立大学におけるガバナンス改革」をめぐって

鈴木 眞澄 氏
日本私大教連 副委員長
京滋私大教連 副委員長
龍谷大学法学部 教授

 私立学校法の一部改正があっという間に施行されることになり(4 月 2 日)、私立大学は重大な岐路に立たされている。この問題を考える上で決定的な転換(クーデター的)となったのが、2004 年の私立学校法改正であった。こうした動向の背後にあるのは、大学に企業の論理を導入しようという議論であり、経済同友会の提言はそれを露骨に示している。今回の一部改正は、所轄庁が学校法人の業務財務を調査し、一方的に介入することを可能にするものであり、いかようにも拡大解釈できるものとなっている。事態はきわめて深刻である。

報 告 ③
国立大学における安倍内閣大学改革の特徴と全大教のとりくみについて

中嶋 哲彦 氏
全国大学高専教職員組合 委員長
名古屋大学教育発達科学研究科 教授

 安倍政権の高等教育政策は大学自体を技術開発(イノベーション)の中心にするものであり、教育や福祉などの日常生活圏にかかわる政策が極めて弱い、いびつなものとなっている。法人化以降、国策大学化や大学の官僚化が目指されてきたが、法人化には限界があった。この限界を乗り越えるものとして提唱されているのが、ガバナンス改革であり学長のリーダーシップ論である。しかし、ここで確認すべきは、大学の自治の基盤は、教育公務員特例法にあったのではなく、憲法 23 条にあるのである。学校教育法改正による大学自治破壊は何の正当性も持ち得ない。中教審が言っていることはデマである。

パネルディスカッション

 鈴木、中嶋両氏からは、それぞれの報告の最後に、「大学の自治を否定する学校教育法改正に反対する緊急アピール」への協力要請がなされ、また西牟田委員長からは、パネルディスカッションの中で、現場である個々の教授会から学校教育法改正反対の決議をあげる取り組みを進めたいとの応答がなされた。 後半のパネルディスカッションを含めて、京都大学総長選挙廃止の動きが大学の自治の破壊という政財界の意図に基づいた大きな策動の一環であること、そして大学の自治とは大学だけの問題ではなく民主主義と人権の根幹に関わるものであることが明らかになった。民主主義へ向けられた攻撃を視野に入れるところから、大学の自治を守る動きを、大学を超えて広げてゆくことが求められている。


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